円谷プロの遺伝子を世界へ ディズニー流ブランド戦略の狙い「プロデュース集団のスタジオをめざす」
世界に向けて仕掛けていくCEOとCOOの新執行体制
塚越戦略という言葉は、あまり使いたくないんです。というのは、円谷プロにとって、作品がすべてだから。ビジネスライクにするのは、本来の円谷プロが目指す形ではありません。ただ、ここにきて、ようやく新作『かいじゅうのすみか』や新たなファンイベント『TSUBURAYA CONVENTION(ツブコン)』などの内容をお伝えできるようになり、IPの打ち出し方をしっかりご説明したいと思い、それを戦略という言葉を使いご説明しているところです。
――前職では、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンを統括する立場でした。円谷プロでのIP展開では、ディズニー流を用いている?
塚越円谷プロは創業以来、60年近くの歴史のなかで制作プロダクションとしての立ち位置で活動してきたわけですが、これからはそれに加えてコンテンツホルダーとしてのブランドに基づいたフランチャイズ展開を推し進めていきます。
――ディズニーから円谷プロへ来られた意図をうかがってもよろしいでしょうか。
塚越仕事人生の終盤に差し掛かり、日本の作品を世界に届けたい、そのために貢献できることがあるのではないか。そんなことを考えていたときに、20年来の知り合いの円谷プロの親会社であるフィールズの山本英俊会長から、「円谷をディズニーのような会社にしてほしい」と相談されました。フィールズは10年に円谷プロを買収して以降、再建を図っていた時期でもありました。当時のディズニーでの仕事もあり、迷いもありましたが、これは私に与えられた最後のチャンスかもしれない。業界で26年にわたり学ばせてもらったことを活かして、日本の作品で世界展開をめざす仕事ができるならば本望と決心し、現在に至っています。
塚越これまで円谷プロは株主であるフィールズとバンダイのサポートを受けながら事業を成立させてきましたが、成長戦略に乗って、決裁のスピード感を出すための体制作りに株主も理解を示してくれました。ブランドに基づいたフランチャイズモデルをめざし、世界に向けて仕掛けていくためのCEOとCOOの執行体制になります。COOの永竹は運営と実行役、私は風呂敷を広げる役回りです(笑)。ここからドライブをかけてさまざま展開を進めていきます。
――IP開発に注力していく方針を打ち出していますが、クリエイティブ部門など組織全体の強化も図っているのでしょうか。
塚越クリエイティブ部門のハブになってもらおうと、円谷プロの遺伝子を熟知する隠田雅浩に2018年1月1日付で円谷プロに戻ってきてもらっています。その穏田を4月1日付で製作本部長に任命したところです。製作部門に加えて、国内営業、海外本部も充実させ、110人いる社員の組織力を高めるとともに、増員もしていきます。また、社内の人材だけでなく、外部のクリエイターの方々と一緒に制作していくことも計画しています。これからの円谷プロは、制作プロダクションの仕事に加えて、プロデュース集団としても機能していきます。