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「映画ポスター」はときに作品を超える芸術に…巨匠たち支えたデザイナーが語る“1枚絵”へのこだわりとギャラ事情

 映画の魅力を1枚絵で表現した「映画ポスター」は、映画興行を左右する重要な宣伝メディアでありながら、その枠にとどまらず、自立したグラフィック作品として名作も生まれている。それはスマホ全盛のデジタル時代においても健在であり、変わらず映画の“顔”となっている。そんななか、かつてジャン=リュック・ゴダール、アンドレイ・タルコフスキー、鈴木清順、市川崑といった世界の巨匠たちのポスターデザインを手がけ、日本でのミニシアターブームをけん引。現在も第一人者として活躍する小笠原正勝さんに、映画ポスターの役割について聞いた。

「映画を解体して、心動かされた要素を組み立てる」デザインができるまで

――映画ポスターデザイナーになったきっかけを教えてください。

小笠原正勝さんもともと映画が大好きだったのですが、武蔵野美術短期大学に入り、デザインを勉強しながら映画の仕事ができたらと思って、デザイン制作会社の東宝アートビューロー(現・TOHOマーケティング)に入社しました。趣味がそのまま仕事につながっていったんです。僕らの年代は、ポスターや雑誌を観て、映画を知りました。その映画の醍醐味やおもしろさ、すばらしさをデザインにして伝えたい。それがこの仕事をはじめた原点です。

――その後、76年には独立され、これまでに600作品を超える邦洋の名作、大作の映画ポスターを手がけてこられました。代表作として『気狂いピエロ』『ブリキの太鼓』などが知られています。そのクリエイティブのポリシーとされていたことは?

小笠原さんその映画の紹介や内容を説明するよりも、心を動かされた要素を自分なりに解釈して形にしていくことが多いです。デザインとは、あらゆる要素を組み立てて形にするものですから、一度映画を解体して、ポイントを自分で選んで形にするんです。大事なことは、時間の流れで成り立っている映画を、その作品を象徴するかたちでどう静止した紙の上に表現し、提示するか。教科書的なものはありませんでしたから、失敗しながら経験を積み重ねて学んでいくことが多かったです。

――紙の上の表現で「この映画を観たい」と思わせるポイントとは?

小笠原さん作品の解釈は、観る人それぞれによって違いますから、その映画の核となる部分を見つけ出すことが肝要です。僕の場合は、自分にとってのおもしろかったことを表現するということが第一にあります。最近は、データを集めてコンセプトを出し合い、合議制で作っていくことが多いのですが、データが中心になっているから似たようなデザインが多くなっている気がします。昔は、いい悪いは別にして、個人の裁量にまかせられる部分が多かったので、できあがるものも個性的になりますよね。

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