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廃墟と都市が混在したアート写真、表現される“妙な現実感”に驚きの声
「作り出した世界に命が宿ったかのよう」バックストーリーを想像したコメントの多さに作者も驚き
YULILY予想していたよりも、色んな捉え方をされていて嬉しいです。情報量の多い作品を作るのが好きで、合成作品では一枚に色んなネタやオマージュを詰め込むようにしています。「九龍城っぽい」とか「『AKIRA』や『ブレードランナー』の世界みたい」という感想は意識している点だったので、狙い通りでもあります。
――特に印象に残っているコメントはありますか?
YULILY面白かったのは、バックストーリーの設定を想像したコメントです。「建物の主は宮田さんで、焼き鳥屋の店主が裏で暗躍している」とか「新型爆弾の被弾地にできた闇市が起源で、無計画に高度復興された」とか。自分はバックストーリーは殆ど想像していません(笑)。全体の雰囲気をイメージした後、配置配色のバランスを考えながら作成しているだけなので…。ただ、作品から思いもしない色んなストーリーが飛び出してくるのが、自分が作り出した世界に命が宿ったかのような気持ちになり、不思議で面白かったです。
――廃墟の写真に都市の写真を合成するというのは、どういったきっかけで思いついたのですか?
YULILYもともと廃墟が好きで写真を撮り始めて、徐々に都会も撮るようになり、そこから転じて都会の写真を合成した作品を作り始めました。数年前からいくつか合成作品をInstagramとTwitterに投稿しているのですが、最近似たテイストの作品を作る人が多くなり…。そこで自分にしか作れないものはなんだろうと改めて考え、「都会だけじゃなく廃墟も好き」という特徴を生かせばいいんだと思い制作しました。
――YULILYさんがこのような作品を手掛けるにあたって影響を受けたものは?
YULILY漫画は『AKIRA』、映画は『ブレードランナー』、ゲームだと『fallout』や『Cyberpunk2077』です。サイバーパンクやレトロフューチャーの色んな作品に影響受けています。また、情報量の多さという意味では、子供の頃に大好きだった『ミッケ!』という絵本からかなり影響を受けています。
「廃墟」と「都市」の相反する魅力を表現、リスペクトを込めて作った「2049年の渋谷」
YULILY「廃墟」は寂しいようでどこか暖かさを感じられる点、「都市」は乱雑なようでどこか調和を感じられる点です。どちらも相反するような特徴が混在しているのが魅力的なところだと思います。
――どのくらいの頻度で廃墟に行っているのですか?
YULILY実は殆どの廃墟写真が3〜5年前のもので、最近はあまり行っていません(半年に一回ぐらい)。廃遊園地や廃工場とか、大規模な廃墟が好きなのですが、残念ながら日本にはもう殆ど残されていないので…。
――作品にしてみたい、気になる廃墟は?
YULILYブルガリアにある「共産党ホール」です。廃墟なのに未来感溢れる空間で、憧れの場所です。ただ、今のご時世いつ行けるか分かりませんし、何より遠いです(笑)。
――これまでの作品の中で、一番思い入れのあるものは?
YULILY2018年に合成作品で初めて作った作品です。2049年の渋谷をイメージして作りました。(2049年は『ブレードランナー』へのリスペクト)
――その作品にちなんだエピソードがあれば教えてください。
YULILY初めての合成だったため、写真仲間でもある親友に「こんなの作ってるよ」と途中経過を見せたところ、「違和感がある」と厳しい感想を貰い…。悔しかったので、その後も何回も見て貰って、違和感のないように仕上げていきました。熱中し過ぎると客観的に作品を見られなくなるので、僕にとって人に見せるというのは、作品を作りあげる過程に必要不可欠なんだと気付ける良い機会になりました。その後の合成作品でも、必ずSNSで公開する前にその親友に何回も見て貰ってから投稿するのが恒例になっています。
――YULILYさんにとって、「廃墟」と「都市」が融合するアートワークは、どのような意味合いを持つものなのでしょうか?
YULILY絵やCGと違って、合成作品は元となる物が実際にこの世に存在していなければ作ることができません。その特徴を生かして、妙な現実感と言いますか、「ゲームやアニメに出て来る空想の世界は全くあり得ない未来ではないのかも」という表現をしたいです。