• ORICON MUSIC
  • ドラマ&映画
  • アニメ&ゲーム
  • ホーム
  • ライフ
  • “無意味”なものにこそ意味がある 「仕込みiPhone」制作者語る次代のカルチャーとは?

“無意味”なものにこそ意味がある 「仕込みiPhone」制作者語る次代のカルチャーとは?

「仕込みiPhone」制作者・森翔太氏

 2012年、衣装の袖に仕込んだiPhoneが飛び出す「仕込みiPhone」を作成し、その紹介動画の再生数が300万回を超えて話題となった映像クリエイター・森翔太氏。自身で「意味のないものばかり作っている」と言うように、その後も独特な作品を世に送り続けている。脱サラしてクリエイターとなった彼に、「仕込みiPhone」誕生秘話や“無意味”の“意味”、また、サブカルチャーの現在地についても聞いた。

「仕込みiPhone」は、ロバートデニーロ主演映画『タクシードライバー』から着想

 森翔太氏は1983年生まれの現在35歳。大学の就職課からの“圧”によりとりあえず就職して営業職に就くも、1年もたずに退職してニートとなり、やがて上京。下北沢の劇団に入団し、極貧生活を送りながら演劇活動を行うことになる。そして2011年に「仕込みiPhone」を開発。その紹介動画をYouTubeにアップしたところ、海外のテクノロジーメディアサイト『ギズモード』に紹介され、一躍話題に。このアイデアのきっかけとして「ロバート・デ・ニーロの映画『タクシードライバー』がある」と森氏は語る。

「私が所属していた劇団はコンテンポラリー的要素があり、用意された台本をただ演じるわけでなく、役者のアドリブなどの即興性や自発性が求められる劇団でした。やりたいことは個人で発案していく個人主義の場で、小道具が必要ならば自分で作らなければいけなかったのですが、その一環で、役者活動やイベントで使えるかも…と、打算的に開発したのが『仕込みiPhone』。好きだった映画『タクシードライバー』でデ・ニーロが仕込み銃を自作して自室でポージングを取るシーンを真似て作成しました」(森氏/以下同)

 森氏は当時、家賃2万円の四畳半のアパートで生活。極貧ゆえにパソコンもなく、インターネット環境はゼロ。その当時はiPhoneが世に広く浸透し始めた頃で、森氏は「今思えば、iPhoneを使用したのは、自身の置かれた劣悪な環境へのコンプレックスの象徴のようにも思えます。また、当時最先端のテクノロジーを、ローテクでアナログな“仕込み”で表現すれば、そのポージングの裏腹さからくるダサさも相まってボケとなり、周囲に笑いながらツッコんでもらえるかなと思い作成しました」と振り返る。

 だがこれが『ギズモード』に紹介されてからは環境が一変。文化庁メディア芸術祭「エンターテインメント部門」審査委員会推薦作品選出、アルス・エレクトロニカ「ネクストアイデア部門」では栄誉賞も受賞している。

ペットボトル女と旅に? 悟空が逮捕!? あからさまに意味を持たせることに照れ

 また、乃木坂46のショートムービーなど商業的な映像作品を制作するかたわら、ペットボトルを集めて作った等身大の女性型の人形・理沙子と旅をするロードムービー『PET Bottle Lover』シリーズや、人気アニメ『ドラゴンボール』の孫悟空が逮捕されたとの設定で作られたニュースのパロディ映像『孫悟空の押収物』など、次々と個人作品を発表。森氏は「『PET Bottle Lover』は人形を恋人にする物語を描く映画『ラースと、その彼女』と、ロードムービー『パリ、テキサス』をパロディ化した作品。『孫悟空の押収物』はエイプリルフールに向け、ニュース映像のパロディでフェイクニュースを作ろうと思って制作しました」と解説する。

「作品の意味・テーマは何ですかとよく尋ねられるのですがそれがとても苦手で。“感動させよう”とか“泣かせよう”という風に、あからさまに意味を持たせることに“照れ”があるんです。伝えたいことはあるが、表面に出ないように。テーマや語りたいことがないと、可能な限り思われたいのです」

 その背景として、物事に“意味”を付与することで本質が暴走して見えにくくなるとする『意味という病』(河出書房新社)などを著した文芸評論家・柄谷行人の影響も。知的でシュールな笑いを得意とする森氏、タモリや赤塚不二夫の「これでいいのだ」理論にも影響を受けているかと尋ねると、「すごい人の名前を言ってくれましたが」と笑いながら否定しつつも、「タモリさん仲間の筒井康隆さんには多大な影響を受けました」と明かす。

「登場人物が全員文房具の小説『虚航船団』(新潮社)や、主人公が、自分がこの小説の主人公だと自覚して物語るメタフィクション小説『虚人たち』(中央公論社)などが好き。ブラックで意味を感じさせず、ひねくれた表現で描かれた作品群をむさぼるように読んだ記憶があります。とくにメタ構造には強い影響を受けており、同時に昨今のSNSなどのネット文化は、そういった“メタ”なものが流行っているようにも感じるのです」

平成はメタやパロディが完成形を迎えた時代 令和は新たなフォーマットが?

「この数十年ですが、流行ったものはメタ的なものが多い。例えば、アニメ『ポプテピピック』はその象徴的なもの。メタ的作品は、すでにある物を茶化す意味合いもあると思うのですが、例えばテレビでもVTRをワイプで茶化している。私はその“ワイプ”的なものを“メタ”と考えており、それらが一般的になっていると見るのです」

 森氏から見ればYouTuberもメタ的。「ありのままの自分ではなく、日常という設定や視点を入れてフィクションをしている二重構造がメタ。こうしたYouTuberたちの動画が一般的になってきたこともメタ化への影響は大きい。またNHK『紅白歌合戦』をメインカルチャーだとすれば、そこへのカウンターカルチャー…“サブ”的なものが現在はメインとなっており、平成は、メタやパロディが“完成形”を迎えた時代のように思うのです」と分析する。

 では今後はどんな時代へ向かうのだろうか。森氏は「さらにそこへカウンターを撃ち込むカルチャーではなく、新しいカルチャーの“フォーマット”を作っていっているという肌感がある」と語る。

「例えば小嶋陽菜さんのYouTubeチャンネルのようにオシャレでシンプルな映像でやっているものもあり、既存のパロディや平成的なものはもういいだろうという時代に入っているような気がする。そういったオリジナルのフォーマットが昨今増えていて、私自身は『面白い時代になったぞ』と感じています。私も、やりたいことをどんどんやっていって、新たなフォーマットの発祥者になりたい。オリジナルのベース(基礎)が作れたらいいなと思う」

 そんな森氏は「すべってもいいからどんどんネットに自身の作品をアップすべき。私のように拾ってもらい、人生か変わるケースもある」と世の表現者の卵にエールを。森氏が今後、どのような新たなカルチャーのフォーマットを生み出していくのか、目が離せない。

(取材・文/衣輪晋一)
INFORMATION
■Twitter:@ShotaM0ri(外部サイト)
■公式サイト:「Shota Mori 森翔太 HP」(外部サイト)

森翔太氏作品

オリコンニュース公式SNS

Facebook、Twitterからもオリコンニュースの最新情報を受け取ることができます!