日本では必要とされていないと感じた歌が、全米を熱狂させる。TiAがNYで学んだ「500%の力を発揮すること」

6月5日に7年半ぶりのアルバム『MIRACLE』をリリースしたTiA

6月5日に7年半ぶりのアルバム『MIRACLE』をリリースしたTiA

 04年から14年の10年間、日本で歌手活動をしていたTiAが、6月5日に7年半ぶりのアルバム『MIRACLE』をリリースした。ゴスペルを中心に、さまざまなタイプの曲が収録されているが、本場を納得させた圧倒的な歌唱力は心が震えるほど愛に満ちている。

本場だから、最初は教会に足を 踏み入れることができなかった

 講談社のオンライン雑誌『クーリエ・ジャポン』の「世界が認めたジャパニーズ6人」という記事で、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手らとともに紹介された歌手TiA。なぜ彼女が“世界が認める”存在になったのか。理由はゴスペルとの出合いにあった。
TiAデビューして10周年を迎えたとき、歌をやめようと思い、泣きながら飛行機に乗ってニューヨークに行きました。(お客様に)何を伝えたらいいのかを見失ってしまった。なかでも一番悲しかったのは、自分は歌が好きなのかがわからなくなってしまったこと。とにかく日本にはいたくない。必要とされていない気持ちが大きくなってしまったんです。

 しかしニューヨークは、彼女に歌を忘れさせてはくれなかった。 
TiAとにかく街に音楽が溢れていて、生活するうちに徐々にまた歌いたくなってきました。そこで、ニューヨークで一番有名なライブハウスのオープンマイク(観客による飛び入り演奏)に出たんです。ホイットニー・ヒューストンやアリシア・キーズのバックで演奏してきた一流のバンドで歌えて、しかもものすごい歓声とスタンディングオベーションをいただいて、改めて自分は歌うのが好きなんだと気づきました。

 彼女の飛躍はここから始まるのだが、肝心のゴスペルとの出合いは悲しい出来事がきっかけだった。
TiA16年2月に、日本で飼っていた愛犬が亡くなってしまったことを聞き、立ち上がれないほど落ち込んで、初めて教会に足を運んだんです。

ニューヨークで感じたことは、自分らしさを大切にすること

  • 6月5日に7年半ぶりのアルバム『MIRACLE』をリリースしたTiA

    6月5日に7年半ぶりのアルバム『MIRACLE』をリリースしたTiA

 彼女が住んでいたハーレムは、あちこちのブラックチャーチから常に音楽、ゴスペルが聞こえてくる。彼女はいつもそれを聞いていたのだが、「あまりにも本場なので、足を踏み入れることができなかった」そうだ。しかし、愛犬への思いに耐えられず足を踏み入れた教会で、ある牧師に出会う。それが日本にも教会を持っている人で、彼から「歌ってみるか?」と誘われ、そこから毎週教会で歌うようになり、道が拓けた。

 2万人がエントリーする、アメリカ最大級のゴスペル大会「マクドナルド・ゴスペル・フェスト」に日本人女性3人組で応募し、見事グループ部門日本人初優勝。続いて「スタテンアイランド・ゴスペル・フェスティバル」にソロイストとして出場し、こちらも日本人初優勝。彼女の名前は徐々に、アメリカ中に広まっていった。
「もう音楽はやらない」と心に決めて渡米した彼女が、ニューヨークで感じたこと。それは、自分らしさを大切にするということだと言う。
TiA歌については、何も要求されませんでした。ただ、あなたの持っている歌声を大切にしなさいとだけ言われました。そこで、何も考えずに歌おうと思ってわかったんです。自分が持っているものを500%ぐらい出さないと、アメリカでは観客を立ち上がらせることはできないって。ちょっとでも遠慮したら誰も聞いてくれない。それがアメリカというところ。今でも忘れないのは、アリシアのバックコーラスをしているご夫婦に言われた言葉。『ここはアメリカよ、日本じゃない』。日本と同じパフォーマンスをしていたら伝わらないと言われて目が覚めました。
  • TiA『Miracle』

    TiA『Miracle』

 今回のアルバム『MIRACLE』には、最後に「君は愛されるために生まれた」という日本語のゴスペルが収録されている。「自分は必要とされていない」と思って日本を去った彼女が、ニューヨーク生活でたどり着いたゴスペルの神髄。そんな大きな愛に満ちたこのアルバムは、どんな人もきっと包み込んでくれるはずだ。
アルバム『Miracle』
優勝したゴスペルコンテストの受賞曲「RIDE ON KING JESUS(with Ailah & Mio Oyama)」、「CENTER OF MY JOY」のほか、日本語のバラード、ゴスペル曲など全11曲を収録。

提供元: コンフィデンス

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