森川美穂、子育て経て再び歌手活動を本格化 セルフカバーベストで新境地
セルフカバー制作で再発見「私にはいい曲がいっぱいあったんだな」
「私が歌手になろうと独り立ちしたのは16歳。昨年、息子もその年齢になり、『よし、私はまた歌に気合いを入れるぞ!』と歌手活動を本格化させ、ライブも再び定期的に始めました」
幼い頃から歌うことが大好き。早くから歌手になることを決意し、第2回ヤマハボーカルオーディション『ザ・デビュー』で1万人の中からグランプリを受賞したのが15歳。16歳で上京し、17歳でシングル「教室」でデビューした。
「『教室』は、高校生が自分から“退学します”と宣言する歌で、今さらこの年でどう歌えばいいの?って思いまして、昨年11月のライブで『「教室」を歌うのはこれが最後です!もう歌えません!』って宣言しちゃったんです。そうしたらデビュー当時からのディレクターさんに『おいおい、デビュー曲を捨てちゃダメだよ』と言われました(笑)。それで『いっそ、ファンの方にこれまでの森川美穂の総決算をしてもらったらいいんじゃないか?』という話になって、“シングル曲ベスト10を教えてください”というアンケートをとったんです。そうしてとんとん拍子でベストアルバムを作ることになり、今回アルバムに収めたのはその上位曲。アンケートの1位になったのがタイトルにした『Be Free』だったんです」
「私にはいい曲がいっぱいあったんだなぁと自分でも再発見でした。どの曲も聴き手のいろいろな思い出と共にあるので、大きく変えないでおこうと決めました。楽曲ってイントロが始まった瞬間に、そのテーマみたいなものが聴こえてくるじゃないですか? 細かいアレンジは変えつつも、それは壊さないようにしました。バンマスをやっていただいたベースの河野充生さんは、日頃のライブでも一緒にやっているから、ライブでのファンの反応も見てわかっている。聴き手が期待してるところを解釈して作ったんですね。また、これをそのままライブでも出来るように、とも意識して作りました。そして私自身は、今の自分の声でシンプルに歌おうと心がけています。懸案の『教室』も何も考えずにストンとシンプルに歌ったんですよ」
この歳で歌いたいと思うメロディーや言葉に出合えて幸せ
「これは女性の中の『愛』を歌った作品で、テーマは男と女の心のすれ違いです。作詞家の松井五郎さんの書き方がとても意味深で、見方によっては、倦怠期の男女かもしれないし、もしかしたら不倫かもしれない、そんな作品で、私はこれまでそういうのを歌ったことがないんです。だって、自分で言うのもなんですけど、(私の歌声って)爽やかじゃないですか(笑)。メジャーコードの中でパーンッと歌うイメージ。でも実際は、子どもの頃からしっとりと暗めの歌が好きで。黒沢年男さんの『時には娼婦のように』なんて小さい頃に意味もわからず歌っていて、母に怒られたりしていたんです。だから、こんなに救いようのない女性の心情を歌った曲を『さぁどうぞ!』と差し出され、なんで私がこういう世界観が好きだってわかったんだろう?とびっくりしました。書いて下さったのは作詞家の松井五郎さん。作曲して下さった山川恵津子さんにご紹介いただいたんですが、この年齢になって自分が歌いたいと思うメロディーや言葉に出合えて、本当に幸せです」
切なさに胸がキュッと締め付けられるような「大人の歌」。でも、はて、大人の歌ってなんだろう? 森川の新曲を「大人の歌」と言っていいのだろうか。
「いいと思います。大人の歌って、日常の切り取りにあると思っています。そりゃ男女の倦怠期や、不倫の歌はそうそう日常じゃないだろうけど(笑)、『ビニールの傘』と言われたら一気に日常に近づく。そういうのあるかもしれない、こういう気持ちを味わってみたい、こういう想いわかるな、そんな日常から生まれてくる切り取り、それが大人の歌にはあると思うんです」