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東京から“今の日本”を発信、和楽器バンドが巻き起こす音楽の渦

和楽器バンド

 日本人なら誰もが懐かしくなるような、背筋が伸びるような厳かな和楽器の音色と、前衛的かつ大胆なロックサウンドを融合させたミクスチャーグループ、和楽器バンド。2014年のデビュー以来、着実にその名を世に広げ、2018年には『輝く!日本レコード大賞 アルバム賞』を受賞。今年8月には、コロナの影響下で横浜アリーナにて有観客ライブを開催し、大成功を収めたことも話題となった。現在の日本、東京だからこそ出来上がった最新アルバム『TOKYO SINGING』、そしてバンドの在り様を、鈴華ゆう子(ボーカル)、いぶくろ聖志(箏)、神永大輔(尺八)、町屋(ギター&ボーカル)に聞いた。

「コロナ禍じゃなければまったく違う内容になっていた」、今の“日本らしさ”に焦点

鈴華ゆう子(ボーカル)

鈴華ゆう子(ボーカル)

 「コロナ禍の影響で2月末に決まっていた両国国技館でのライブが中止になって、そのまま自粛期間に入ってしまったんです。でも、アルバムを作ることは決まっていたので、リモート会議を中心に話を進めていきました。みんなで曲を作って会議して、というのを繰り返して、6月からレコーディングして完成したアルバムなんです」(ギター&ボーカル/町屋)

 「デビューからこれまで、止まることなく走り続けてきたので、急に時間ができたことは私たちにとってプラスでもありました。『せっかくだから曲を書こう!』って、みんながゼロから曲を作る時間を取れたし、最初から収録することが決まっていた「Ignite」以外は全部、自粛中に書き下ろした曲なんです。世界中が同じ状況になった今、共感できるであろう“今できること”を表現者として楽曲に込めた、すごくコンセプチュアルな作品になりました。これも、それぞれがメンバーに会わずに、“和楽器バンドとは何か?”と向き合えたからだとも思います」(ボーカル/鈴華ゆう子)

 「自粛を経て、久しぶりにメンバーとレコーディングして、やっぱりすごい人たちが集まってるんだなと、あらためて思いました。コロナ禍の中でそれぞれが自分のやるべきことを消化していて、確実に成長してるのを感じたんです。バンドに戻って、このアルバムを作れたというのが嬉しかったですね」(尺八/神永大輔)

いぶくろ聖志(箏)

いぶくろ聖志(箏)

 先行配信した、米ロックバンド・EVANESCENCEのAmy Leeとのコラボ曲「Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE」、NHK『みんなのうた』のために書き下ろした「月下美人」なども含め、“東京”から全世界へ発信するメッセージを込めたという今作。その全14曲からは、美しさを保ったまま世の中の平穏を待つ東京、ひいては日本のしとやかさと気丈さを感じることができる。

 「いろんな文化が入り混じり、今の“日本らしさ”ができていると思っていて。それを音楽で表現することこそが、和楽器バンドというジャンルだと思うんです。今回はその、いろんな文化が入り混じった東京から発信する、“日本らしさ”に焦点を絞りました。浅草の粋な感じや、情報の最先端である原宿っぽさとか、いろんな“東京らしさ”が楽曲から見えてくると思います。六本木や新宿歌舞伎町、いろんな場所を感じながら聴いてもらえたら嬉しいです」(鈴華)

 「これがコロナ禍じゃなければ、まったく違う内容になっていたと思います。そのくらい、今の日本への想いが詰まってる。1曲目の「Calling」という曲は、すべての和楽器の音を詰め込んで、アルバム全体を物語っています。そこから派手にスタートする世界観を楽しんでほしいですね」(町屋)

有観客アリーナライブも成功、師範級のメンバーたちの絶対的な信頼感

神永大輔(尺八)

神永大輔(尺八)

 詩吟で日本一の冠を持つボーカルの鈴華ゆう子をはじめ、師範級のメンバーが揃った和楽器バンドの強みは、まさに音の自由度の無限性にある。強いビート×節調(コブシ)、エレキ×和楽器など、どれだけ掛け算しても確実に音楽として成り立つ技術と感覚が、そこにはあるのだ。そして、その音への絶対的な信頼感は、メンバーの関係性にも生かされている。

 「メンバー同士、変に寄りかかったりしないんですよね。それぞれが、各分野のプロフェッショナルとしての“座”を持っているぶん、自分のやるべきこと、バンドでやるべきことに責任を持ちながら楽しめているんです」(箏/いぶくろ聖志)

 「うちのメンバーは、いざというときにエネルギーを高めて放つ…という感じではないんです。淡々と、目の前にやることがあるからやる、みたいな(笑)。みんながそんな感じです。どれだけ忙しい時期でも、余裕がある時期でも、ペースは変わらないまま。きっとそれは、何があってもお互いを信じて乗り越えられるとわかっているからでしょう。心の中では、実は慌ててたりするのかもしれないけど(笑)、どう見ても淡々としている人たちなんですよね」(鈴華ゆう子)

町屋(ギター&ボーカル)

町屋(ギター&ボーカル)

 今年の8月には、コロナの影響下でありながら、観客を入れた環境での横浜アリーナライブを敢行。感染予防に対する万全な体制をとった上で、クラスターを発生させることなく、ステージも大成功に収めた。決めたことを実践するのは当たり前で、「しかも完璧に」という成果を上げるところが、彼らがデビュー当時から大物と言われる所以だろう。

 「アリーナでやると決まったとき、8人の中に一人でも『やりたくない』と言う人がいたら、ライブは決行しませんでした。スタッフさんを含めた和楽器バンドチームで、『やると決めたなら、きちんとやり遂げよう』と全員が思ったんです」(鈴華)

 「一人ひとりが、パズルのピースであることを自覚しているんです。自分の形を保っていれば、全員がちゃんとハマることがわかっているから、大きな1枚を作るためにまず自分のことを処理する。誰かが辛そうだったり、欠けてるときは、横の人がちょっとだけ手を差し伸べて形を合わせればいい。変に相手の形を変えようとしないから、いつもキレイに一つの作品ができるんだと思うんですよね」(いぶくろ)

 「今回のアルバムにある「Ignite」で、まさにそういう我々の生き方を歌っています。<そう、強かな意志を持った ひとつの流れる渦だ>という歌詞にあるように、スタッフを含めた和楽器バンドのチームは、大きな一つの流れみたいなものなんです」(町屋)

海外でも高い評価、ライブでしか味わえない魅力も

 そうして出来上がった音楽は、触れた人々をどんどん巻き込んでいく。そして今、その渦は加速度的に流れを早め、日本にとどまらず海外の人々をも魅了している。

 「今のエンタメ業界に国境はないというか、SNSやサブスクなどのおかげで、手にできるものの領域はどんどん広がっている。日本に向けて、海外に向けて…という概念を取り払う時代になっていると思います。今後はさらにその隔たりを外していって、世界中の一人ひとりに届けていく気持ちで音楽を作っていきたいですね」(鈴華)

 「海外の人たちは、そもそも和楽器を知らない方が多いので、日本の伝統楽器というよりも、純粋に音楽ジャンルのひとつとして聴いてくれているんです。むしろ日本の人のほうが、和楽器という前提、固まったイメージがあるのかなと。僕たち自身、その前提を取っ払って、いい音楽を届けるという意識で世界に広げていきたいなと思ってます」(神永)

 「ライブに来ていただくことで、見えることもすごく大きいと思うんですよね。うちの尺八は、日本で一番アグレッシブな尺八ですから(笑)。ライブでしか味わえないエンタテインメントを、ぜひ楽しみにきてください」(いぶくろ)

 雅なサウンドが弾けるロックが、どれだけの快感を人に与えるか。そんな和楽器バンドの音楽は、全世界にとっての新たなカルチャーとなるだろう。

(文:川上きくえ)

アルバム『TOKYO SINGING』

★『和楽器バンドJAPAN TOUR 2020 TOKYO SINGING』開催
10月24日(土)東京・ガーデンシアターよりスタート

★『和楽器バンド Japan Tour 2020 TOKYO SINGING』東京公演を有料ライブ配信
□配信日時:10月25日(日)16:00〜
※アーカイブ期間 10月27日(火)18:00まで

<配信プラットフォーム>
【e+Streaming+】https://eplus.jp/wagakkiband-st1025/
【LINE LIVE-VIEWING】https://ticket.line.me/sp/wagakkiband_online
【PIA LIVE STREAM】https://w.pia.jp/t/wagakkiband-pls/
【ZAIKO】https://wagakkiband.zaiko.io/_item/331434

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