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『ジャポニカ学習帳』かつては昆虫写真にクレームも…百科事典を模したノートが50年愛されるワケ

 時代を超えて普遍的な支持を受ける学習ノート『ジャポニカ学習帳』が今年50周年を迎え、その懐かしさと表紙のインパクトが大人たちの間で話題になっている。一方で、教育現場にパソコンやタブレット端末が普及していくなか、子どもたちの学習方法も時代とともに変化を遂げている。メディアが遷り変わるなか、アナログなノートの役割と存在意義について、1950年代半ばから学習帳を製造するショウワノートに聞いた。

70年代に家にあることがステータスだった百科事典を模したノートとしてスタート

 1950年代半ばから学習帳の生産を開始したショウワノートだが、もともとは便箋や封筒を製造しており、創業地の富山から東京へ進出するとともに学習帳事業に参入。すでに関東では20社ほどのメーカーがひしめきあう市場において、最後発で知名度もないなかでの挑戦だった。

 当時の学習帳は、子どもたちの顔を絵にしてそれを表紙にするのが一般的だった。そこで同社が、他社との差別化のために仕掛けたのが、小学館発行の『大日本百科事典ジャポニカ』とのコラボレーションだ。当時、家に置いてあることがステータスでもあった百科事典を模した、金箔押しのロゴやエンボス加工の紙を装丁に施し、スタート当初の表紙は百科事典に使われている写真を流用。これが、その後50年に渡って愛されることになる『ジャポニカ学習帳』のスタートだった。

 ショウワノートで開発部に所属する小原崇氏は発売当時についてこう語る。
「百科事典の見た目、手触り、風合いをノートに反映した作りで、その雰囲気を打ち出していました。その後、他社からも似たようなノートが出てきたことから、お借りた百科事典の写真ではなく、表紙用のオリジナル写真を昆虫植物生態写真家の山口進先生に撮り下ろしていただくようになったと聞いています」

 昆虫や植物の生態に詳しい山口氏によって撮り下ろされた写真は、「昆虫や植物の構造が子どもたちにもわかってもらえるように、正面から撮り下ろしています。花の構造や植物のことをしっかりと伝える写真はなかなかないと思います」(小原崇氏)とSNSが普及した現代でも一線を画する。

消費者のクレームや教師からの相談を受け、売れ筋の品種から外された昆虫表紙

 そうして、1978年に「世界特写シリーズ」がスタート。『ジャポニカ学習帳』というと、80〜90年代にテレビCMからヒットした昆虫や植物の表紙のイメージが強い。とくに昆虫シリーズはそのインパクトから、ノートを象徴する表紙にもなっていた。しかし、昆虫は多くの男子には好まれるものの、苦手な人もいる。決して万人向けではなく、教師から相談を受けたこともあるという。

「学校訪問をして関係者から情報収集をする際に、先生から悩みとして相談がありました。新学期の最初に全員にノートを配るときに、その品種が昆虫の表紙しかないと苦手な子どもがいたときに困るので、無難な柄のほうがいいと。10〜20年前くらいから、当時はシェアを伸ばしている時期でしたから、伸びれば伸びるほどそういう悩みを聞いたようです」(小原氏)

 実際、当時は消費者からも昆虫の写真が気持ち悪いという声も一部寄せられ、売れ筋の品種から昆虫表紙は外されるようになっていったという。そんな昆虫の表紙は2012年に終了となり、現在は植物の花のシリーズになっている。しかし、50周年記念として今年、「昆虫シリーズ」が復刻することになった。

「昆虫表紙写真を終了した数年後、メディアのニュースからSNSなどでも話題になり、改めて消費者の心に残る商品であったことを認識していました。そうしたなか昨年は、昆虫が激減してしまう可能性があることが学会で発表され、環境面で世界的な話題になりました。もともと『ジャポニカ学習帳』を通して自然の生態系やその大切さ、魅力を伝えたいという思いがあったので、50周年というタイミングで、原点回帰の意味も込めて、もう一度『ジャポニカ学習帳』に興味をもってほしい、昆虫の魅力を見つけてほしいという思いを込めて企画しました」(小原氏)

 そんな「ジャポニカ学習帳」が発売当初から昆虫や植物を表紙にしてきたのには、ショウワノートから子どもたちへ伝えたいメッセージがあると吉橋氏は語る。

「表紙の写真を通して、自然の大切さを教えたいというのが学習帳のポイントです。今は世の中にある自然のものだけど、守っていかなければ、皆が大人になったときにはなくなってしまう。カタログには、自然を愛する心を育んでほしいと昔から記しています。ノート自体にはそのことは何も書かれていませんが、使われている写真を見て理解してもらえたら成功だと思って作っています」(吉橋氏)

 そんな強い思いを込めるこだわりの表紙写真は、地域ごとに撮影が行われているが、できるだけ原種に近い植物を探しているという。そのなかには、一般的な図鑑には載っていない貴重な花を撮影できたこともある。

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