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野木亜紀子氏が持つ“原作を残す”センス 小栗旬×星野源が肌で感じた魅力とは

 好評のまま11話で完結を迎えた『MIU404』や『空飛ぶ広報室(有川浩原作)』『逃げるは恥だが役に立つ(海野つなみ原作)』『アンナチュラル』『獣になれない私たち』など、多くのヒット作を手掛ける脚本家・野木亜紀子氏。その野木氏が脚本を担当し、小栗旬(37)と星野源(39)が映画初共演する『罪の声』が30日に公開を迎える。メガホンをとった土井裕泰監督も交え、野木氏の脚本の魅力、脚本を作る上での葛藤に迫った。

“わかりやすさ”への葛藤も「それでおもしろいのかな?」

 『罪の声』はフィクションでありながら、塩田武士氏の綿密な取材と着想が織り混ぜられ、事件の真相と犯人像が“本当にそうだったのではないか”と思わせるリアリティーに溢れた物語で話題に。小栗が昭和の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、残された証拠を元に取材を重ねる大日新聞の新聞記者・阿久津英士を、星野が亡くなった父から受け継いだ京都のテーラーを営み、物語の発端となる子どもの声の脅迫テープが自分の声だと気がつく曽根俊也を演じている。
 本作の脚本について野木氏は「ちゃぶ台をひっくり返したくなるような気持ちを抱えていました」と大変な作業だったことを振り返る。「実際にあったことを捻じ曲げるわけにはいかない。どこまでが明らかになっている事実で、どこからがフィクションか、それを検証するところから始めないといけなかったので、膨大な作業量でした」と話す。

 さらに「2人の主人公のほかに、『被害にあったもう2人の子ども』という影の主人公もいる。そして、その周りの人の人生や過去回想もあり、それを2時間半に収めなければいけなかった」とどこを映像化するかの選別に苦労したという。それには、原作ものならではの難しさがあるようで「原作のテーマや根幹など、守らなければいけないところがあります。オリジナルならば、映像媒体にあうものを最初から作ることができるし、映像だと難しいから『やめよう』ということもできる。しかし、原作があると『やめた』とは簡単に言えない。どう成立させるか、針穴に糸を通すように作っていくしかない」と原作を尊重しながら完成させる難しさを語った。
 前述したドラマだけでなく『図書館戦争』シリーズ(有川浩原作)、『俺物語!!(アルコ・河原和音原作)』『アイアムアヒーロー(花沢健吾原作)』など映画作品も担当している野木氏。映画とドラマの違いについて聞くと「ドラマは、一話一話をどのように膨らませていくかの世界になります。全体のテーマがありつつ、一話ごとにテーマを持って、膨らませていく。逆に映画は、どう削ぎ落してテーマを浮かび上がらせていくかです」と説明する。
 また、映画館で上映中にスマートフォンを使用する人が増えているニュースなども見られ、映画やドラマ作品に“わかりやすさ”が求めらていることもしばしば聞かれるが、野木氏は「プライムタイムのテレビドラマは全年齢に向けられてつくられているものなので、そこでの戦いはあります。とはいえ、なんでも単純化してわかりやすくすることが本当におもしろいのか、本当にそれでいいのか、常にせめぎあいです」と葛藤する部分もあるという。『空飛ぶ広報室』や『逃げ恥』でタッグを組んできた土井監督は「入口はわかりやすいけど、出口では深く複雑なテーマを受け取れるような仕組みを作ることが大切になってくる」と制作側ならではの視点も語ってくれた。

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