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今田美桜、満を持しての主演 悪役キャラ経ての「王道」役にどう応える? 試される実力

 今勢いを増している俳優・今田美桜が、13日放送の新ドラマ『悪女〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(日本テレビ系)で、意外にも初となる主演を務める。女性の「生きづらさ」「働きづらさ」を、底抜けに明るい性格である新入社員の主人公が爽快にぶち壊していくコメディで、正統派のキャラクターだ。これまでの出演作は、勝気な性格やいじめっ子という役どころで“悪女”感の強い演技が印象的だった。どんな役柄にも挑戦できる若さもあるが、同作で自身にどんな“色”をつけていくのか。彼女の真のポテンシャルに期待が高まっている。

悪役キャラも魅力的に、『花のち晴れ』で獲得した「信頼感」

 ここ最近露出が急増中の今田美桜。2015年にBSプレミアムドラマ『私は父が嫌いです』、映画『罪の余白』でそれぞれ初出演を務め、その後もドラマ『僕たちがやりました』(2017年)、『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』2017年)など続々と出演が続いた。

 とくに大きな爪痕を残したのは、2018年に人気コミック『花より男子』シリーズをドラマ化した『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)の真矢愛莉役だろう。過去のインタビューで本人も「私の顔と名前を知っていただくきっかけになった」と話しており、ツインテールが特徴の勝気な小悪魔的役どころで、原作の“再現度”も話題になった。

「一言で“原作キャラを再現する”と言うが、それは実は難しい」と語るのはメディア研究家の衣輪晋一氏。今田の知名度を高めた『花のち晴れ』の演技と実力について、次のように解説する。

「二次元を三次元に立体化するためには、原作にない“余白”を表現しなければ、“人間としての存在感”を出すことは難しい。何より、あれだけ目立つ風貌でありながら、ヒロインを食わない立ち位置も見事でした。役者は脇であるほどスポットライトが当たりにくいため、キャラクターをしっかり見せるように“より前へ出る”意識が必要ですが、一方で“脇である”という芝居の引き算も重要。彼女は、その引き算もしっかり体得していました。当時からすでに若い層の人気を集めていましたが、現場でも天狗感はなく控えめ。素直に監督の指示を聞いている姿が印象的でした」(衣輪晋一氏、以下同)

『花のち晴れ』が放送された2018年、インスタグラムでは「#MVI(Most Valuable Instagrammer in Japan)2018」の「トレンド」部門に選出。そして2020年は、「2020上半期タレントCM起用社数ランキング女性部門」(ニホンモニター調べ)で、広瀬すずに続く2位を獲得するなど、今田の人気はうなぎ登りとなった。

なお2019年の『3年A組』出演時には、「現場取材では主役やヒロインの撮影の様子をメモするのが通常ですが、脇役で出演していた“今田美桜ちゃんからも目を離さないでほしい”という指令が現場記者に飛んでいた(衣輪氏)」という。

コロナ禍の“はしご出演”も好転、「22歳までに結果を残す」肝が据わった俳優人生への覚悟

 今田の俳優人生にとって、2020年のコロナ禍での“はしご出演”も、好転を期したきっかけのひとつだった。もともと4月に放送予定だった『半沢直樹』(TBS系/後9:00〜)と、7月に放送予定だった『親バカ青春白書』(日本テレビ系/後10:30〜)が、コロナ禍でのドラマ延期が相次ぎ、 2作が同時期に放送されることになった。両作に出演した今田に、SNSでは「2時間も連続で今田美桜ちゃんが見られるなんて眼福」、「2ドラマ連続出演なんてすごすぎ!」と話題を集めたのだ。

 なにより、2作の役どころがまったく異なることが、演技の幅をアピールできるきっかけにもなった。『半沢直樹』では、半沢を尊敬する正義感いっぱいの新入社員の役。『親バカ〜』では、東京にあこがれを抱く親友想いの大学生というキャラクターで、「半沢直樹にも出てるしそっちにも出てるんだ!」「さっきまで闘ってた子だよね? 今度は大学生?」などの反響が寄せられ、技量の高さを如実に証明していた。つまり、コロナ禍という“災い”や“困難”を好転に結び付けることが出来た。

 とはいえ今田のキャリアが順風満帆だったというわけではない。なかなか芽が出なかった頃は、福岡から東京にオーディションを受けにきて、同世代の“ライバル”女優の実力に圧倒され、帰りの飛行機の中で堪えられずに泣いてしまったこともあったという。両親は役者業に大反対したが、「同世代が大学を卒業する22歳までチャレンジしてみて、ダメだったらもう1回考えてみなさい」という条件付きで芸能の仕事を選ぶ事を許してくれたという。

 期限付きでの活動で挑んだ俳優業。ときには著名俳優からのアドバイスに支えられたこともあったようだ。2019年のORICON NEWSのインタビューで今田は、自身の活動について次のように語っている。

「『花のち晴れ』クランクイン直前まで『記憶』(フジテレビNEXT/J:COM)というドラマを撮影していました。主演は中井貴一さんで、そのほかにもベテランの共演者が多く、勉強になることもたくさんあったんですが、とにかくついていくのに必死。自分の未熟さを痛感させられることが多くて、すっかり自信を失ってしまったんです。

 ところが中井さんは『あなたは30点台。でもそれがいい、そのままでいなさい』とおっしゃってくれて、その言葉に肩の力がスッと抜けたんですね。自分の未熟なところを認めるのは大事だけど、変に飾ったり背伸びしたり必要はないんだって。中井さんには本当に感謝しています」

 覚悟を決めて挑戦する「俳優」という仕事に、真摯に向き合う様子がうかがえるエピソードだ。

キャスティングは実力主義へと回帰、「主演」の重みを体現する契機となるか

 そんな今田は、現在25歳。これが連ドラ初主演作と聞いて意外に思う方も多いだろう。近年、ドラマの主演は人気の“勢い”だけで獲得できていると考える視聴者も多いのかもしれない。そうとらえると、今田は同世代のなかでもトップクラスの人気であり、主演は「遅すぎる」との感想を持つ方もいるはずだ。

 しかし衣輪氏は、長いドラマの歴史を振り返ると、かつてドラマの主演には“重み”があったと解説する。

「『白い巨塔』(1967年)の佐藤慶さん、『ふぞろいの林檎たち』(1983年)の中井貴一さんなど、主演は人気と実力を兼ね備えた役者がやるもの。もちろん『太陽にほえろ』など石原裕次郎さんら重鎮がいて、若い萩原健一さんや松田優作さんらフレッシュな顔を見せるパターンもありましたが、トレンディドラマが台頭してきてからは、わりと人気の勢いが重視されて役者が主役を演じる流れが強くなっていたのです」

 この背景には、芸能事務所によるビジネス的な側面もあるという。

「『一度主演をやれば“主演級役者”としての泊とギャラアップが見込める』というものです。これが00年代にさらに加速。その反動で、役者の実力を見る“バイプレイヤー”ブームも起こり、現在はキャスティングが全体的に、実力主義に戻っている印象です。そういった意味で、今田さんの初主演の“今さら”感は、主演というものが本来、いかに重いかを視聴者に気づかせるいい契機になるかもしれません」

 また今田は映画『東京リベンジャーズ』(2021年)あたりから、トレードマークであったデコ出し、ロングヘアから前髪ありのボブヘアに。一部では「誰か分からない」というユーザーの声も聞かれるなど、トレードマークを捨て去る勇気も持ち合わせている。さらには過去のインタビューでも「他と誰かを比べることはしない。自分のことで精一杯」と語っており、自分なりのモチベーションで実力をつけていっての今、この主役があることがうかがえる。

 謙虚で前向き、目の前のことにしっかり向き合い歩んできた今田。ただ今回の相手役は、“主役食い”との異名を持つ江口のりこだ。その江口相手に、今田がどれだけの立ち回りを見せるか…。今田が“主演の重み”をいかに体現できるかに期待したい。
(文/中野ナガ)

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