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元ふきのとう・細坪基佳、歌手活動45周年の矜持「あのとき、気付かなければ僕は今こうして歌っていなかったかもしれない」

  • 写真提供/フラットアースカンパニー・キャピタルヴィレッジ

    写真提供/フラットアースカンパニー・キャピタルヴィレッジ

 「白い冬」「風来坊」「春雷」「やさしさとして想い出として」などのヒットで知られるふきのとうとして活躍した細坪基佳が、昨年デビュー45周年を迎えた。ふきのとうとして18年、その後はソロのシンガー・ソングライターとして、昭和・平成と時代を越え、多くの人々にその歌声を届けてきた。45年に及ぶ音楽活動の中で、大きな転機になったこととは? 6月9日の記念コンサートに懸ける思いと共に話を聞いた。

45年の歌手人生での大きな転機 それがあったから今も歌い続けられる

 昨年6月にデビュー45周年を記念してリリースした細坪基佳の最新作「Old Time Good Time」。このアルバムには、昔から変わらないフォーキーで温かみのあるメロディーから、疾走感のあるロックチューンまでさまざまな楽曲を収録。その多彩な楽曲に、ふきのとう時代から定評のあるハイトーンボイスが冴えわたり、年齢を重ねて、肉体の衰えとのギャップに苦しむアーティストが多いなか、このアルバムでは、デビュー時よりも力強さを増し、つややかで張りのある歌声を聴かせてくれる。

細坪アルバムタイトルは『古き良き時代』という意味を込めて付けてたわけではないんです。『Old Time』とは、ある一点を指すわけではなく、ここまで歩んできた(人生の)道のりのこと。それが『Good Time』。もちろん、笑った、泣いた、悔しい思いをしたこともたくさんあって、それを含めて、『自分が歩いてきた道』があったから、今こうして笑っていられる。そんな思いの詰まったアルバムです。

 45年間歩んできた歌手人生があるから今がある。細坪にはそう言い切れる理由があった。

細坪基佳

細坪基佳

 今から45年前の1974年、札幌のライブハウスで歌っていたところ細坪の元に、東京のレコード会社のスタッフが現れ、その誘いを受ける形で上京。9月にふきのとうとしてデビューし、「白い冬」「風来坊」「春雷」「やさしさとして想い出として」などのヒット曲を次々と発表していくなか、84年に行った日比谷野外大音楽堂でのコンサートには、定員をはるかに上回る数万の応募があるほど人気を博し、86年には日本武道館でコンサートを開催。92年に解散するまでの18年間、日本の音楽史に大きな影響を与えてきた。そんな細坪に歌手人生の大きなポイントを挙げてもらうと、ふきのとう解散後ソロで活動し始めたころを挙げてくれた。

細坪歌手としてデビューして、それが仕事になってくると、当然のどに負担がかかってくる。若いころはそれを無理やり力でねじふせて、声を出していた時期もありました。声出なくても、リハーサルやれば大丈夫だったし、またそれで酒飲んで、大声出して盛り上がって(笑)。朝になって『声出ないなー』って思っても、またリハやって声出して…って生活を繰り返していて。でも、そのうちだんだん治りが遅くなっていくし、どうも自分の描いた歌い方と違うし。グループを離れソロになってみるとそれが顕著になってきて、のどを痛めて声が出なくなる時期があったんです、その時に初めてその後(歌手として活動)できなくなる可能性があると思ったんです。それで自分ののどに対して意識を持ったんです。『お前(のど)のおかげで俺は(歌手として)生きているんだ』って。それが、酒だタバコだ、夜更かしだって、何をやっているんだという話ですよ(笑)。活動始めて20年くらいたってからかな……。遅すぎますよね。

 歌手として長く歌っていきたいという思いは、のどのケアだけではなく、自身の表現方法にも大きな変化をもたらした。

細坪のどへの意識が変わると同時に、歌声の表現や発声にもより意識がいくようになったんです。まず、周りから私のハイトーンを褒められる機会が多いんだけど、もっと深みを出すために、低音を磨くことにしたんです。例えばAメロってサビに向かうメロディーだから、低く歌って、サビでスコーンと突き抜ける曲が多い。それまでは、『自分の売りはハイトーンだから、サビでスコーンと掴めばいい。この辺(Aメロ)はどうでもいいや』って思いがどっかであったかもしれない。でもそのAメロを低音できちんと聴かせられると、サビで今まで以上に『おっ』と思わせることができる。世界が広がったんですね。そのことに気付いてからは、表現がより面白くなったんだよね。今まで歌ってきた歌も、違うアプローチで表現してみたら面白かったり。それまでトレーニングとかケア、研究的なことをやってこなかったのが、急にやり始めて歌ってみると違う世界が見えてきて、表現の幅を広がりましたね。より音楽にのめり込みました。

「あのとき、気付かなければ僕は今こうして歌っていなかったかもしれない」とまで言い切る大きな気付き。この変化こそ、今なおこうして活動を続けられる礎になっている。

提供元: コンフィデンス

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