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「映画ポスター」はときに作品を超える芸術に…巨匠たち支えたデザイナーが語る“1枚絵”へのこだわりとギャラ事情

「合議制で作るから、似たようなデザインが多くなる」スタッフとぶつかることも…

――プロデューサーや宣伝スタッフとのぶつかりあいもあるのですか?
小笠原さんありますよ(笑)。僕が選んだ映画の言葉と、合議でデータから集めて作った方向性の相違を巡って、折り合いが難しいこともありますから。興行的な宣伝要素を入れてほしいという気持ちもわかりますが、僕は、ここがおもしろい、美しい、ダイナミック、感情を動かす、といったところから掘り下げていくので、データから作り上げたものとずれが生じることもあります。そんなにしょっちゅうではないですけど。

――そういうぶつかりあいは、個が強かった昔のほうが多かったのでしょうか。

小笠原さんむしろ、昔よりもいまのほうが多いです。昔はそれぞれ個があっても、映画を間に挟んで話をしていくと、どこかでお互いに共鳴していって、ベースのところでは差がないことがわかる。それをどうデザイン化していくかで、亀裂が入ったりすることはなかった。できあがってから、「こうなったのね」で受け入れられることが多い(笑)。いまは宣伝方針と自分のデザインの方向性が違うと、折り合うのに時間がかかることもあります。

データで画一化されたデザインは“血液の流れ”が感じられない

――カッコいい映画ポスターは、ときに映画の人気を超えることもあります。商業性と芸術性のバランスについてはどうお考えですか?
小笠原さんそれは当然、両方含まれますが、そのバランスを意識して取り組んでいるわけではありません。映画が何を描こうとしているか、それをどう言葉、絵、色で表現するかで、全体の構成を考えます。アートの部分は、デザインの色や形状、文字組みやレイアウトでデザインができてくる。もっていく方向性は、映画のカラーや性質になり、そこに商業性も含まれます。結果的にポスターだけが映画を無視して独り歩きしてしまってはよくないんですけど、かといって映画の顔だけを説明するのは、デザインのオリジナリティがなくなる。そのあたりのバランスはよく考えますけどね。

――小笠原さんは、デジタルの時代とそれ以前のアナログの時代の両方で仕事をされてきています。時代によるクリエイティブの変化はありますか?

小笠原さんテクノロジーの進化は、デザインの方法も作業プロセスも変えました。いまはデータ上で画一化され、クリアで美しい一方、デザインと映画のはざまに横たわる“動的な血液の流れ”のようなものが感じられなくなっていると感じています。ただ、作業の分業化による効率や、すぐにデザインを見ることができるメリットなどもあり、一長一短はあります。そんななかで僕は、できるだけデジタル以前のやり方をしています。ツールは変わってもデザインするのは人なので、デザイナーの根本の仕事は変わらない。

――ポスターも紙だけでなく、スマホやデジタルサイネージなどメディアや観られ方も変わってきています。

小笠原さんもともとポスターは街角に貼られて、室内よりも屋外で視覚に動的に働きかけてくるものとしてありました。僕はその紙にすごくこだわっています。デジタルを否定するのではありませんが、紙をひとつの“言葉”として捉えているんです。マスメディアのなかで減ってきていますけど、どのように存続させていくかということはよく考えています。

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