25周年を迎えるゴスペラーズ、5人が語るグループの強み「どんな音楽性でも5人でやればゴスペラーズ」
“ロックバンドに負けないアカペラ”を目指していた
5人のアカペラを中心としたベーシックなスタイルを持ちつつ、常に新しいトライを続けている5人。その姿勢は、最新シングル「VOXers」(作詞・作曲/酒井雄二)にも明確に表れている。
「“25周年シングル”だったので、自分たちの原点について考えたんです。アマチュア時代、メジャーデビューした頃(1994年)はバンドブームの真っ只中で“ロックバンドに負けないアカペラ”を目指していたし、いまもフェスに出たときは、“マイク5本でお客さんを掴む”という気持ちでステージに上がっていて。そういう戦う姿勢みたいなものは脈々と生きているし、キレイに溶け合うアカペラだけではなく、僕らには5人の癖を強く出したアカペラもある。それを形にしたのが、『VOXers』なんですよね」(酒井)
リードヴォーカルが5人、過剰なところがおもしろがられてるのかも
「そのときにやりたいこと、表現したいことを形にするのがシングル。曲間から、その楽曲を制作した当時のことがフラッシュバックするような感覚がありますね」(北山陽一)
「他のアーティストのシングルコレクションを聴いていると、“この曲は意外と初期の曲なんだ?”みたいなことがよくあって。僕らと出会ってくれた時期は人によって違うと思いますが、ぜひ、出会う前のゴスペラーズを追体験してほしいですね」(安岡)
シングル曲をリリース順に収めた本作から見えてくるのは、その時期のトレンドや流行と上手くバランスを取りながら、男性ヴォーカルグループとして唯一無二の存在感を勝ち取ってきたという事実だろう。特にJ-POPにおけるブラックミュージックの浸透とゴスペラーズの活動は、強くリンクしていると思う。
「音楽シーンとリンクに関しては、僕らがコントロールできることではないですが、運が良かったとは思いますね。90年代前半にアメリカでヴォーカルグループのリバイバルがありましたが、日本のポップスの文脈を踏まえたうえで、そのスタイルで歌える人はそれほど多くなかった。だから僕たちが世に出られたわけです。その際に参考にしたのがドゥ・ワップを中心にしたソウルミュージックだったのですが、90年代後半に日本でR&Bが流行った時期に、しっかり力を付けた状態でいい曲を届けられたのも大きかった。5年ずれていたら、どうなっていたかわからないですね」(村上てつや)
「最近のR&Bのシンガーは歌い上げる人が少ないですが、僕らはしっかり声を張り上げる。5人リードヴォーカルがいるところも含めて、過剰なところがおもしろがられてるのかもしれないですね。前回のアルバム『What The World Needs Now』も、そういう部分を打ち出しているんですよ」(黒沢)
どんな音楽性であっても“5人でやればゴスペラーズ”
「メンバーそれぞれ好きな音楽性が違うし、ゴスペラーズという円からハミ出てるところもあるんだけど、その部分はすごく大事なんですよ。いろいろな方からオファーをもらえるのもありがたくて。たとえば合唱曲を作らせてもらったときも、“アカペラと合唱曲は似てるようで違うんだけど、できるかぎりがんばってみよう”と。そうやって縁が広がってきたんですよね」(村上)
「ある時期から、どんな音楽性であっても“5人でやればゴスペラーズだね”と腑に落ちるようになって。グループで活動している以上、全員が乗っかれるストーリーや、それぞれの違いを吸収するための理論武装も必要だったんですよね」(北山)
ブレスやカウントが聴こえるくらいのホールでやる感覚をもっていたい
「リーダー(村上)がずっと言っていて、僕らも共鳴しているのが、“あなたの街に行って歌いたい”ということなんです。電車で1時間かかる県庁所在地ではなく、自転車で行ける会場でライブをやることも、コミュニケーションの一つなので」(北山)
「それを続けていれば、“いつかは私の街に来てくれるかも”と思ってくれるんじゃないかなと。大きな会場もいいけど、ブレスやカウントが聴こえるくらいのホールでやる感覚をずっと持っていたいんですよね」(村上)
「三浦大知、Little Glee Monsterも来年、長いホールツアーをやるんですよ。そういう価値観がまた出てきていることは良いことだなと」(黒沢)
25周年以降のビジョンについても、「“この人たち、まだまだ攻めようとしているんだな”と思ってもらえる次のページを用意したいです」(安岡)と意欲的。全員がリードヴォーカルであり、作詞・作曲を手がけるクリエイターでもあるゴスペラーズの音楽性、そして、生々しい身体性を伴ったステージは、2020年代も強い存在感を発揮することになりそうだ。