クリープハイプが新曲「愛す」発表――10周年への想い 「ちょっと届かないくらいがいちばん楽しい」
「クリープハイプを知らない人にも 届くような曲を作りたかった」
尾崎世界観クリープハイプを知ってくれている人はもちろん大事ですけど、そこだけに寄り掛かるのはよくないと思うんです。ある程度知ってもらえるようになったからこそ、クリープハイプを知らない人にも届くような曲を作りたかったんです。それは作り手としての欲求でもあり、“そういう曲がないと残っていけない”という危機感でもあります。
長谷川カオナシ『愛す』のデモ音源を聴いたとき、バンドのお客さんだけではなく、もっといろんな人に聴いてもらえるポピュラリティがあると感じました。アレンジをするときも、バンドでエモーショナルに演奏するというより、曲の良さを伝えることを意識していました。
小川幸慈ギターに関しても、音色やトーンを重視して、自分自身の表情はなるべく消すようにしました。
尾崎歌もそうで、なるべくクセが出ないように、無機質に歌っています。曲を立たせるためには、バンドの熱を冷ましたほうがいいと思っていました。自分たちの意思でこういった引き算のアクションを起しているという意味ではバンドらしいと思うし、自分たちに飽きないためにも新しいことをやりたかったんです。
作っている側と受け取る側のズレは必ずある
尾崎1回見ただけで全部理解できることも大事だけど、何回も見ないと理解できなかったり、面白さがわからなくてもいいと思うんです。せっかく作品を作るんだから、長く触れてほしいし、何度も見てもらいたいと思っています。
尾崎同じスタイルを貫くのもバンドらしさだと思うし、エフェクターで音色を変えるような感覚で、制作のスタイルを切り替えることで幅も広がるんじゃないかなと思っています。バンドサウンドにはすぐに戻れますからね。
尾崎いまの状況も決して居心地がいいわけではなくて。ずっとバランスが悪い場所にいるような気もします。でも、その姿勢でいいのかなと思っています。今回のシングルもそうですけど、作っている側と受け取る側のズレは必ずあるし、そこは学びながらやっていくしかないと思います。ちゃんと狙いを定めて、やりたいことがしっかり届くようにしたいという気持ちもあるけれど、受け取る側とのズレも大事なんですよね。100%を伝えられたらバンドをやる意味がなくなると思うし、ちょっと届かないくらいがいちばん楽しいのかもしれないですね。