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「6.5世代の苦悩」を昇華させたパンサー 危機感がカウンターになり確立した新たな“トリオの形”

  • 従来のトリオ枠に収まらないパンサーの強みとは(C)ORICON NewS inc.

    従来のトリオ枠に収まらないパンサーの強みとは(C)ORICON NewS inc.

 活動12年目を迎えるトリオ芸人・パンサー。若手というには無理がある「ザ・中堅中の中堅」的な存在で、第7世代の波に乗れていないと思いきや、なぜかここにきてバラエティ番組などの活躍が目立っている。トリオといえば、コント赤信号やダチョウ倶楽部、B21スペシャルにはじまり、ネプチューン、ロバート、東京03、第7世代でいうと四千頭身やハナコへと連なる“系譜”があるが、そのどこにも当てはまらない、新たなトリオの形を確立したパンサーを分析する。

第7世代に入れなかった“第6.5世代”…ブレイクとジレンマの2010年代

 2008年にトリオ結成のパンサー。ポジションとしては、同期にハリセンボンやチョコレートプラネット、しずる、ジョイマンらがおり、少し上に南海キャンディーズ、千鳥、オードリーなどの第6世代、下には今勢いのある第7世代と、いわば“第6.5世代”ともいうべき位置にいる。

 2010年代にはアイドル的な人気を得て、一番若いツッコミ担当の向井(34歳)はイケメン芸人の筆頭株として、『よしもと男前ブサイクランキング2015』にて男前ランキング1位を獲得(4年ぶりに復活した昨年の同ランキングでは43位に転落…)。菅(38歳)はクールな印象でネタ作りとボケを担当し、最年長の尾形(43歳)はボケでもツッコミでもない「微笑み担当」。

 つまりパンサーは、熱血漢ながらいつも空回りする…というボケの菅×ツッコミの向井×オチ?の尾形、というイメージが定着していた時期があり、2010年代後半はブレイク感も薄まり、冠番組を持つなどの目立ったところはなく安定期(停滞期?)を迎えていた。

 トリオでというよりは、個々の活動が多くなっており、尾形は『ロンドンハーツ』のドッキリ企画や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)にひっぱりだこ。向井も高学歴(明治大学政経学部卒)を活かしたクイズ番組への出演やサブMCに近い役割をもこなしてきている。

純お笑い番組の復活で“トリオ芸”&菅の本領発揮

  • 『有吉の壁』で披露した「パラパラおじさん」も話題の菅良太郎 (C)ORICON NewS inc.

    『有吉の壁』で披露した「パラパラおじさん」も話題の菅良太郎 (C)ORICON NewS inc.

 第7世代の勢いが爆発した昨年。それがいい刺激や反動となり、パンサーは徐々にトリオとしての存在感をテレビ番組で押し出し始める。今年5月19日放送『ロンドンハーツ』では、向井と菅が仕掛け人役となり、尾形に「もしパンサーが4人組になってコヨーテに改名したら」というドッキリ企画を敢行。すると、パンサーの将来と第7世代攻勢に不安を感じていた尾形は、まさかの4人組案に乗り気に。

 しかし一方では、「菅はモッくん(仮想の4人目のパンサーメンバー)のほうが好き」と嫉妬してみたり、「向井の前が一番緊張するが、イイ関係」と向井を認める発言をするなど、コンビ愛にあふれる素の姿を見せ、SNSでは「神回」、「パンサー尾形素直な人だなー。前より好きになっている」などと称賛された。結果的にこの企画では、尾形へのドッキリというより、パンサーのコンビ愛が再確認できた。

 また、今まで「おしゃれ」「カッコいい」「クール」というビジュアルイメージが先行していた向井と菅も、ここにきて“変化”を見せる。きっかけは『有吉の壁』。この番組は、「若手お笑い芸人が有吉弘行が用意した『お笑いの壁』に挑戦し、壁を越えて成長する」というのがコンセプトだが、パンサーの3人も先輩枠として若手に交じって出演。

 日光江戸村で収録した際、尾形がいつものように、川に入って屋形船を泳ぎながら押す…というボケ?を披露すると(有吉判定の×はお約束)、菅と向井は池のコイのように水面でエサをパクパク食べるという、かつてのクールなイメージを覆す体を張った芸を見せる(有吉判定は〇)。

 特に菅は、「パラパラおじさんのひと言」なる動画を同番組の公式チャンネルで公開。仏頂面でパラパラを踊ったのち、「(お菓子の)ルマンド、食べるときパラパラこぼれるけど」的なパラパラにまつわるひと言を連発し、一部で「ジワる」と評判に。その他、少女漫画好きを活かして、『王様のブランチ』の漫画コーナーにピンで登場することも多いなど、独自のキャラを露出し始めている。

コロナ禍の“ひな壇リストラ”の危機も回避する汎用性の高さ

  • ドッキリにかけられることも多い「微笑み担当」尾形貴弘 (C)ORICON NewS inc.

    ドッキリにかけられることも多い「微笑み担当」尾形貴弘 (C)ORICON NewS inc.

 こうしてみると、このパンサーのプチ再ブレイクは、知的でルックスもよい向井・菅VS頼りにならない先輩・尾形といったこれまでの構図が、尾形の再評価と向井・菅の体を張ることも厭わない芸風へと変化したことにある。

 そしてこうした姿勢は他の芸人も刺激したのか、6月11日放送『アメトーーク!』では、『有吉の壁』を見た品川庄司・品川祐に「今は向井と尾形がテレビに出ているけど、“パンサーには菅っていうスゴイやつがいるんだぞ”ってプレゼンできている!」と絶賛され、向井も「ありがとうございます!」と目を潤ませコメントする一幕もあった。

 お笑い界のトリオというと、先述したようにコント赤信号、B21スペシャル、ダチョウ倶楽部からネプチューン、ロバートへと連なる系譜があった。メンバーそれぞれが個性を発揮しつつ自分の立ち位置を見つけ、スターも輩出してきた。

 パンサーもその道をたどりつつも、今回のコロナ禍において、12年の間に培ってきた経験やくすぶりを“6.5世代”の意地として昇華させた。尾形はドッキリ企画で、向井・菅はリモート企画などで、図らずもそれぞれの“パンサー愛”が披露されることとなり、視聴者からの好感をも勝ち得た。

 最近ではトリオとしても仕事が増え、『デカ盛りハンター』(テレビ東京系)では三四郎、カミナリとともにMCを務め、BS11の『虹のコンキスタドールが本気出しました!?』も2クール目がスタート。

 今のパンサーは平場でもネタでも対応できる汎用性の高さを見せることで、制作側からも重宝される好循環に入っている。この12年で定着したそれぞれの役割があればこそ、応用も効いて新鮮な魅力となる。今後の3人が同じ勢いでスポットライトを浴びることは難しいかもしれない。しかし現状のパンサーは各自が切磋琢磨しながら互いに認め合うという、最もベストな形を見せている“旬”のお笑いトリオといってもいいのではないだろうか。

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