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米津玄師に岡村靖幸、コラボで話題のラップシンガーDAOKOの正体とは?

 米津玄師とコラボした「打上花火」が大きな話題となったラップシンガー・DAOKO。さらに岡村靖幸、BECKともタッグを組むなど、国内外から注目される存在だ。15歳でニコニコ動画に楽曲を投稿し、16歳でm-floと組んで映画主題歌を担当。その後は、映画『渇き。』挿入歌、専門学校HALの2016年度CMソングに参加するなど、まさに引く手あまた。そんなDAOKOは、自分に才能があるとするならば、「人と人をつなぐ力、触媒力」だという。注目のアーティスト、DAOKOの正体に迫る!

米津さんとコラボすると決まったときは不思議な気持ちでした

――DAOKO×米津玄師による「打上花火」(映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌)、DAOKO×岡村靖幸の「ステップアップLOVE」、そしてBECKとのコラボレーションが実現した「UP ALL NIGHT×DAOKO」など豪華なコラボレーションが話題を集めています。
DAOKO 米津さん、岡村さん、BECKさんはすごく尊敬しているクリエイターですし、一緒に楽曲を制作できたのは嬉しいです。米津さんは、私が中学生のときにニコニコ動画に投稿を始めたときは(ボカロP“ハチ”として)すでに有名で、素晴らしい楽曲をたくさん残していて。リスナーとしても衝撃を受けましたし、コラボすると決まったときは不思議な気持ちでした。ただ、二人の名前が並んでいる以上、自分にできることを最大限に出せるように尽力するしかないので。それは岡村さんのときも同じです。もともと私がファンで、「ぜひ岡村さんと曲を作ってみたいです」と言い出したんですよ。

――岡村靖幸さんの音楽を知ったのはいつ頃ですか?
DAOKO 2〜3年くらい前なので、私が17歳くらいのときですね。岡村さんのアルバム『家庭教師』(1990年)を聴いて、衝撃を付けて。岡村さんにしか表現できない世界観があったし、そこに自分の感性を掻き立てられたというか。「ステップアップLOVE」を制作したときも、本当に刺激的でした。BECKさんとのコラボは急に飛び込んできた話なんですが、本当にビッグニュースだったし「もちろんやります」という感じで。「UP ALL NIGHT」のBECKさんのラップが本当に素敵だったからプレッシャーもありましたが、いい作品になったと思います。

――『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演するなど、メディアに出ていくことも増えました。
DAOKO テレビなどに出演するときは、もちろん制作時のテンションとは違いますし、意識的にスイッチを切り返ることができるようになったと思います。普通の状態で出て行っても上手くいかないし、伝わらないと思うんです。演じているわけではなくて、作品に対して真摯に向き合っているところを観てもらうのが一番だし、ハッとしてもらえるんじゃないかなと。

「ラップって楽しそう」というところから、ニコニコ動画に投稿

――そして12月20日には、米津さん、岡村さんコラボ曲を含む2ndアルバム『THANK YOU BLUE』が発売。
DAOKO 前作の『DAOKO』(2015年)は3年間のインディーズの集大成であり、メジャーデビューにあたって自己紹介になるような内容のアルバムだったんです。その後の2年半はすごく長くて――年齢的には17歳から20歳になるまでの時期ですね。興味の方向や好きな音楽もどんどん変わっていった。今回のアルバムは最初から全貌が見えていたわけではなく、目の前にある楽曲に取り組み続けて、そこで出来たものをパッケージした作品なんです。

――音楽性も変化している?
DAOKO そうだと思います。もともと私は「ラップって楽しそう」というところから入って、ニコニコ動画に投稿するようになったので、そこまで音楽を聴いていたわけではなかったんです。だからルーツと言えるものを強いて挙げるなら、ニコニコ動画で知った楽曲、特にボーカロイド音楽、打ち込みの音楽。その後、インディーズ、メジャーと活動を続けながら、いろいろな音楽を聴いて、吸収してきた感じなんですよ。それは今回のアルバムにも出ていると思います。

私に秀でている部分があるとすれば、人と人をつなぐ力、触媒力なのかな

――ヒップホップ、ダンスミュージックを軸にしながら、J-POPとしても成立している作品ですよね。踊れる曲であっても、その底には切なさ、悲しみの感情が感じられるのも印象的でした。
DAOKO 音楽でも映画でもそうなんですけど、エモーショナルになるのは悲しさ、切なさを感じたとき。いつも少し悲観的というか、ベースがアッパーな人間ではないし、悲しみや切なさがあるダウンな状態にこそ、幸せが感じられると思っているんです。楽曲を作るときも、自分のなかの欠けている感情を取り戻すような感覚があるんですよ。ただ、踊るのは大好きだから、ライブハウスやクラブで踊っているときがいちばん幸せだったりもするんです。音楽と体と心しかないという空間がすごく好きだし、ダンスミュージックはやっぱりいいですよね。“泣きながら踊る”という光景を自分の楽曲で作ってみたいなという目標もあります。

――自分自身の作品性、スタイルを俯瞰的に捉えているんですね。セルフプロデュースの能力が高い。
DAOKO そうありたいとは思っています。それに、DAOKOは私個人ではないという感じもあるんですよね。制作にはサウンドプロデューサー、トラックメイカーに参加してもらっているし、チームでやっている感じ。現時点では自分だけで曲は作れないし、楽器も弾けない。だけど、自分が発したものを強化したり、肉付けして作品にできる環境があるんですよね。つまり人に支えられながら活動しているわけですが、自分には触媒的なところがあると思うんです。私に秀でている部分があるとすれば、人と人をつなぐ力、触媒力なのかなと。声と歌詞にはオリジナリティがあると思っていますけどね。

――米津さん、岡村さん、BECKさんとのコラボレーション、アルバムの初回盤に付いているDVD「チャームポイント」(これまでの楽曲をGOTH-TRAD、STUTSなどのアーティストがリアレンジ。それをもとに新たに制作したMVを収録)に参加している方々もそうですが、DAOKOさんを介してクリエイターやアーティストがつながっているわけですね。
DAOKO それは今後も続けたいと思っています。アートワークなども“自分が美しいと思える状態でないと出せない”という思いが当たり前にあって。アルバムのジャケットは自分で描いた絵をもとにして篠山紀信さんに撮影していただいたのですが、そうやって自分の血を通わせることが大事だと思うんです。そうじゃないと“私じゃなくてもいい”ということになってしまう。ジャンルや形に捉われないで、自分の心が動くものに対して誠実であるというのが、私のスタイルだと思っていて。この先どうなるかはわかりませんが、出会ったものによって、自分の音楽も変わっていくんだろうなと思っています。
(文:森朋之)

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