なぜBAND-MAIDは海外でウケたのか? ハリウッド映画出演のメイド服バンドがブレイクの兆し
デビュー当初より海外に照準を合わせていた
近年、BABYMETALやONE OK ROCKといった日本人アーティストの海外進出が活発化しているが、「BAND-MAIDを始めたときから世界を見据えていた」(小鳩/ORICON NEWSインタビューより)というコメント通り、彼女たちも結成当初から海外を視野に入れていた。2016年にはアメリカ・シアトルの日本文化を紹介するコンベンションイベント『Sakura-Con』に招かれ、初の海外ライブを経験。「日本のカルチャーを紹介するイベントだったこともあると思うんですけど、“萌え”は世界共通語だなって思いました」(小鳩)と手応えを掴んだ彼女たちは、1stアルバム『Brand New MAID』でメジャーデビューした2016年5月にイギリスのイベント『MCM COMIC CON』に出演。さらに10月からはメキシコ、イギリス、ドイツ、フランス、ポーランド、イタリア、スペイン、香港の8ヵ国9公演のワールドツアーを開催するなど、着実に活動の規模を広げていった。
メイド服姿で本格的なハードロック、かわいいとかっこいいのギャップ萌えする人が続出
音楽性について結成当初は試行錯誤を繰り返したものの、1stシングル「愛と情熱のマタドール」に収録された「Thrill(スリル)」をきっかけにハードロック路線に変更。高い演奏力を活かしたバンドサウンドにより、見た目とのギャップを生み出し、それがバンドの特徴となっている。この点に関してメンバーは、「見た目がこうだと“演奏も可愛い感じなのかな”って思われることがどうしても多いんです。でも、それは私たちとしてはプラスだと思っていて、音を鳴らした瞬間に、会場にいる方が“あっ!”という顔をすると“よし”って思いますからね。ちょっとナメてたでしょ?って」(小鳩)「“見てろよ”感ですね」(MIKU)と言う。自らの特徴を俯瞰し、それを最大限に活かしていることも、彼女たちの躍進の理由だろう。HIP HOP、R&B、EDMなどが主流の欧米の音楽シーンに対し、本格的なロックサウンドで挑む姿勢もまた、現地のロックファンの心を掴んだ要因だ。
また、海外におけるBAND-MAIDの知名度を上げる原動力となっているのが、YouTubeでのリアクション動画の多さだ。特に「Thrill(スリル)」や「DICE」といったライブで人気のハードな楽曲に対するリアクション動画の数は際立っており、彼女たちの演奏力の高さ、パフォーマンスの良さを広く伝えることにひと役買っている。
既存の市場で争わず、他アーティストと被らない“一択の存在”で支持を獲得
現在、ニューアルバム『CONQUEROR』を引っ提げた全国ツアーを行っているBAND-MAIDは、2020年7月10日、11日、12日にアメリカ・オハイオで開催されるフェス『Inkcarceration Festival』に日本人として初めて出演する。映画『ショーシャンクの空に』の舞台となった刑務所跡地で行われ、ハードロックとタトゥーをコンセプトに掲げた同イベントには、リンプ・ビズキットやウィーザー、ブリンク182といった大物アーティストも出演。コアなロックファンが集まるこの大舞台で持ち前の”ギャップ萌え”を発揮できれば、彼女たちの評価と知名度はさらに向上するだろう。
日本でも海外でも、アイドルやバンドシーンといった既存の市場でパイを奪ったのではなく、際立ったオリジナリティによって、他に代えがきかない“一択”の存在として支持を集めたBAND-MAID。質の高い音楽性、独創的なライブパフォーマンス、国境を越えた活動方針を含め、彼女たちのスタイルは今後の日本のアーティストにとっても1つの指針になる可能性を秘めている。2020年代以降のBAND-MAIDがどのような展開を見せるのか、今後も注視したい。
(文/森朋之)