ORICON NEWS
【SMAP連載24】5人が提示した見たことない景色、彼らが“アイドルの天才”となるまで
『嘘の戦争』とクリップ集に見る、SMAPの経験と成熟
なぜ、草なぎはあんな表情ができるのだろうか。地獄を味わった人でないと抱え込むことのできない冷たさや遣る瀬なさ。ある種の“狂気”とも取れなくもない一瞬の迫力。人としての経験値が、桁違いであることを感じさせるその存在感。このコラムの本題は、SMAPの映像集『Clip!Smap!コンプリートシングルズ』のレビューの後編なのだけれど、あらためて25年分の彼らの映像の記録を追ってみて、その経験値の高さに驚愕し、わかったのだ。SMAPとしてのあらゆる経験が、彼らを俳優やアーティストとして他の追随を許さないほどに成長させ成熟させたのだと。5時間に渡るミュージッククリップ集を観れば、確実に、彼らが年齢を重ねるごとに表現力や人間力を増していることが理解できる。
若さで魅せる時代から大人の戦い方へ、伝わる“生きるメッセージ”
デビュー10周年記念シングル「Smac」は、ライブで歌われたこともほとんどなく、過去曲の歌詞を盛り込んだ“企画もの”的な作りなのだが、あらためて観ると映像は実験的でシュール。癖になる面白さだ。TシャツにSMAPのメンバーの顔がプリントされたTシャツを着た南国系の男たちが、上野の街を練り歩く。Tシャツの中でしゃべる生命体といえば、日本人ならつい“ど根性ガエル”のピョン吉を連想してしまうが、ヒロシと生活を共にするピョン吉さながらに、商店街や回転寿司屋に出没する5人の姿は、“見たこともない東京”を浮かび上がらせる。これも偶然というべきか、その年のライブでは途中から稲垣吾郎の姿はなく、ツアーのラストで、全員が稲垣の顔がプリントされたTシャツを着て登場した。
見たことのない映像といえば、「ありがとう」も同様で、切り絵っぽいアニメーション仕様で、アリとSMAPの友情が描かれる。アイドルなのにSMAPがカッコ良く映っているわけでもなく、リアリティも皆無なのだけれど、こうしてクリップ集で観ると、その斬新さについ見入ってしまう。SMAPのミュージッククリップに、常識なんてものはない。どんな調理法でも、SMAPの素材としての強さが消えることはないし、若さが失われても、代わりに獲得しているものの方が圧倒的に多い点も頼もしい。彼らが大人になるにつれ、放つ輝きは“フレッシュ”から“ゴージャス”へと進化した。それもまた、同じ時代を生きる者にとっての勇気につながる“生きるメッセージ”なのである。