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チョー・ヨンピルからBTSへ…50年で変革した韓国・釜山のいま 2030年万博誘致に向け建設ラッシュも

高層ビルが立ち並ぶ松島海水浴場

「松島海上ケーブルカー」からは釜山港も見える高層ビルが立ち並ぶ松島海水浴場(C)oricon ME inc.

 社会現象を巻き起こしたドラマ『冬のソナタ』から今年でちょうど20年。その約30年前には、韓国出身のトロット(演歌)歌手チョー・ヨンピルの「釜山港へ帰れ」がヒットし、日本でも昭和カラオケの定番となった。昨年にはBTSがライブを開催し、“釜山”の街が世界中に注目された。2030年の万博誘致に向け、新たな観光スポットが続々誕生している韓国・釜山の現在地を探る。

「釜山港へ帰れ」から約50年…生まれ変わった韓国屈指の港町・釜山 日韓交流の“窓口”を長年担う

「BUSAN X the SKY」を目の前に海雲台ビーチ沿いに走る「海雲台スカイカプセル」(C)oricon ME inc.

「BUSAN X the SKY」を目の前に海雲台ビーチ沿いに走る「海雲台スカイカプセル」(C)oricon ME inc.

 韓国・釜山といえば50代以上の世代は、韓国出身のトロット(演歌)歌手チョー・ヨンピルのヒット曲「釜山港へ帰れ」(1972年韓国発売)を思い浮かべる人もいるだろう。日本では、1977年発売の李成愛(イ・ソンエ)のアルバムに初めて収録され、作詞作曲家兼音楽プロデューサーの故・三佳令二さんによって日本語の訳詞がつけられた。帰ってこない男性を釜山港で待つ女性の心情が歌われ、国を越えて多くの人の心を掴んだ。その後も藤圭子さんや美川憲一、ジェロらがカバーし、ロック調にアレンジした渥美二郎が歌う同曲が、日本でもヒットした(1983年発売)。

 釜山は、山口・下関と明治時代から関釜連絡船の航路で結ばれ、長年にわたり日韓交流の窓口であった。1970年に日本初の国際定期旅客航路として新たにフェリー航路が就航すると、各種民間交流が盛んになった。いまでこそ海外旅行は飛行機で行くことをイメージするが、「釜山港へ帰れ」がヒットした当時は船で釜山に行くことが主流であった。

 また、釜山広域市は首都ソウル特別市に次ぐ第二の都市で、韓国最大の港湾都市として栄えてきた。日本でも『釜山国際映画祭』(1996年創設)の開催地として知られ、監督や俳優が招待され、その様子が報道されてきた。その一方で、レトロさが漂う海辺の街というイメージが強かった。

 近年の釜山は、新たな観光鉄道やケーブルカーを始め、商業施設や高層マンションが続々建設され、変革期にある。2025年の大阪・関西万博に続き、釜山広域市は「世界の大転換、より良い未来に向かう航海」をテーマに、2030年の国際博覧会(万博)を釜山北港での開催を目指している。

鉄道やケーブルカーの再利用で環境にやさしい再開発も…コロナ禍に新たな商業施設が続々

海雲台LCTランドマークタワー(画像提供: BUSAN X the SKY)

海雲台LCTランドマークタワー(画像提供: BUSAN X the SKY)

 そうした中、コロナ禍にも釜山では、新たな商業施設が立ち並んだ。なかでもひときわ存在感を放っているのは、2020年にオープンした海雲台(ヘウンデ)のLCTランドマークタワー。3棟の高層ビルからなりオフィスとレジデンスがある複合施設として誕生。今年4月には、釜山万博に向け博覧会国際事務局(BIE)の調査団が訪れた場所でもあり、新しいランドマークとしてロッテが手掛け、人気スポットとなっている。

 最も高い棟にある100階立ての「BUSAN X the SKY(釜山エックスザスカイ)」は、韓国で2番目に高く(411.6メートル)韓国最大規模の展望台。海雲台海水浴場沿いに入口があり、広安大橋や釜山港大橋、月見峠(タルマジゴゲ)といった名所など、ビーチと都市の夜景が一緒に楽しめる。展望レストランやショップのほかには、世界一高い場所に位置する「スターバックス コーヒー」(99階)があり、3階から19階までロッテホテル最高級ブランドの「シグニエル釜山」も併設されている。

『BUSAN X the SKY』から眺める海雲台ビーチ(画像提供: BUSAN X the SKY)

『BUSAN X the SKY』から眺める海雲台ビーチ(画像提供: BUSAN X the SKY)

 そのLCTランドマークタワーと隣接された「海雲台ブルーラインパーク」には、韓国高速鉄道(通称・KTX)の普及により使用されなくなった東海南部線の旧鉄道線路を活かし、海雲台尾浦〜青沙浦〜松亭に至る4.8キロ区間で新たな路線が運行している。海岸の絶景に沿って走る「海雲台海辺列車」は、2020年10月に開通。その上を走るカラフルな4人乗りの「海雲台スカイカプセル」は、2021年にオープンした。

 同所について観光事業の開発を担う韓国観光公社・ジョン・ナリさんは、「外国人旅行客を意識せず、地域の観光活性化のために作られました。韓国の若者がSNSで投稿し、それが注目を集めるようになり、『地元の若者に人気のスポット』として日本の若者にも興味を持ってもらえているようです」と言う。

海雲台が一望できる「海雲台スカイカプセル」目の前にはLCTランドマークタワーも

海雲台が一望できる「海雲台スカイカプセル」目の前にはLCTランドマークタワーも(C)oricon ME inc.

 「BUSAN X the SKY」や「海雲台ブルーラインパーク」は、韓国ドラマ『今、別れの途中です』などでも印象的なシーンで登場している。美しいビーチに隣接された近代的な施設とノスタルジックな鉄道は、SNS映えする独特な町並みを生み、感度の高い若者世代を中心に注目されている。

 一方、博多や下関、対馬、大阪などの港を結ぶ南浦洞(ナンポドン)は、韓国一の規模を誇る魚介類専門のチャガルチ市場など、海の玄関口として栄えてきた。その南側に位置する松島(ソンド)は、1913年にオープンした韓国第1号の海水浴場がある。2017年には、松島海水浴場の復元事業として全長1.62キロ海上86mと海の上を行き交う「松島海上ケーブルカー」が、29年ぶりに再開した。

 これまで何度か釜山に訪れたことのある福岡県久留米市在住の60代女性・稲吉さんは、コロナ前と比べ「トイレなどの公共施設が、とてもキレイになった」と言う。至るところでビルや施設を建設中だが、同時に過去の遺産を活かした環境にやさしい再開発も進んでいる。K-POPやドラマといったエンタテインメントコンテンツだけでなく、地方の活性化や都市開発の面でも見習う点は大いにありそうだ。

「海雲台ブルーラインパーク」エリアには、ビーチと高層ビルが立ち並ぶ

「海雲台ブルーラインパーク」エリアには、ビーチと高層ビルが立ち並ぶ(C)oricon ME inc.

コロナ禍を経てアジア以外の欧米諸国からの旅行者が増加 BTSの釜山公演も若年層獲得の後押しに

金海国際空港には国際博覧会(万博)に向けた大きな看板が目立つ

金海国際空港には国際博覧会(万博)に向けた大きな看板が目立つ

 その街づくりだけでなく、釜山国際博覧会誘致のための広報活動にも注目したい。昨年7月には、釜山国際博覧会誘致広報活動を議論する初の戦略会議の場でパク・ジョンウク招致委員会事務総長は、「誘致競争が激しい状況でBTSの支援は、大きな力になると確信している」と発表。誘致委員会と釜山市は、BTSらが所属する芸能事務所「HYBE」に協力を仰ぎ、BTSを広報大使に任命した。

 昨年10月15日には、誘致祈願のコンサート『WORLD EXPO 2030 BUSAN KOREA CONCERT BTS <Yet To Come> in BUSAN』を、釜山アジアド主競技場で開催。同ライブは全世界で同時生中継され、リアルタイムで日本語含む8ヵ国語翻訳された。

 会場では約5万人、ライブビューイングは釜山港国際旅客ターミナル野外駐車場で約1万人、海雲台特設ステージで2000人以上が観覧。「Weverse」を通じたオンラインライブストリーミング再生数は4907万回に達し、韓国のケーブルテレビJTBCでは、アーティストの公演としては異例の視聴率3.3%を記録。オン・オフラインともに無料で行われ、全媒体を通じて世界229ヶ国・地域で盛り上がりを見せた。

 また、コンサートの前後に釜山一帯で行われた『THE CITY』プロジェクトも盛況だった。釜山とソウルで開かれた展示会『2022 BTS EXHIBITION : Proof』には10月15日までに約2万人が来場。釜山会場の来場者のうち、3分の2は外国人だった。Kカルチャーの代表的なグローバルアイコンであるBTSを通して、官民一丸となり「釜山」を全世界にアピールした。

 今年5月の釜山訪問外国人観光客は15万3241人で、前年同月比(2万5763人)494.8%。コロナ禍を経て、本格的に旅行需要が増えるなか、6月29日〜7月2日には、釜山と慶州にて韓国観光公社主催のファムツアー(国や自治体等が観光誘致を目的とした旅行事業者やメディアなどによる現地視察)を開催。日本のメディアやインフルエンサーを対象に実施された。

「コロナ禍にはK-POPだけでなく、ドラマ『イカゲーム』や映画『パラサイト』が、日本以上に欧米で人気を得ました。コロナ禍を経て、アジア諸国だけでなく、欧米やそれ以外の地域からの旅行客も増えています」(韓国観光公社のヤン・ギョンスさん)

 釜山にて『ORICON NEWS』の取材に応じたカザフスタン共和国出身の建築学を学ぶ20歳の女子大学生は、「BTSやBLACKPINK、TWICEといったK-POPが大好きです。初めて韓国に来ましたが、とてもすばらしい」と従姉妹と共に10日間の休暇を楽しんだ。彼女たちのようにKコンテンツを通じて、世界中から来韓する若い世代も増えている。

 今年11月末開催の「BIE総会」で加盟国の投票により開催地が決定する。イタリア・ローマ、サウジアラビア・リヤドによる激しい誘致レースを繰り広げるなか、釜山に軍配が上がるのか、今後の同行に注目したい。
◆韓国観光公社オフィシャルサイト(外部サイト)

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