新作では鈴木京香をプロデュース、“芸人”音楽プロデューサー藤井隆「芸人のクセに」が「芸人だから」に

可能性を広げてくれたCDデビュー、その経験を他の人にも提供したい

 1つひとつの仕事に真面目に向き合うがゆえの誠実さが、藤井自身を戸惑わせていた。しかし、ひとたび世に放たれた音楽作品は残り、良質な作品は時を経ても評価をされる(藤井隆名義では、これまでにシングル7作、アルバム10作をリリース)。音楽活動再開における転機は13年、TBSラジオの番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で「藤井隆 国産シティポップス最良の遺伝子を受け継ぐ男」と銘打った特集にゲスト出演したことだった。また、プロインタビュアーの吉田豪も、ことあるごとに藤井の声質の良さや音楽センスの高さについて言及している。

「そんな風に自分の音楽を聴いてくださっている方がいると教えていただいて本当に嬉しかったです。そんな方々に『音楽、頑張りましょうよ』とおっしゃっていただいて、本当に勇気付けられました」(藤井)

 そして、藤井が14年に主宰レーベルを立ち上げた理由はもう1つあった。

「私は恵まれていてCDでデビューさせていただいた時、いろんな経験をさせていただき、いろんな所にジャンプをさせていただきました。『歌ったら似合うだろうな〜』とか『オリジナルの楽曲があれば面白そうだな』と思う芸人さんがいますので、自分の(音楽)活動だけではなく、昔の自分のようにCDをリリースできるようなことはできないか、と考えました。自社にレコード会社があるのも誇りに思っていますし、支えてくれるスタッフもいるので、レーベルをやらせてもらえないかと事務所に相談しました」

尊敬する先輩からの嬉しい言葉 東野「藤井くんらしいね」、今田「楽しみにしてるわ〜!」

 同レーベルからは自身の作品をはじめ、椿鬼奴×堂島孝平、レイザーラモンRG×m.c.A・Tといった、鈴木京香プロデュースの原点とも言えるミュージシャンとタレントのマッチングの妙に満ちた音楽作品が多数リリースされている。
「ビジネスなので、採算ラインのことが議題に上がります。『アカンかったら、ほかの仕事で稼いでくるように』という約束で始まりました。そう言われましたが、モノを作ることをこの機会に真剣に考えなさいとも言われましたし、採算を気にせず攻めましょうと言ってくれるマネージャーもいてくれて感謝しています。RGさんと椿鬼奴さんは、私よりも音楽が似合うお2人です。音楽や歌うことが本当に好きな人たちで、それぞれがデビューから堂々としていて誇らしかったです。m.c.A・Tさん、堂島孝平さんにプロデュースをお願いに上がった時、すぐにご了承いただけたのはRGさんと椿さんだからだったと思います。イベントなどでたくさん歌って頑張ってくれていて、SLENDERIE RECORDからCDデビューを用意することができて心底良かったと思っています。最初は自分の音楽から始まったレーベルだったんですが、自分のリリースツアーの時、2人は一緒に各地をまわってくれて私を支えてくれました。お世話になった音楽の似合う2人は絶対にCDデビューをしてもらいたかったので、主宰レーベルからのリリースで失敗できない、と頑張る力をくれた2人です」(藤井)

 16年には“外部タレント”である早見優の21年ぶりの音楽作品をプロデュースしている。今後も「芸人さんにも俳優さんにも、歌っていただきたい人は頭の中にいます」というから楽しみだ。最後に「最近嬉しかったこと」として、尊敬する芸人である今田耕司、東野幸治との邂逅を語ってくれた。やはり藤井は芸人であり、フェイバリットも音楽だけではないことが窺える。

「東野さんが『dress-ing』のことを知ってくださっていて、まず『何やってんの?』と言ってくださいました(笑)。『でもすごく藤井くんらしいね』とおっしゃってくださいました。また(『dress-ing』の)収録曲の1つ『水星』(tofubeats)は、今田さんとTOWA TEIさんの楽曲『ブロウ ヤ マインド』のリミックスなので、ご報告したら『楽しみにしてるわ〜!』と言ってくださいました。お2人からいただいたお言葉がすごく励みになりました。3月2日に鈴木京香さんによるCDお渡し会をします。『dress-ing』について京香さんがファンの皆さんにどんなお話しをしてくださるのか私自身が楽しみです。私は当日責任をもって司会を務めさせていただきます。プロデューサーとして芸人として、ベストを尽くして鈴木京香さんのファンの皆さまに喜んでいただける1日になるよう尽くしたいと思います」(藤井)

文/児玉澄子

提供元: コンフィデンス

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