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「どうしてこうなった…?」“必死すぎるネコ”の姿に反響、裏側に猫写真家の奮闘と愛「地域猫の世話をする人に喜んでもらいたい」
「再現性は作れない」人気シリーズだけに苦労も…、“必死すぎるネコ”撮影の裏側
沖昌之 自分としては自信作だったのですが、実際に見てくれる人がどう感じるのかはすごく心配でした。でも発売して、百貨店で展示会を開いたりする中で、とてもいい反応をいただけました。「『必死すぎるネコ』の最初の作品のような面白さがあるし、最後までどういう展開になるのかわからず飽きさせない」と言ってもらえて、歴代でも一番いい作品になった気がします。
――シリーズものを続けていくと、読者を驚かせ続けるのはやはり大変ですか?
沖昌之 猫がいつも奇跡を起こしてくれるわけではないですし、そもそも猫がする仕草って限られていると思うので。そのなかでいかに、「必死すぎる」ように見えるかという部分が重要になります。時間さえかければ奇跡的な瞬間に出会う確率は上がると思いますが、出会えたところでそのときにカメラを構えているかという問題もあるので、撮れたらラッキーくらいの感じですね。再現性は作れないというのが、正直なところです。
――今作はシリーズ3作目ですね。
沖昌之 ネットやSNSだと1枚の写真ですけど、本の場合は見開いたときに対になる面白さがあり、そこから次のページを開いたときにまた違う展開が広がっていく…という良さがあります。そこをうまく生かしながら作っています。
――SNSなどで猫の写真や動画を投稿する人も多いですが、そういったものも見ますか?
沖昌之 TwitterとかInstagramは僕もよく見るのですが、「こんなことをする猫がいるんだ」と驚かされることもあります。みなさんが撮っている写真でもちろん癒されもしますが、自分の立つ瀬がないなと戦々恐々とすることもあります(笑)。
いいものは苦しみの中から生まれる、「水切りの石みたいに走る」猫を激写
沖昌之 2014年くらいから都内の地域猫の撮影をし始めたのですが、みんな少しずつお歳を召していってのどかに暮らしているので、アグレッシブなシーンに出くわすことが少なくなったんです。なので、自分が勝手知ったる場所を離れ、アウェイで撮影することも増えていきました。
――猫島で撮影されたものもありますよね。
沖昌之 猫がネズミをマイクに見立てているような写真があるんですけど、これはテレビ番組の撮影で初めて行った猫島で撮った一枚です。「ここにはネズミはいない」と島の人たちは言っていたのにあの写真が撮れたので、予想外の出来事でした。
――島での撮影はスムーズに進んだのですか?
沖昌之 「一枚くらいは撮れるだろう」とイキがって思っているときは、だいたい撮れずに落ち込むことになりますね。その猫島での撮影のときも、ちゃんと初心に戻って臨まないと、何も撮れないままで終わってしまうなというのは実感しました。
――難しい部分ですね。
沖昌之 自分の思い込みではなく、その島の猫ちゃんたちがどういう暮らしをしているのかをしっかりと見落とさないようにしないと、絶対に撮れないですね。でも、簡単には撮れないという苦しみの中からのほうが、いいものが生まれるような気がします。
――特に印象に残っている写真は?
沖昌之 いつも撮影させてもらっている河原の猫たちがいるんですけど、ある時、そのうちの1匹が川の浮島から岸に向かってホバークラフトみたいにバババッと走り抜けていたんです。僕は30メートルくらい離れたところでそれを発見して、大慌てでその瞬間を撮った写真があるんですけど、それは強く印象に残っています。「猫って水切りの石みたいに走ることもあるんだ!」って、衝撃を受けましたね。