相次ぐキャリアアーティストの楽曲一斉解放 若年層向けデジタルプロモーションの重要性が浮き彫りに
ユーザー層の相違が顕著に表れるサブスクサービス
週間デジタルアルバムランキングでは、前述のベストアルバムをはじめ、TOP100内に20作品。週間デジタルシングル(単曲)ランキングでは、26位の「やさしさに包まれたなら」をはじめ、TOP100内に13曲がランクイン。デジタル配信では、まとめて聴けるお得感からアルバムのセールスが伸びた。
またサブスクリプションサービスでは、「AWA」が8曲、「うたパス」が14曲、「dヒッツ」が5曲、20位以内にランクインした。幅広い世代をユーザーに持つ前述の3サービスでは、懐かしさから「やさしさに包まれたなら」や「春よ、来い」など、往年のヒット曲を中心に再生回数を伸ばした。一方で若年層を多くユーザーに持つ「LINE MUSIC」や国内外の最新ヒット曲を好む傾向にある「KKBOX」では、TOP20入りしなかった点も興味深い。
バズる可能性を十分に秘めたキャリアアーティスの動画プロモーション
例えば今週の「LINE MUSIC Weekly Songs Top20」では、Nissy(西島隆弘)の「トリコ」が先週11位から首位に浮上。同曲は若年層に上手く訴求させた1つの成功例といえる。MVのサビでNissyと新木優子がカップルで踊る“トリコダンス”は、「TikTok」でNissyの1人バージョンが話題となっている。「TikTok」に搭載のデュエット機能を使用すると、まるでNissyと一緒に踊っているかのような動画が制作できると、若年層を中心にバズり、「LINE MUSIC」での再生回数の増加に繋がった。そして、ヨルシカの「ただ君に晴れ」も「TikTok」での人気が後押し、13位より6位に浮上した。
また、1983年のラッツ&スターの大ヒット曲を2010年に倖田來未がカバーした「め組のひと」は、「TikTok」に投稿された動画をきっかけに「LINE MUSIC」で上位入りした。こうした例から見ても松任谷由実の「真夏の夜の夢」などテンポの良い楽曲は、“動画・音楽・ダンス”といった図式ともマッチし、バズる可能性を十分に秘めている。前述の例はあくまで1つの手法だが、新規リスナーを獲得するうえで、より一層、若年層に向けた立体的なプロモーションがカギとなってくるだろう。