中島美嘉、「雪の華」独り歩きに戸惑い 20周年に向けて新たな挑戦

 2003年にリリースされた「雪の華」。切なくも美しい冬の景色と恋愛模様を描いたこの曲は中島美嘉の代表曲として、そして、世代を超えて愛されるウインターバラードとしても広く認知されている。その「雪の華」の15周年を記念して、ベストアルバム『雪の華15周年ベスト盤 BIBLE』がリリースされた。「雪の華」や新曲「夜が明ける前に」などの含む全44曲を「ラブ盤」「ナミダ盤」「キレイ盤」のテーマ別に収録した3枚組となる本作は、彼女の名曲・代表曲をプレイリスト感覚で“再発見”できる内容となっている。「雪の華」に対する思い、ライブに対する意識、この先の活動などについて、中島自身の言葉で語ってもらった。

曲が独り歩きしているからこそ「雪の華」は歌うのが一番怖い曲

――2002年に発表された「雪の華」は、中島美嘉さんの代表曲であるのはもちろん、国内外の多くのアーティストにカバーされるなど、世代、国境を越えて幅広く親しまれています。中島さん自身にとっては、どんな楽曲ですか?
中島 皆さん意外に思われるようですが、歌うのが一番怖い曲なんですよ。私としては“ほかにもいい曲がたくさんありますよ”という気持ちもあるけど、「雪の華」は一番知られている曲だし、そのぶん、しっかり歌わなくちゃいけないので。この前もコンビニで買い物してたら、年配の女性に“「雪の華」の人ですよね?”と言われたんですよ(笑)。それくらい曲が独り歩きしてるんだなって。

――ライブでも毎回歌っていますが、飽きることはないですか?
中島 そうならないように、リハーサルではなるべく歌わないようにしています。飽きるわけではないけど、あまり歌い過ぎると、どう歌えばいいかわからなくなるんですよ。もちろん、好きな曲ですけどね。2000年頃から“いいタイミングで出したい”と温めていた曲だし、「この曲にはタイアップを付けないでほしい。楽曲だけで勝負したい」とワガママを言わせてもらったくらいなので。

――ベストアルバム『雪の華15周年ベスト盤 BIBLE』は、「雪の華」「ORION」「GLAMAROUS SKY」など全44曲を「ラブ盤」「ナミダ盤」「キレイ盤」のテーマ別に収録した3枚組。時代や流行に左右されない曲ばかりだなと改めて実感しました。
中島 デビューのときから、流行を追わないプロデューサー(近藤宜幸氏/2010年に逝去)と一緒にやってましたからね。20歳そこそこの女の子にファンクやソウルを歌わせた方だし、彼の力は大きかったと思います。最近、最初のほうの曲を歌うことがおもしろくなってきたんですよ。当時、インタビューなどで「この曲は好きじゃない。ライブでも歌いません」と言っていた曲も――自分でもヒドい発言だなと思いますが(笑)――“いいな”と思うようになったので。当時の音源を聴くことで、“こういうふうに歌っていたのか”という発見もあるし、そのときの歌い方に戻している曲もあります。

――初回生産限定盤には昨年開催したツアー『MIKA NAKASHIMA FULL COURSE TOUR 2017〜YOU WON’T LOSE〜』の映像を収録。このときのツアーはどうでした?
中島 台北、中国での公演が先だったんですよ、このツアーは。言葉の問題もあって、普段のライブみたいに「何か質問ある?」みたいなトークはできないので(笑)、そのぶん楽曲を増やして、いつもよりも多く着替えたんです。アルバム『MUSIC』のツアーからは自分で衣装を選ばせてもらっているんですよ。ツアーの前に2週間くらいニューヨークに行くのが恒例になっていて、そこで衣装を買って。自分だけじゃなくて、ダンサーさんやバンドのメンバーの衣装も選んでいて、特にバレリーナの衣装にはすごくこだわっちゃいますね。

――他の演者の衣装を選ぶことで、ステージの統一感も生まれそうですね。
中島 そうかもしれないです。ただ、ダンサーやミュージシャンの皆さんは、動きやすさ、演奏しやすさが大事じゃないですか。それを事前にリサーチして、ステージのコンセプトに合わせて衣装を決めて。そうやって作り上げていくのが好きだし、“これは私のライブだ”という意識もないんです、実は。ライブはみんなで作り上げるものだし、私はそのなかで歌を担当しているだけというか。音のことも、すべてお任せしています。みなさんプロ中のプロだし、誰か一人いなくても成立しないと思っていますから。

今年は初挑戦も――怖さもあるが、1つひとつのことに向き合いたい

――アコースティック編成のプレミアム・ツアーも好評です。
中島 プレミアム・ツアーはまったく決め事がなくて、すべて自分で決めさせてもらってるんです。ホールツアーと違って、“こういう歌い出しにしたい”みたいな意見を言わせてもらうし、本当にやりたい放題で(笑)。このライブを重ねることで、自分の表現を見つけられた実感もあるんですよ。何て言うか、みんなで一緒にデトックスしている感じがあって。

――歌を介して、感情を浄化するというか。
中島 そうですね。ライブ会場に手紙を持ってきてくれる方もいて、そのなかにはかなり深刻な悩みが書かれていることもあって。いろんな感情を抱えながら会場に来て、私の歌を聴いて笑ったり泣いたりして、気分よくスッキリと帰ってもらえたらなと。大人になると、なかなか泣けないじゃないですか。私のライブに来たときだけは、感情を解放して、自由にしてもらえたらなって…。そういう場所が作れたことは良かったし、それが私が歌っている意味だと思うんですよね。確信が持てたのは、そのことだけだかな。それもここ1〜2年の話ですけど。

――2月1日からは「雪の華」をモチーフにした映画『雪の華』が公開。中島さんも映画を観られたそうですが、感想を聞かせてもらえますか?
中島 主人公の2人(登坂広臣、中条あやみ)の恋愛模様も素敵なんですけど、私は高岡早紀さんが演じる母親(中条が演じる平井美雪の母親)の目線で観てたかもしれないですね。“強いお母さんだな、素晴らしいな”って。ストレートな物語も良かったです。“ここに現れて!”というタイミングで彼が登場したり、“本当にことが伝わってほしい”と思っていると、ちゃんとそういう展開になったり。すごく素直に楽しめる作品だと思いますね。

――登坂さんが演じる悠輔が働いているカフェの名前が“Voice”で、劇中でも“声”が大切なモチーフになっていて。中島さんの楽曲「声」、アルバム『VOICE』とのつながりも感じられました。
中島 私も“もしかしたら、そうなのかも”と思いました。実際はどうなのか、知らないんですけどね(笑)。結末も「雪の華」の歌詞に寄せてくれたのかなって。

――2020年にデビュー20周年を迎えますが、この先、どんなことをやってみたいですか?
中島 ありがたいことに、1年以上先までいろいろなことが決まっているんです。まだ詳しくは言えないけど、初挑戦もあって。怖さもありますが、とにかく丁寧に1つひとつのことに向き合っていきたいです。

(文/森朋之)
中島美嘉 オフィシャルサイト(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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