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韓国の音楽史を大きく変える! バーチャルアイドル「PLAVE」の魅力とは K-POP評論家・古家正亨氏が解説
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K-POPバーチャルアイドルグループ・PLAVE(C)VLAST
モーションキャプチャーを使い、自由自在に動き、歌い、踊るアイドル
たとえば、韓国最大手の配信プラットフォームであるMelonでは、タイトル曲の「Dash」をはじめ、収録曲全5曲すべてが音源チャートで1位から5位までを独占し、リリース後24時間の累積ストリーミング数は1100万回を記録。Melonでリリースされた全アルバムの中で、24時間以内に100万ストリーミングを記録した「ミリオンズアルバム」となり、またこれまでPLAVEがリリースした全楽曲の累積ストリーミング数は10億回を突破し、デビュー後、最短期間でMelonの殿堂である「ビリオンズクラブ」入りを果たしている。実は、この偉大な2つの記録を同時に保持するアーティストは、彼らだけなのである。
バーチャルアイドルといえば、イメージ的には日本が先行している感があるが、韓国におけるバーチャルアイドルの歴史も実は古く、その市民権を得たきっかけは1998年まで遡る。当時、テレビCMや広告モデルに引っ張りだことなった韓国初のサイバー歌手(今でいうバーチャル歌手)ADAMの存在がその象徴だ。完全CGで作られた彼(=ADAM)だが、歌手としてデビューした際に、その声、歌を担当していたのは、ドラマ『美しき日々』の主題歌を歌い注目された歌手ZEROであったことはよく知られている。
それ以降も、IT系企業や芸能事務所が独自のサイバー歌手を誕生させたものの、ADAMほどの成功は収められなかった。その背景には、韓国におけるリアルアイドルの人気と進化、そしてその世界的な支持とサイバー歌手の技術力の進化が伴わなかったことがある。
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K-POPバーチャルアイドルグループ・PLAVE(C)VLAST
所属事務所であるVLASTは、韓国の地上波テレビ局であるMBCから独立したバーチャルIP企業で、もともとゲームに使われる技術を用いて、リアルタイムグラフィックスを使ったコンテンツを手がけていた。そのVLASTが手がけたのが、まるで漫画の世界から飛び出してきたような王子様系のビジュアルを擁したメンバーがモーションキャプチャーを使い、自由自在に動き、歌い、踊るアイドルが、PLAVEというわけである。もちろん、モーションキャプチャーという技術自体は目新しいものではなく、PLAVEでは、それに加え、リアルタイムという要素を入れ、より彼らがリアリティを持って、ファンとコミュニケーションを取れるようにしたことで、K-POPアイドルらしい親近感の湧く存在として人気が定着していくようになった。
PLAVEを取り巻く世界観と、メンバーそれぞれの“人間的な魅力”
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K-POP バーチャルアイドル・PLAVE
PLAVEのリーダーで、爽やかかつ繊細な歌声を持ち、作曲までこなすYEJUN(イェジュン)、絶妙なボーカルセンスを備え、常に笑顔を絶やさないプロデュース能力も兼ね備えるNOAH(ノア)、ピンク色の髪が印象的ないわゆるグループのオールラウンダーで、その天然とも言えるキャラクターや振付制作の実力など多様な魅力を持つBAMBY(バンビ)、ラップからボーカルまで完璧にこなし、プロデューサーとしてもその力を発揮するEUNHO(ウノ)、グループのマンネ(末っ子)であり、振付制作やダンスの実力に定評がある、純粋で礼儀正しさが魅力のHAMIN(ハミン)という個性豊かな5人で構成されるPLAVE。そう、彼らの魅力は、いわゆる“自主制作ドル”であるということ。全員が作詞・作曲・コレオグラフィー、さらにプロデュース能力を持ち、バーチャルであるということ以外は、K-POPの他のボーイグループと何ら変わらない活動ができるところにあるのだ。しかもサウンド的には、ロックをベースとした、1つのジャンルにこだわらないジャンル間を縦横無尽に往来するサウンドで、トレンドを取り入れながらも、パフォーマンスにおいてしっかりK-POPらしさを表現している。
もちろん、バーチャルであること。さらにバーチャルワールドであるCaelum(カエルム)から来て、開発者から与えられた能力を用いAsterum(アステルム)という神秘的な空間でTerra(地球)のファンとコミュニケーションを取るというPLAVEならではの活動空間設定があり、その世界観の中で活動しているという点もファンの興味をそそる部分ではある。だが、それ以上にPLAVEの魅力は、その世界観とは裏腹に、メンバーそれぞれの“人間的な魅力”にあるのではないだろうか。
彼らの動画やライブ配信を見ると、ミュージックビデオやライブで魅せる格好良さ、パフォーマンスの素晴らしさだけではない、まるでオヤジギャグのようなウィットに富んだジョークを放ち、ある意味完璧ではない姿を遠慮なく見せてくれるその“人間味”に、反転的な魅力を感じずにはいられない。さらにバーチャルアイドルならでは(?!)の悩みである、いわゆるバグによる映像的な乱れを、1つのジョークとして昇華させてしまうその話術には舌を巻く。
そんな人間的な魅力あふれる彼らに“会いたい“ファンが、24年4月、ソウルで行われた初めての単独コンサート『Hello, Asterum!』に殺到。2日間に渡って開催されたコンサートのチケットは、発売と同時に同時接続者が7万人に達し、発売開始から10分で完売。さらに、25年8月に韓国・ソウルのKSPO DOMEで3日間に渡って行われる単独コンサートは、チケット先行販売開始と同時に、全席完売したという。
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PLAVEの日本1stシングル「かくれんぼ」
実は、そんな彼らが先日、筆者のラジオ番組に、5人揃ってゲスト出演してくれた。5人揃って日本のラジオに出演するのは初めてという彼らだったが、終始、その仲の良さを見せつけられ、見ているこちらが自然に笑顔になってしまうほどだった。そんな彼らのケミ(化学反応)も、PLAVEの魅力の1つと言えるだろう。しかも、今勉強中という日本語を活用しながら、トークでもリスナーを魅了してくれる。いわゆるバラエティセンスも持ち得ているのだから、その伸びしろしかない彼らに、期待しないわけにはいかないだろう。
日本では初の単独イベントとなるショーケースを日本デビューに合わせて行い、日本でファンとついに対面(!)を実現させたPLAVE。だが、その進化は彼らのライブで発揮されるに違いない。そのライブが、自身初となるアジアツアーの日本公演『2025 PLAVE Asia Tour[DASH: Quantum Leap]in Japan』という形で、今年の秋に開催することが決定した。日本初の単独公演となるライブで、果たしてどんなステージ(やトーク)を披露してくれるのか。きっとTerraにいる多くのファンを魅了し、そして、新たなファンを開拓してくれるに違いない。
文・古家正亨

K-POP評論家 古家正亨氏
古家正亨(ふるや・まさゆき)。1974年生まれ、北海道出身。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。98年韓国留学。帰国後K-POPの魅力を伝える活動をマスメディアを中心に展開。2009年には日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。日本で開催される韓流・K-POPイベントのMCとしても知られるほか、ニッポン放送『古家正亨 K TRACKS』、NHK-FM『古家正亨のPOP☆A』など数多くのラジオ、テレビ番組を担当。著書に『K-POPバックステージパス』(イースト・プレス)、『BEATS OF KOREA』(KADOKAWA)など。
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