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受賞作品が映し出す音楽シーンと「NexTone Award」の軌跡 著作権使用料の分配額から見える音楽の価値

 2026年で10周年を迎えた「NexTone Award」。本年度は、こっちのけんとの「はいよろこんで」が見事Gold Medalを受賞した。また、直近10年間に最も著作権使用料の分配が多かった作品に贈られる10周年特別賞をMONGOL800「小さな恋のうた」が受賞するなど、その他各賞の発表も同時に行われ、盛大に表彰イベントが開催された。著作権使用料の分配実績をもとに選出される同アワードは、その時代に支持された楽曲だけでなく、長年にわたり愛され続ける作品の価値も映し出してきた。受賞作品の変遷をたどりながら、NexTone Awardが見つめてきた音楽シーンの10年を振り返る。

PHOTO:ホキモト タカフミ

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音楽産業の振興を目指して創設した「NexTone Award」

――まずは、そもそも「NexTone Award」を創設したきっかけや、その当時の思いについてお聞かせください。

NexTone2016年2月に、株式会社イーライセンスと株式会社ジャパン・ライツ・クリアランスという2つの会社が合併統合して、株式会社NexToneがスタートしました。著作権管理事業が統合して再スタートを切ったのが、翌年の2017年4月1日になります。 そして新生NexToneとして新たな一歩を踏み出すことを記念し、かつ、将来に向けて日本の音楽産業振興の一助となることを目指して「NexTone Award」を創設しました。

――2017年からAwardが始まりましたが、今のようにイベント形式になったのは2024年から。それ以前、設立初期の頃はどのような活動状況だったのでしょうか。

NexToneAward自体の基本設計としては、前年1年間(1月から12月まで)の著作権使用料分配額の上位3作品を、「Gold Medal」「Silver Medal」「Bronze Medal」として表彰させていただく形になっています。これに加えて、弊社のデジタルコンテンツディストリビューション事業やビジネスサポート事業、その他の事業で大きな功績を作られたアーティストや作品・プロジェクトを「特別賞」として選出・顕彰するというものです。「Gold Medal」を受賞された作品に関しては、作家様の手形を作成してNexTone本社のエントランスに展示しています。初期の頃は、HMVの店頭をお借りして手形の展示を行ったり、2022年に瑛人さんが「Gold Medal」を受賞された際にはニコニコ生放送で授賞式番組を行ったりと、基本的にはオンラインや展示を中心とした表彰を行ってきました。 そして10周年という節目が見えてくる中で、より広く世の中にこの賞を啓蒙していくこと、そして何より受賞された方々を盛大にお祝いすることを目的として、2024年度(第8回)から、今のようなリアルなイベント形式をスタートさせました。業界内はもちろん、業界外へのPRも含めて、受賞者や受賞作品をより大きく盛り上げたいという気持ちがあります。

――初期の頃に比べて、反響や盛り上がりという点ではいかがですか。

NexToneSNSでの反応やメディアでの取り上げられ方、関係各社様との連携も含めて、年々規模は大きくなっています。特にイベント化したことで「情報」として発信しやすくなりましたし、出演されるアーティストの方々のご協力やイベントレポートの掲載など、今まで以上に多角的な展開が広がっていると感じます。

――2022年のニコニコ生放送での番組は、当時、ひとつのターニングポイントになったのでしょうか。

NexToneもっと広く「NexTone Award」を知ってもらいたいという思いがずっとありましたが、いきなり大きな会場を借りてイベントをするのはハードルが高かったので、まずはスタジオを借りて生配信をしようということになりました。 公開放送のような形式でしたが、瑛人さんにご出演いただき、ゲストに四千頭身さんにもお越しいただいたりして、あの放送が、今のイベント化に繋がるターニングポイントになったかと思います。

PHOTO:ホキモト タカフミ

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受賞作品が示す音楽の価値

――では、賞の定義とこれまでの変遷について教えてください。各賞は著作権使用料の分配額が基準とのことですが、2017年の開始時から変わってきた点、追加された点などはありますか。

NexTone2017年の開始時は、「Gold Medal」「Silver Medal」「Bronze Medal」の3賞と、特別賞の計4つの賞でスタートしました。 初回の「Gold Medal」はスピッツさんの「渚」でしたが、この曲は1996年にリリースされた作品で、リリースから約20年を経て、2017年にゴールドを受賞したというのは、まさに「ヒット曲が長く愛され、さまざまな場所で利用され続ける」という著作権の醍醐味を象徴する結果でした。その翌年は、RADWIMPSさんの「前前前世」が「Gold Medal」でしたが、この作品は映画『君の名は。』の主題歌として爆発的にヒットしました。20年経った曲もあれば、新曲が受賞する年もある。著作権のアワードならではのラインナップになることが多いです。スピッツさんはその後も「スターゲイザー」が受賞されるなど、非常に多くの名曲をお持ちなので、長く愛され続けているアーティストであることが集計の結果からもよくわかります。

――しばらくは、その4つの賞の構成だったのですね。

NexToneはい。イベント化を見据えた2024年からは、新たに「国際賞」と「YouTube賞」を追加しました。 これは、海外地域における著作権使用料の徴収が本格的にスタートしたことや、弊社のデジタルコンテンツディストリビューション事業における海外販売実績が非常に増えてきたというタイミングに合わせて創設しました。「YouTube賞」については、今の音楽業界においてYouTubeというプラットフォームが、プロモーションだけでなく収益源としても非常に重要な位置を占めている現状を踏まえています。一般的なストリーミングやカラオケでの利用実績と、YouTube内での利用実績は必ずしも一致しませんし、特殊かつ顕著な実績が出てくるのが面白いところでもあります。

――2024年はOrangestarさんの「Surges」でしたね 。

NexToneそうですね。これはカロリーメイトのWeb CM向けに書き下ろされた作品で、ネット上でかなりバズりました。あと2024年には特別功労賞も創設しました。長きにわたり日本のみならず世界に対しても多大なる影響を与え続け、数えきれない功績を作られた坂本龍一さんを畏敬の念を込めて顕彰させていただきました。

――では、今年新設された賞、「10周年特別賞」と「ニコニコ創作文化功績賞」の2つについて、創設のきっかけや詳細を伺えますか 。

NexToneまず「10周年特別賞」に関しては、NexToneおよび「NexTone Award」が10周年というところで、シンプルにこの10年間で最も著作権使用料の分配が多い作品ってなんだろうというところから始まりました。受賞されたMONGOL800さんの「小さな恋のうた」は2001年に発表され、今年で25周年を迎えられています。10周年特別賞の集計対象の直近10年間でいうと作品が誕生して15年目から25年目の時期にあたります 。それにもかかわらず1位を獲得された要因としては、CMで使われたり、カラオケで歌われたり、サブスクで聴かれたりと、さまざまなメディアで今もなお利用され続けていることが理由にあげられます。カラオケではこの20数年間ずっと上位に入り続けていますし、本当にずっと輝き続けている作品です 。

二次創作文化を顕彰する意義

――ニコニコ創作文化功績賞については、今回はGigaさんが受賞されました 。

NexToneこれはドワンゴさんと相談して創設しました。「YouTube賞」がある一方で、国内最大の動画投稿サービスであるニコニコ動画の実績を称える賞も作りたいと考えました。ただ、他のアワードでも再生数の多い動画の表彰を行っているので、NexToneならではの軸で集計できないかと考えました 。ニコニコ動画といえば「二次創作」文化を象徴するサービスでもあるので、作品単体の再生数ではなく、その作品が二次創作としてどれだけ動画が投稿されたかの数を評価の軸にしようということで創設した賞です。Gigaさんはファンや視聴者からの人気が高いだけではなく、他のクリエイターからも非常に高く評価されていることが今回の集計で改めて明確になりました。

――当日もGigaさんご本人が「私の作品が多くの人たちに知っていただけるようになったのは、間違いなく二次創作としてたくさん広めてもらえたから」というコメントや、「歌ってみた、踊ってみた、その他様々なジャンルの派生作品を見るのが大好きです」と仰っていました。ニコニコ動画の文化をとても大切にされている方ですね 。

NexToneそうですね。ひと昔前だと権利者の許可なく曲を使うことなどあり得ませんでしたが、ニコニコ動画やYouTubeのような投稿サービスが出てきて管理事業者と包括的に使用許諾契約を行ったことによって、アーティストも一般の方も自由に動画を投稿することが出来るようになりました。また、権利者の意識も「もっとみんなに使ってもらって、聴いてもらって、楽しんでもらって、むしろそれがプロモーションになる」という方向に風向きが変わってきました。特にニコニコ動画で動画投稿を始めたクリエイターさんは、その独自文化を今も大切にされていらっしゃる方が多いと思います。

――今年は「YouTube賞」と「 ニコニコ創作文化功績賞」があり、どちらも似た形で括られることが多いプラットフォームではありますが、それぞれの賞に“味”が出ていて「らしい」楽曲が入っていると感じました 。では、これまでの受賞楽曲全体の傾向の変化や、思い出に残っている作品について伺えますか 。

NexToneロングセラーの曲と新曲が入り混じりながら上位の3賞を受賞しているのが面白い部分ですよね。社会的なブームになった作品や映画主題歌などで言うと、まず「前前前世」ですね。映画『君の名は。』の大ヒットもあり、すごい勢いで世の中に広まりました。あいみょんさんの「マリーゴールド」も誰もが知るヒット曲でした 。 ひとつの転換期としては、やはりネットでバズった瑛人さんの「香水」が2022年に「Gold Medal」を受賞したことでしょうか。YouTubeをはじめネットの世界から火が付き、「Gold Medal」を受賞するまでの大ヒット曲になりました。時代の変化、変わり目の年だったと思います 。

――その年は、「Silver Medal」もAdoさんの「うっせぇわ」とネット発の楽曲でしたね。コロナ禍で多くの人が自宅にこもっていた時期ということも関係していますか 。

NexToneそうですね。リアルライブがほぼなかった時期ですし、著作権の集計は前年一年の実績、かつ利用から分配まで半年から一年かかることを踏まえると、まさに2020年から2021年あたりのコロナ禍によく聴かれた作品なので、特にオンライン系の利用実績が高かった作品が上位に並んでいました。「特別賞」も「ホロライブプロダクション」でしたし、ネット発のアーティストやクリエイターが特に大きく躍進された時期だったと思います。2023年は「うっせぇわ」がさらにロングセラーとなり、「Gold Medal」を受賞されました。2024年の「Silver Medal」を受賞されたSEKAI NO OWARIの「Habit」も中毒性のある楽曲で、こちらもネットでバズって、歌ってみたや踊ってみた動画が多く投稿され、再生されました。

――この年は国際賞に「アトラスサウンドチーム」が入るなど、ジャンルも幅が広がった印象でした。

NexToneリスナーの音楽への触れ方や聴き方が大きく変化してきていますし、若い世代の方々が音楽だけでなく動画サービスやゲーム、SNSなどさまざまなメディアを通して、若年層に刺さる楽曲がバズる傾向は近年さらに加速していると思います。2026年の「Gold Medal」「Silver Medal」「Bronze Medal」の3賞も、YouTubeだけでなくTikTok・Apple Music・Spotifyなどさまざまなプラットフォームで人気だった曲です。

PHOTO:ホキモト タカフミ

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――「Gold Medal」を受賞されたこっちのけんとさんが「こういった賞やテレビで歌わせていただく時って『はいよろこんで』が“こっちのけんとのもの”みたいな形で代表して出ることが多いのですが、実はいろんな人が関わってくださっていて、たくさんの方のおかげでここに立たせていただいている」と仰っていました。今回は共作曲者のGRPさんもご登壇されていましたね。

NexToneこっちのけんとさんとGRPさんが初めて同じステージに立ってパフォーマンスをする機会をこのAwardで実現できたことは非常に光栄でした。おふたりの人柄や、仲の良さが垣間見えたところも非常に微笑ましかったです。

――では、今後のお話をお聞かせください。Awardが10年続けられたことを経て、来年以降20周年に向けての展望などはありますか。

NexToneAwardを通して、日頃から著作権管理事業・デジタルコンテンツディストリビューション事業で管理・販売させていただいている大きな責任と業務の重要性や意義をNexToneスタッフ一同が再確認する機会にもなっていますし、その喜びを感じながら襟を正しています。何より権利者のみなさまが喜んでいただける、そしてその受賞自体が後世に永きにわたり残っていくことに非常に大きな意義を感じています。さらなる拡大を目指しながら、毎年新たなチャレンジをしていきたいと考えています。

PHOTO:ホキモト タカフミ

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