ORICON NEWS
「女は家事に専念して」義母のセリフに募るモヤモヤ 話題の漫画から学ぶ“ふつうの母親”とは
「子育ても仕事も楽しみたい」これっていけないこと?
物語はフィクションだが、出産し、義父母と敷地内同居を始めた主人公・あかりの日常には、「自分たちの領域に踏み込んでこられるのは嫌。だけど、義母にはまったく悪気がなく、敷地内同居という関係上ハッキリと言えない」、「自分は働きたいのに、義母は家族を支えるために専業主婦でよかったいう自分の価値観を押しつけてくる」など、多くのママたちが感じたことのある義母へのモヤモヤの元となるリアルなエピソードが続く。
著者の龍たまこさんは、世代間の考え方の違いやそれぞれの社会的役割、生きづらさにスポットをあてることで、「家族にはそれぞれの考えを尊重できる関係性であってほしい」と思いを託す。
さらに作品の根底には、「母親らしさは1人ひとり違うもの。普通も、時代や環境によって曖昧に変化するのだから、自分なりのやり方でいい」という著者の考えがある。「お母さんが自分の人生を楽しんでいる姿こそが、次世代の希望になる」。そんな著者の願いに裏打ちされたストーリーに、心が軽くなる作品だ。
“お手伝い感覚”の夫に「育児は私だけ…」、母親の役割って何?
出産後のもっとも辛かったエピソードをそう語るのは、人気漫画家・ゆむいさんの『親になったの私だけ!?』(KADOKAWA刊)だ。リアルな夫婦の実話が、仕事と子育てに奮闘する多くのママたちから共感を呼んでいる。
原作は、2児の母親で社会福祉士の耳たぶ吸ってたも〜れさん(以下、耳たぶさん)。ゆむいさんとは中学の同級生で、子育てや夫婦の問題など、ゆむいさんが自分の中でモヤモヤしながらも言葉にならなかったことを、耳たぶさんがハッキリ言語化してくれたことが、漫画化のきっかけになったという。
とくに、ゆむいさんのモヤモヤを解消してくれたのが、耳たぶさんの発した「男女の役割の社会通念」という言葉だった。
「夫は外で働き、妻は家庭を支える」という現代ではほとんど成立しない夫婦のあり方が、今なお、社会の中に空気のように漂い、母親自身も知らず知らずのうちにそこに縛られて苦しんでいるのではないか。そんな思いを発端に、物語は「僕はずいぶん“手伝って”いるよ」と言ってしまう気遣いが的外れな夫と、それにモヤモヤする妻が、やがて家事も育児も分担・協力し合う関係になるまでを描く。
ゆむいさんが何より大切にしたのは、「夫婦両者が“主体的に”子育てに関わる」というテーマだった。そして、そのために必要なのは夫婦間の話し合いと説く。もちろん、それがなかなかできないのが現実の難しさだろう。作品でも、ワンオペ育児や産後クライシスで“私だけ”というストレスが募る妻は怒りが爆発し、夫と激しいバトルが繰り返されるシーンも満載だ。
夫婦が家族として分かり合い、助け合えるようになるにはどうしたらいいのか。経験者が紡ぐエピソードには、そのヒントが隠されている。