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東京スカパラダイスオーケストラが30年“止まらない”理由「俺たちはもっとすごいことができると常に信じている」
若い世代との共演で常に刺激を
「ここ最近は自分たちより若い世代のミュージシャンから多大なる影響を受けています。音楽フェスで10-FEETやマキシマム ザ ホルモンなんかを観ると、お客さんの盛り上がりがものすごくて、素直に『すげぇな』と驚きます」(川上)
NARGOは近年影響を受けたバンドに、3人組ロックバンドのUNISON SQUARE GARDENの名前を挙げた。
「彼らの曲をカバーしたことがあるんですけど、アレンジという点でバンドにたくさん持ち帰る部分がありました。とにかく演奏力が高い。語彙力が乏しくなるぐらい『本当にすごいことをしている』と、ただただリスペクトしています」
ジャマイカ生まれのスカをベースにジャズ・ソウル・R&B・ポップスなどあらゆるジャンルを独自の解釈で飲み込み、オリジナルのスタイルとしてサウンドを築き上げている彼らだが、その探究心は未だ衰えることはない。
「まだまだ発展途上、先があると思っています。最新アルバムを世に出す時は、『これは今までの中で1番いい作品だ』と思えないと創る意味もない。常に過去の自分たちを超えたくて、バンドを続けているんです」(谷中)
スカパラは「ベストを尽くさないと落ち込む人たち」
「みんな、ベストを尽くさないと落ち込む人たちなんですよね。結局、30年活動を続けているのもどこかで満足していないから。この歳を迎えても『俺たちはもっとすごいことが起こせるはずなんだ』と未だに信じている。だから常に全身全霊だし、これからも同じようにライブを続けていくと思います」(谷中)
2019年にはメキシコ最大の音楽アワード『Las Lunas del Auditorio 2019』のオルタナティブ部門でベストパフォーマンス賞を受賞した。世界中でライブを繰り広げ、これまで訪れた国は31を数える。今後スカパラはどこに向かっていくのか。
「先日、コロンビアの8人組バンドのムッシュ・ペリネというアーティストとのコラボが実現したんですけど、ものすごくかっこいいグループで、刺激をたくさんもらいました。アルゼンチンのラテンアーティストとのコラボ企画も進行中です。そういった活動をしていく中で、新しい“トーキョースカ”のサウンドを提示していきたいですね」(川上)
NARGOも似た思いを持っている。
「去年のメキシコでの受賞で、音楽に国境がないことを示せて本当にうれしかったし、これからも世界中を踊らせていきたいです」(NARGO)
最後に谷中は楽器の重量を引き合いに出しながらこんなことを語ってくれた。
「20代の頃の方が、バリトンサックスを重たいと感じていたかもしれないな(笑)。楽しんでやっていたら、いつの間にかその“重さ”は感じなくなっていて。裏を返せば、スカパラがライブなどで『パラダイス』を提供できると実感できているから。これからも、世界中のどんな場所でも自分たちのパラダイスを作っていけるように活動していきたいですね」
亡くなったメンバーや去っていったメンバーの思いを背負い、オーディエンスやスタッフも含め、スカパラに関わった人たちをひとり残らず幸せにする。これはスカパラの矜持だ。ジャンル、国境、世代、すべての「ボーダー」を取っ払い、目の前にいるオーディエンスに楽園を届けるべく、音楽を鳴らしていく。
(取材・文/中山洋平 撮影/加藤岳)