ORICON NEWS
“秋の絶景カクテル”と“廃墟化した渋谷” 「幻想的な風景画」で伝えたい本当の想い
「演出を通して風景に出会うことの面白さを伝えたい」 カクテル画に込められた作者の想い
「私も普段、空を見ようとすることはなかなかありませんが、地下から地上に出た電車の窓越しに突然現れる景色など、ふとしたときの風景に惹かれることがあります。何かしらの演出を通して風景に出会うことの面白さを伝えたくて、そのアイデアの一つとしてグラスの中に映る景色を描こうと思いました」
banishmentさんが描いているカクテル画には、すべてのイラストにおいて風景のモデルがある。「実際に訪れた場所で感じたことを元に描いていくので、その場所の空気感などが表現できればいいなと思います。実は思い入れのある場所だったり個人的に印象的な景色だったりするので、少しノスタルジックな印象になるのかもしれません」
卓越した画力と鋭い観察眼を持つbanishmentさんだが、風景をきれいに描くためにこだわりを持って作品作りに取り組んでいるという。「例えば『秋のカクテル』では、夕暮れの紅葉の色を見せるため、対比的に暗い印象で工場地帯を描いています。この工場などの影の要素が大好きで、かなりしっかりと描いています。影があることで光が眩しく見えるというこだわりは、自分のどの作品にもある要素かもしれません」
今後の展望については、「今回は国内外の方々に作品を見ていただけて、うれしい気持ちでいっぱいです。これからもSNSで多く作品を発表できればと考えています。ぜひ冬、春のカクテルも楽しみにしていただければ幸いです」と語ってくれた。
“絶望”ではなく“希望”を美しく描きたい 廃墟と化した東京の街並みに託された真意
「どの場所を描くかを決めたら、まず撮ってきた写真を参考に、一日で『現実』の風景を描き起こします。そこから建物を壊したり、緑を生やしたり、『季節』や『時間帯』といった時間軸を変えたりしていきます」
東京幻想さんが作品をSNSで発信していく上で、まず心がけていることは「インパクト」であるという。「どんどんと更新されていくタイムラインの中で、一瞬で人の目に留まる必要があるので…。あと、作風的に『退廃感』や『孤独感』のようなものはありますが、なるべく不快にならないように気をつけているつもりです。できれば美しくありたいし、絶望よりは希望を感じてほしいです」
最初に描いた作品は「渋谷109」だった。これがなかったら東京幻想はなかったとさえ言う。「20代のときにアンコールワット遺跡群で見た『タブローム寺院』のように、渋谷109がこんな風に巨木の根っこで覆われていたらかっこいいと思っていました。一番のお気に入り作品は『渋谷のモヤイ像』です。タイのアユタヤにある石造からイメージを拝借しました。最近加筆をして、さらにキュートになったと思います」
最後に、東京幻想さんが好きな街について尋ねたところ、「『横浜みなとみらい付近』ですね。夜の雰囲気が最高です。小学生から大人になるまでずっと横浜に住んでいて、『東京』はちょっと出かける場所というイメージでした。それが東京を主題にした作品を描く上では、ちょうどいい距離感だったんです」と答えてくれた。