グループ魂・暴動(宮藤官九郎)が明かす新境地となったMV制作

 脚本家・宮藤官九郎、俳優・阿部サダヲらが所属するパンクコントバンド・グループ魂が、前作アルバム『20名』から約3年ぶりとなる新曲「もうすっかり NO FUTURE!」を9月5日に発売。本作のMVは、“全編一人称視点”の映像に挑戦し、メンバーの「暴動」こと宮藤官九郎自らメガホンを取った。イリヤ・ナイシュラー監督によるアクション映画『ハードコア』やザ・ウィークエンドのミュージックビデオなどの海外作品ではあるが、日本ではあまり類を見ない手法で撮影したMVと新作について語った。

今の時代だからこそ、CDとアナログ盤でリリース

 前作「だだだ」(2011年2月発売)から約7年ぶりに新曲を発売したグループ魂は、デジタル配信時代のいま、あえてCDシングルとして発売することにしたと言う。

暴動 最近はCDシングルを出さずに配信だけのアーティストが多いんですけど、僕らは時代の流れに逆行してパッケージという形で残していかないといけないんじゃいないかと思ったんです。携帯やパソコンで聴く音楽とはなんかちょっと違うというか。それから今回は、CDだけでなく初めてアナログ盤も作ってみました。

 パンクロックは反骨精神の象徴でもあるが、パンクを愛するグループ魂だからこそ、時代の流れに逆らってあえてCDシングルの発売を決めたのだろう。“すっかり中年だった”とおじさんの悲哀がトーキングパンクなアレンジに乗せて歌われる同曲の制作過程については――。

暴動 “老いていくこと=加齢”というテーマと、曲のタイトルだけが僕のなかで最初から決まっていて、あとはギターのリフで引っ張るような曲にしたいと思いました。歌詞を僕が、メロディーとアレンジを遅刻(富澤タク)で少しずつ作っていきました。アルバムのなかの1曲ではなくシングルだったので、いつもと違う作り方をしてみたんです。

宮藤がミュージックビデオを撮影 信頼できるし安心感がある

 本作では、ミュージックビデオを初めて暴動自ら監督を務め、“全編一人称視点”の映像にチャレンジ。ギターに特殊なカメラを装着し、暴動がギターを弾きながらカメラマンと共に撮影するという特殊な手法が取られた。2016年4月にアメリカで公開のイリヤ・ナイシュラー監督によるアクション映画『ハードコア』(2017年4月日本公開)で同手法が注目され、ザ・ウィークエンド「False Alarm」のMVが話題となった。

暴動 海外では“一人称視点”のミュージックビデオはたまにありますが、日本ではまだ誰もやってないんじゃないかなと思って。今回みたいにおじいちゃんたちとスリッパで戦うようなくだらない映像でチャレンジしてみたかったんです(笑)。『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』(2016年6月25日公開)のときに、ザリガニやインコの主観で映像を撮るノウハウを得ていたので、カメラマンの相馬大輔さんに相談しながら撮っていって、それを繋いだら意外と面白い映像になって安心しました。
破壊 カメラにつけたギターを弾きながら宮藤さん自身が撮っていたのですが、朝7時ぐらいに皆でハァハァ言いながら走って撮影していました(笑)。
バイト君 宮藤さんは信頼できるし安心感がある。
港カヲル しかも、映像を撮ってるときは機嫌がいい。すごく楽しそうなんだよな。
石鹸 メンバーのことを一番わかっているからね。
暴動 だからこそ今までグループ魂のミュージックビデオの監督はやらなかったんですが。

 カップリングの「男は泣く」は石鹸が今年50歳を迎えたのを記念に再スタートしたグループ魂の対バンシリーズ『三宅ロックフェスティバル』のテーマソングとなっており、“私は泣いたことがない”と歌われる某曲に対する勝手なアンサーソングだと暴動は言う。

暴動 私は泣いたことがない?…いや、三宅は泣いたことがある(笑)。
石鹸 最近は宮藤さんが監督した『中学生円山』の泣けるシーンじゃないところでも泣けるんです(笑)。
小園 『三宅ロックフェス』でご一緒した怒髪天の増子さんがステージで歌いながら泣いてらしたんですが、ああいう男泣きはすごくカッコイイと思います。
遅刻 平櫛田中という彫刻家が“六十、七十洟垂れ小僧、男盛りは百歳から”と100歳の頃におっしゃっていて、そこからさらに30年分以上の制作用木材もストックしてたらしいんです。そういう先人を知るにつけ、まだ50歳なんて人生の半分だし全然ケツが青いのかなと。

 “NO FUTURE!”と歌いながらも、まだまだ人生の半分だという彼ら。これからも時代の流れに逆走しながら新しいパンクロックの形を見せてくれるに違いない。

(文/森朋之)
[18年9月3日 コンフィデンスより]
グループ魂 オフィシャルサイト(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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