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“YouTuber和尚”の「スマホで聴ける説法」が話題、波乱の人生から新型コロナまで語る
お釈迦様のスルースキルに学ぶべし? SNS誹謗中傷への対応の仕方
大愚和尚 ペルソナを限定せずに、誰でも何か一つは引っ掛かり、悩みの解決に繋がるような内容を心掛けました。
――確かに、誰もが一度は経験したことのある悩みが多いです。たとえば、『「悪口を言う人」から逃げずとも、「悪口」は、いずれ過ぎ去る』という章もあって。現在ではSNS等での誹謗中傷が問題になっていますが、こうしたことにも応用できそうです。
大愚和尚 お釈迦さまの言葉に、誹謗中傷も、褒められることも含めて、賢者はそれに心を動かされることがない、というものがあります。動かされない確固たる自分を保てれば、それが“悪口”からのバリアになるんです。誰かが悪口を言ったときに、お釈迦様はそれをずっと聞いていて、「あなたの言いたいことはそれだけですか? 私はそれを受け取らない」と言った。受け取ってもらえない相手は持ち帰るしかないので、悪口はその人の中で腐っていく。だから、結果的に悪口を言った人間は、自分で自分を滅ぼしていくことになるんです。
――受け取らない、というのは斬新です。ネットで言うスルースキルに通じるのかも。
大愚和尚 受け取るか受け取らないかは、自分で決める。すぐに実行できなくても、そうすればいいということがわかるだけでも、希望につながります。このように、悩みや困ったことに対する根本的かつ具体的な処方箋が、仏教には詰まっているんです。
新型コロナウィルスに惑う人々へ、「同時にあふれる欲、怒り、愚かさを認識すること」
大愚和尚 お伝えしたいのは、正しく恐れる、ということです。歴史を見てもわかりますが、伝染病には同時に発生する病気があります。それは、仏教で言う“三毒”、“貪・瞋・癡(とん・じん・ち)”=欲、怒り、愚かさ、というもの。マスクの転売が問題になりましたが、この機会に人々の弱みにつけ込んで儲けてやろうという欲深い人がたくさんいるわけです。“瞋”は、自分だけは助かりたいという思いから来る怒り。普段から自分が持ってる怒りが爆発し、政府や中国を責めたり、世界でも差別が広がりつつある。そして “癡”は、デマに踊らされる愚かさ。情報源を確認せずに買い占めに走り、本当に必要な人に物が届かなくなるということが起こっています。
――“貪・瞋・癡”、その通りかもしれません。
大愚和尚 欲と怒りと愚かさ、これが同時に起きていることを認識しないと、さらに混乱していくことになります。気分も景気も落ち込み、人の免疫力も下がるんです。こういうときこそ、冷静にみんなで解決するんだという気持ちで、世界の人々と協力するべきでしょう。強力な世界平和のきっかけになると思います。自分にできることを考えて、まずは気持ちを前向きに保つべきですね。
――最後になりますが、和尚の教えが詰まった本書で、もっとも伝えたいことは?
大愚和尚 “苦しみは手放せる”ということです。たとえば、“諸行無常”という言葉がありますね。これは、今ある幸せはいつか崩れ去る…という悲しい響きもありますが、それと同時に、とても大きな可能性を秘めた言葉なんです。苦しみの渦中にあっても、“諸行無常”であるがゆえに、その苦しみもいつかはなくなっていく。じつはネガティブな言葉ではなく、とてもポジティブな言葉なんです。どんな苦しみであれ、それはあなたの心の中で起きていること。ならば、コントロールできる可能性がある。もし自分でできないなら、仏の知恵を借りればいいんです。そのための参考書のようなものが、この本だと思っていただけたら嬉しいですね。
(文:川上きくえ)
著書『苦しみの手放し方』ダイヤモンド社刊
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