女性アイドルシーンの現在地 新メディアの台頭で変わる成功の形
中堅アイドルの相次ぐ解散 不完全燃焼も?
しかし、その一方で目立っているのが、メジャー中堅グループの相次ぐ解散だ。そこには2つのパターンがある。1つは、AKB48と同世代のハロプロの℃-ute、チャオ ベッラ チンクエッティ(前身はTHE ポッシボー)。アイドル活動の王道を貫き、年齢的にもやりきった感がある解散。
もう1つは、AKB48の成功からアイドルビジネスに参入したグループが多い、接触イベントがスタンダードになったことでローカルアイドルが台頭した世代のRev. from DVL、GEM、アイドルネッサンス、ぷちぱすぽ☆、Cheeky Paradeなど。グループの平均年齢は20歳前後であることなどから、不完全燃焼の解散のようにも感じられる。
この状況はメジャーシーンに限らず、中堅以下ではより多くの解散が起きている。アイドルマネージメントを手がけるTAKENOKOの代表取締役、加納凌氏は「現在、アイドルグループは日本全国に1000組以上いると言われています。アイドルを作ることのハードルが下がり、悪く言えば誰でもアイドルになれる時代になりました。その一方、シーンは年々成熟し、それと同時にファンの目も肥えてきています。しっかりとコンセプトを定めて仕掛けるファンが増えるアイドルと、ハードルが下がった結果生まれたファンが付かず解散していくアイドルの二極化がより加速していくと思います」と語る。
衰退はしていない 飽和状態に生まれるチャンスも
自身もアーティストとして活動しながら、アイドル論客としても知られるDa-iCEの工藤大輝は、シーンの現状を「最近は、楽曲のクオリティが高く、アイドルが好きというよりも、曲が好きでCDを購入する人も増えています。売れているアイドルは作家込みのワンチームを作り、そのチーム感がしっかりしていてわかりやすいほど、ファンが集まりやすいと思います」と分析する。
ここからわかるのは、女性アイドルシーンが衰退しているということはなく、一定の固定ファンの数は変わらず、そこにトップグループの新たな層が加わっているということ。ただし、中堅以下のグループは、解散も増えるなかで限られた数のファン争奪という熾烈な競争下に置かれている。北海道を拠点にする芸能事務所・ライブプロの代表、岩野祐二氏は「この状況は、新たなファンを獲得するチャンス。ローカルアイドルにとってはそのブランドが活きてくる踏ん張りどころです。東京で目立たないところで埋もれるよりも、北海道のトップに立つことで、全国で戦っていきたい」とポジティブに捉えて前を見据える。
時代とともに変わったアイドル活動の潮目
そして、ギフティング(投げ銭)という仕組みで応援するシステムのSHOWROOMが13年にスタートすると、そこだけの活動で成功するアイドルが現れ、メジャーからの参入も相次いだ。そこでは、楽曲リリースやライブ、握手会などではない、アイドルへのニーズが生まれている。時代とともにアイドル活動の潮目が変わったのだ。
SHOWROOMのコンテンツ制作グループ・グループマネージャーの村端裕也氏は「多くのファンは物理的な接触だけを求めているわけではありません。アイドルとコミュニケーションをして、その成長を見守りたいんです。だったら数秒の接触イベントよりも、SHOWROOMのコメントにリアルタイムで返事を返してもらったり、名前を呼んでもらったほうが濃密なコミュニケーションを築けますよね。なかには、SHOWROOMと接触イベントの会話を連動させて、より深いコミュニケーションを楽しむファンもいるようです。SHOWROOMで配信をすると握手会に並ぶ人数が増えるという声をアイドルたちからよく聞きます。そういう意味では、ライブとデジタルはもはや地続きと言っていいかもしれません」と語る。
多メディア時代に多様化するアイドルのあり方
テレビやラジオといったマスメディアはもちろんだが、日本文化に関心を持つ海外の人にもアプローチでき、かつ双方向のコミュニケーションが可能なソーシャルメディアは、新たなファン獲得やファンからの応援に応えるツールになるとともに、新たなアイドルとしてのあり方や成功の形を生み出すポテンシャルも秘めている。
飽和状態のシーンから抜け出すためには、そんなツールを活用した、これまでとは考え方の異なる戦略も必要になるだろう。