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直木賞作家・辻村深月が映像脚本執筆「新しい時代に自分ができることを考える作家でいたい」

角度を変えて描くことで新しいものが見えてくる

――メディアのあり方も大きく変わっていく昨今、作家として意識していることはありますか?
辻村深月いろいろなメディアが出てきて、読者の楽しみ方も変わっていきますが、普遍的な物語はなくならないと思っています。15年作家をやっていると、デビュー当時と出版をめぐる環境は大きく変わってきました。20代の頃は「現実に対して物語って無力だな」と感じることもあったのですが、大きな痛ましい震災などを経験して「物語の力って決して小さいものではない」とはっきり感じられるようになりました。私自身も物語の世界に助けられて大人になりましたし、自分の仕事に胸を張ろうと思えるようになりました。

――出版界を取り巻く環境の話が出ましたが、デジタル化についてはどんなお考えを?
辻村深月電子化の流れを論じるとき、どうしても“対決”の図式にされがちです。でも、デジタルで読む人もいれば、紙で読む人もいる。作家としてはどちらが良い、悪いとか、敵、味方という考えはしたくない。共存して、それぞれの読者に沿った形で楽しんでもらいたいという思いです。新しいものが出てきたとき、それを悪者にせず、そのつど自分にできることを考えていける作家でいたいです。

――15年という作家生活で、内からこみ上げてくるテーマなどは変わってきていますか?
辻村深月テーマ自体が変わるというよりは、同じテーマを角度を変えて描くことで新しいものが見えてくるようなことの繰り返しだと思っています。本屋大賞をいただいた『かがみの孤城』は中学生が主人公ですが、デビューしてすぐの頃に書いていたら、きっと描き方が全然違うものになっていたと思います。昔は大人が理不尽なことをしたとき、どちらかというと大人と敵対する視点だったのですが、いまは自分が大人と呼ばれる立場になったせいか、中学生の物語を書いても、作中にどこか「大人なのに不甲斐なくてごめんね」という目線が入る。この視点の変化があったからこそ、あの話が大人にも子どもにも広く読まれるものになったのだろうと思っていますし、これまで書いてきたテーマも、そんなふうに変化していくのだろうな、と感じています。十代の子たちを主人公にした話は、これからもきっとライフワークのように書くでしょうね。

提供元: コンフィデンス

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