Official髭男dismが語る拘りの楽曲制作 ドラマと映画でタイプが異なる『コンフィデンスマンJP』主題歌

 長澤まさみ主演のフジテレビ系ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌「ノーダウト」で注目を集めたOfficial髭男dism。5月17日より公開の映画版の主題歌に新曲「Pretender」(5月15日発売)が起用された。近年、映画やドラマの世界観に寄り添った作品作りで主題歌がヒットするケースが多く、彼らもその1組だ。何度も話し合いを重ね制作された主題歌をはじめ、楽曲制作でのこだわりから、音楽を取り巻く環境の変化でアーティストに求められていることについて語った。

時間を惜しまずキャッチボールを重ねて生まれた映画主題歌

  • (C)2019「コンフィデンスマンJP the movie」製作委員会

    (C)2019「コンフィデンスマンJP the movie」製作委員会

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──映画『コンフィデンスマンJP』主題歌の「Pretender」の制作背景を教えてください。フジテレビ系ドラマの主題歌「ノーダウト」とはガラリとタイプの違うミディアムナンバーでありながら、スケールの大きな楽曲でヒゲダンの引き出しの多さを知らしめる1曲になるのでは、と感じました。
藤原聡 映画の制作チームとはまだ映画の撮影に入る前だったのかな? 台本の段階から何回も話し合いを重ねて、その間に僕たちもかなりの楽曲数を作りました。映画の制作スタッフもただ「この映画に曲を作ってください」という投げっぱなしな感じではなく、曲を提示するたびに「キャッチーさのなかに、少しビターな感じがあったほうがいいんじゃないのか?」など、具体的な意見を出してくれました。
小笹大輔 映画制作スタッフの方たちもヒゲダンのメンバーだったと言ってもいいくらい、一緒に曲を作っていった感覚があります。
藤原 『コンフィデンスマンJP』featuring Official髭男dismと言ってもいいくらい。「ノーダウト」も「Pretender」もヒゲダンのもともとの音楽性や世界観にあったものではあるけれど、『コンフィデンスマンJP』という作品に出会わなかったら生まれなかった楽曲だったと思います。

──もはやヒゲダンの楽曲なくして『コンフィデンスマンJP』の世界観はあり得ないという感じですが、映画やドラマの主題歌を書き下ろすというのは、“バンド以外の思いを背負う覚悟も必要なのでは?”と思います。普段の楽曲制作とはどんな違いがありましたか?
藤原 バンドと映画の制作チームの共通言語を明確にするという作業は、普段の楽曲制作にはないものでした。例えば、“ゴージャスさ”というキーワードが映画制作サイドから提示されたとして、僕らはそれを音楽で表現するわけですが、“ゴージャス”という言葉に正解がないというか、それはそれぞれの感性的なものじゃないですか。だから僕らが表現したゴージャスと映画でイメージするゴージャスが違う場合もある。そこで片方が譲歩したり、主張するのでもなく、時間を惜しまずキャッチボールを重ねることで、お互いの思うゴージャスの質感がどんどん同じものになっていきます。
小笹 映画制作サイドからは決して「こうしてくれなければダメだ」といった押し付けはなかったし、僕らも自分たちがかっこいいと思ったものを提示することしかできない。それでもお互いに「最高な曲ができたね」と納得するものができたのは、そのキャッチボールが上手くいったからだと思っています。
藤原 純粋に僕がうれしかったのは、『コンフィデンスマンJP』のチームが「ヒゲダンだったらきっとこのドラマや映画の世界観を広げてくれるはずだ」と信じていてくれたこと。ドラマ主題歌をオファーしていただいたときからそれは変わらずありました。僕たちも「ヒゲダンの音楽に何を求めているのか?」というような、『コンフィデンスマンJP』チームの心の奥にある思いをもっと知りたいと、キャッチボールに前のめりになれたところはありましたね。

──ドラマ版の主題歌「ノーダウト」はヒゲダンのメジャーデビュー曲であると同時に、この曲をきっかけに全国区になったという印象があります。反響の大きさを感じるのはどんなときですか?
楢崎誠 やっぱりライブですよね。「ノーダウト」は特にイントロが印象的な曲だということもあり、演奏し始めた瞬間に歓声が上がる。そういった体験は、この曲が初めてのことでとても新鮮でした。そして「Stand By You」は、皆でシンガロングやクラップができるバースが入った曲なので、お客さんが自然と反応してくれるのを見ると、「皆のなかでこの曲が鳴っているんだ」と感じられてすごくうれしいです。
松浦匡希 結成当初からヒゲダンには、“聴いてくれる人の人生とコラボレーションしたい”という思いがあって。僕からの楽曲を聴いてくれる人が増えれば増えるほど、楽曲でたくさんの人の背中を押せているんじゃないかな、と実感できる。音楽をやっていて純粋によかったなと思うことですね。

届け方は変わっても、いい音楽を作るという本質は変わらない

  • (C)2019「コンフィデンスマンJP the movie」製作委員会

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──ただ、現代はメジャーデビューしなくても東京に拠点を移さなくても全国区になれる時代です。Spotifyで海外のリスナーを多く掴んだりと、もしかしたら山陰にいたまま現在のような精力的な活動ができていたのかも? と思うのですが、その点はいかがですか?
藤原 僕たちも山陰でやっていくつもりでした。実際に、CDを全国流通させたばかりの頃はサラリーマンだったし、学生だったメンバーもいました。ただその状態だと無理が生じてくるというか、仕事に追われて曲を作る時間もなくなってくるし、ライブもなかなかできなくなる。この4人で音楽をやることが人生の豊かさとして一番のプライオリティにあるにもかかわらず、これって違うよな……と感じていたときに手を差し伸べてくれたのが東京のチームだったんです。それがもし大阪のチームだったら大阪に行っていたかもしれないし、岡山のチームだったら山陰にいたまま活動をしていたかもしれない。それも出会いですよね。いいお話は他にもたくさんいただいたけれど、「ヒゲダンの音楽をもっと多くの人に届けたい」と言ってくれた、今のチームのバイブスに胸を打たれたことをすごく覚えています。それが僕たちが東京に拠点を移した理由です。

──またサブスクリプションの定着で、CDリリースにこだわらなくても楽曲の“全国流通”が可能になり、バンドの活動スタイルも変化しつつあるように感じます。いわば“先輩”にお手本がない世代のバンドとして感じることはありますか?
楢崎 たしかに音楽の発信の仕方では、前例のない時代のバンドなのかなと思います。ただそれはあくまでビジネスの話で、いい音楽を作るという根本は何も変わらないと思っています。ヒゲダンも先輩たちが作ってきたいろんな音楽から影響を受けて、自分たちの音楽性やスタイルを作ってきたバンドだと思っています。
藤原 Uber Eatsの登場で、今まで届けられなかった人にも料理を食べてもらえるようになったのと同じことだと思っています。届け方は変わっても、おいしいご飯を作るという根本は何も変わっていない。ただ、届いたときに暖かい状態で食べてもらうためのテクノロジーは、どんどん変化するかもしれないです。例えばサブスクには、ラウドネスメーターという指標があって、それが振り切ってしまうと心地よく聴こえなくなる。そういう意味では聴き手側に立ったシミュレーションのポジションは、CDだけだった時代より増えているのかなとは感じています。
楢崎 僕らも音楽を聴くなら音がいいほうがいいと思っているので、そこにはこだわりたい。また、そのこだわりをバンドと共有してくれる今のチームはすごく信頼できるし、大好きです。
藤原 ヒゲダンは結局、そこに行き着くんですよね。チームが大好きというところに(笑)。

(文/児玉澄子)

映画『コンフィデンスマンJP』

天才的な知能と抜群の集中力を持ち合わせながら、不完全さ故にどこか憎めない主人公ダー子(長澤まさみ)、小心者でダー子に振り回されてばかりの、騙すことも得意だが、お人好しゆえに騙されることもあるボクちゃん(東出昌大)、変装や言葉遣い、根っからの品の良さを活かし、どんな世界の人間にも見える特技を持つリチャード(小日向文世)。一見平凡で善良な姿をした3人の信用詐欺師(=コンフィデンスマン)が、金融、不動産、芸能など華やかな世界の欲望にまみれた人間たちから大金をだまし取る、痛快エンターテインメントコメディー。

監督:田中亮
脚本:古沢良太
キャスト:
長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、佐津川愛美、小日向文世、織田梨沙、瀧川英次、Michael Keida、前田敦子、佐津川愛美、岡田義徳、桜井ユキ、生瀬勝久、山口紗弥加、小池徹平、佐藤隆太、吉瀬美智子、石黒 賢、竹内結子、三浦春馬、江口洋介

提供元: コンフィデンス

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