ORICON NEWS
「100円商品は守る」続く値上げラッシュにダイソーが出した答えとは? 50年間“制約” の中で培ったノウハウ
円安、原材料、原油価格高騰…続く値上げラッシュでダイソーも“脱100円”加速?
「近隣に日用品を買えるお店が少なかったため、便利になったと喜んでくださる方は多いですね」(大創産業 広報課係長・岩橋理恵さん)
“100円ショップ”としておなじみのダイソーだが、100円以上の商品も扱っている。2つの新ブランド「Standard Products」「THREEPPY」の価格帯は300円が中心だ。
「実は、ダイソーが100円以上の商品を扱うようになったのは20年前からなので、今に始まったことではないんです。今は24年ぶりの円安更新と言われていますが、その時もダイソーは100円を中心とした価格を維持していました。値段の制約があったからこそ、様々な企業努力を重ね、危機を乗り越えてこられたのかもしれません。現在では、取扱商品を広げたことで、一層多様なお客様のニーズに対応できるようになりました。50年間蓄積してきたノウハウを生かしながら、私たちは社会の生活インフラとなることを目指しているので、これからも“100円商品”は守り続けます」(大創産業 広報課課長・後藤晃一さん)
幅広いニーズ、品質にこだわり50年間“価格を維持”するノウハウとは?
現在、国内4042店舗、海外では25の国・地域で2296店舗(2022年2月現在/全ブランド)を展開。価格を維持する上で、「日本発グローバル小売店」としてのスケールメリットは大きい。積極的に海外展開を進めてきたことも、昨今の円安の煽りを受けづらかった要因だろう。
そして、今とくに問題になっている原材料や輸送費の高騰には、さまざま企業努力がなされている。
「輸送費を抑えるために、パッケージデザインの簡素化はもちろん、船で運搬する際の積載効率を向上させるため、緩衝材一つにも工夫をしています。それによってより多くの商品を運ぶことができ、輸送費を抑えることができる。結果的に、販売価格も維持できています」(後藤さん)
「過去には8000円のホワイトボードや、5000円のビリヤード台なども扱ってきました。現在の最高額の商品は1000円です。1200円で販売した日本人形は、主に海外のお客さまに好評でした。100円均一という括りを外したことで、より幅広いニーズにお応えできるように商品開発を進めています」(後藤さん)
取扱商品の7割が300円の「Standard Products」では、新潟県燕市のカトラリーや広島の熊野筆メイクブラシ、岐阜県関市の包丁といった日本の匠の技が光る伝統工芸品も扱う。
「品質の高さで海外からも評価の高い商品です。一般には高額とされるこれらの商品ですが、職人技と弊社の開発ノウハウをコラボさせることで『ダイソーらしい価格』としてご提供できました」(後藤さん)
時代と消費者のニーズに合わせて…身近な企業だからこその強み
「環境に配慮した商品の展開にも力を入れております。大量生産する商品だからこそ、小さなエコが大きなインパクトに繋がる側面もあります。最近は環境に配慮した商品を選びたいというお客さまも増えています。バラエティに富んだ商品をお届けすることで、環境にも寄与したいですね」(岩橋さん)
一方で、「生活インフラ」としての自負から自然災害への対応も素早い。
「地震や水害などの被災地では、お茶碗がすべて割れてしまった、着替えの肌着がないなど生活のお困りごとがたくさん起きます。とはいえ、現地では店舗スタッフも被災者ですからお店の再開も難しい。そこで全国ネットワークを活かし、被災していない地域から、社員が駆けつけ早期開店できるように努力しています」(後藤さん)
値上がりが続く世の中でも廉価で買い物をしたい、環境に配慮した商品を選びたい、災害時に必要なものをすぐに手に入れたい。これらはすべて、消費者のニーズだ。
「多くが自社開発のため、ニーズを感じてから商品として展開までのスピードが速い。そして、大量生産だからこそ少しの変化の影響が大きい。消費者に身近な企業だからこそ、使いやすい商品の提供で社会に役立っていきたいと思います」(後藤さん)
ニーズの多様化で、日用品を超えて暮らしを彩る「Standard Products」や「THREEPPY」が脚光を浴びることも増えた。
「ブランド展開によってお客さまの裾野は広がりました。生活ニーズへの対応と価格維持を両立させることで、より多くのお客さまのお声に答えていきたいと思います」(後藤さん)
多くの企業で値上げラッシュが止まらない中、それと逆行するように創業50周年記念として「日用品増量キャンペーン」も展開されている。日々の暮らしに欠かせない日用品の増量は、家計が圧迫される昨今の大きな助けになるはずだ。これからも生活者に寄り添う「生活インフラ」として、感動価格・感動品質に期待したい。
(取材・文/児玉澄子)