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2016-06-24

Netflixオリジナルドラマ『火花』の魅力を大解剖!
禍々しく輝く作品のチカラに迫る!!

Netflixオリジナルドラマ『火花』の魅力を大解剖!禍々しく輝く作品のチカラに迫る!!

人気お笑いコンビ・ピースの又吉直樹が厳しい芸人世界のリアルな裏側を禍々しくも美しく描き出す! そんな芥川賞受賞作が初映像化されたNetflixオリジナルドラマ『火花』を大解剖! 激アツライターのレビューとプロデューサーインタビューから、その作品的な魅力、物語が秘める誰もを惹きつけるチカラを掘り下げていく!! 全10話で濃密に描き出されるドラマならでの『火花』のおもしろさ、Netflixならではの映像美に注目!
“クリエイター・ファースト”で世界に向けて打ち上げた『火花』!

 2016年、またまた『火花』人気が再燃している。しかもそのステージは、日本だけではなく“世界”である。ご存知、又吉直樹の第153回芥川賞受賞小説だが、今度は動画ストリーミングサービスNetflixで全10話のオリジナルドラマとなり、世界190ヵ国で同時配信中だ。言わば、火花というよりも、世界に向けてドカーン!と大きな“花火”を打ち上げたというべきか。映像化については引く手あまただったに違いない黄金コンテンツ『火花』だが、映画でも地上波のドラマでもなく、なぜNetflixだったのか? 本作を手がけたYDクリエイション・山地克明プロデューサーにドラマ版『火花』誕生秘話を聞いた。

クリエイター主導で純度の高い『火花』が作れるのがNetflixだった
山地克明プロデューサー

――まず、映像化戦略として、Netflixさんを選ばれた最大の決め手はどんな点でしたか?
山地克明一番の決め手は、クリエイターのやりたいことを重視してくれるという“クリエイター・ファースト”という考え方ですね。それに加え、世界配信でのグローバル化と、弊社で2次コンテンツが展開できるという3つが揃っていたのがNetflixさんでした。一番初めにNetflix(代表取締役社長)のグレッグ・ピーターズさんと、弊社の経営陣がお会いした時、「又吉さんの好きにやってください」と言われたそうで、そこが大きかったです。必要以上の商業的な概念が入ってこないというのがありがたくて。実際に作るとなって、Netflixさんにもプロデューサーとして入っていただきましたが、最初に枠組みだけを入念に話し合い、その後、撮り始めてからは「好きにやってください」という感じでした。

――その枠組みというのは、具体的にどういうものですか?
山地まず、何話にして、尺は何分にするのかということです。1話ごとに山場をもってこなくて大丈夫か? とか、漫才が果たして英語で伝わるのかとか? という、プラットフォーム側の目線からいろいろと聞かれました。そこは、Netflixさんのこれまでの実績やデータがあるから、合わせて詰めていった感じです。

――総監督に廣木隆一監督を迎えられた理由についてもお聞きしたいです。
山地そこは、(統括プロデューサー)の古賀(俊輔)さんにお任せしました。10話ということで監督を分けないといけないから、最初にトーンマナーを決められて、あの人だったらみんながついていくという総監督なら廣木隆一さんだろうということで。

――まさに見事な総監督ぶりで、廣木監督が声をかけたという白石和彌監督、沖田修一監督、久万真路監督、毛利安孝監督も、廣木イズムを見事に受け継いでいて、各話とも見応えがありました。
山地実は、競争もあったみたいですよ。だんだん後半にいくにつれて、プレッシャーがかかっていったみたいで、めちゃくちゃ撮り直しも増えていきました(苦笑)。でも、それだけこだわっても大丈夫だったんです。その分の予算は頂戴していたので。そこも“クリエイター・ファースト”で、思う存分やってくださいという姿勢でした。だからみんな、現場がすごく楽しいと言っていて、キャストもスタッフも仲が良かったです。「打ち上げ、何回やるねん!」という感じでしたから(笑)。

厳しい芸人世界の後輩と先輩を演じた林遣都と波岡一喜。廣木隆一監督の世界観が現れる“引きの映像”も。
厳しい芸人世界の後輩と先輩を演じた林遣都と波岡一喜。廣木隆一監督の世界観が現れる“引きの映像”も。
林さんと波岡さんの漫才は、普通に(漫才グランプリで)準決勝に行けるレベル
売れないお笑いコンビ役を演じた林遣都と好井まさお(井下好井)
売れないお笑いコンビ役を演じた
林遣都と好井まさお(井下好井)
コンビ役を演じた波岡一喜と村田秀亮(とろサーモン)
コンビ役を演じた波岡一喜と
村田秀亮(とろサーモン)

――主演の林遣都さん、波岡一喜さんをはじめ、まさにキャストが適材適所でした!
山地通常、キャスティングについては、いろいろな縛りがあるものですが、『火花』に関してはひとつもなかったんです。たとえば普通に考えたら、弊社が「主役を芸人にしてください」と言ってもおかしくない。でも、今回はそういうものを取っ払い「監督が表現したいようにしてください」という流れでした。キャスティングや音楽、ロケ地もそう。ほぼ自主映画の意志判断に近かったかもしれないです。Netflixさんの窓口は僕でしたが、撮影中に「何かありますか?」と聞いても「できあがりを見せてくれればいいから」と言われるだけで。これで内容が悪かったら最悪ですよ。「ああ言われたから仕方なかったんです」といった言い訳が一切できないですから(苦笑)。

――キャストやスタッフの熱の空気感は、現場でも感じられましたか?
山地すごく伝わってきました。本当に自由で楽しい現場でしたから。正月にみんなが集まって、荒つなぎした1話を一緒に観たんです。そしたら、林さんがその時、20〜30分、すごいテンションでしゃべってましたね(笑)。波岡さんと一緒に、2人で40分くらい。林さん、普段はおしゃべりな方ではないと思うのですが、みんなに思いを伝えたかったみたいです。このドラマや、キャスト、スタッフ、この空気感が好きやと言われていて。すごく思い入れが強いんやなと感じました。

――後輩と先輩役の林さんと波岡さんは、実はプライベートでも同じような関係性だったとか。
山地そうなんですよ! クランクイン前に、キャストや監督とごはんを食べたんです。その時、同じテーブルにいた林さんのマネージャーさんから「実は、遣都が東京に初めて出てきた時、お世話になった兄貴分が波岡さんなんです」という話を聞きまして。「ええ!」とびっくりして。「それ、使えますやん。宣伝文句に」と言いました。その後、監督にそのことを伝えたら「えええ!!」ってなって(笑)。監督も知らなかったみたいです。だから、あの自然な感じは、お2人そのままなんです。

――順撮りしていくという贅沢な撮り方により、一層リアルなドラマが生まれましたね。
山地すごいことです。漫才がだんだん上手くなっていくんです。林さん、波岡さんたちの努力がすごすぎて、普通に(漫才グランプリで)準決勝に行けるレベルになってました。最後の単独ライブのシーンなんて、スタッフも全員泣いていたそうです。順撮りで本当に積み重ねて撮っているので、感無量やったみたいです。

プライベートでも役柄と同じような関係性だったという林遣都と波岡一喜
プライベートでも役柄と同じような関係性だったという林遣都と波岡一喜
日本発の“お笑い”が世界で通用するコンテンツであると証明できた

――日本独自の笑いの文化とも言える漫才が、海外でどう受け入れられたのかも気になるところです。英語字幕は、オーストラリア出身の芸人、チャド・マレーンさんがつけられたそうですが?
山地そうなんです。例えば、野良犬って言葉を訳す時は具体的な犬種を使うとか、そこの文化に根付いた訳し方をしてくれたみたいです。

――実際、配信後約2週間の『火花』の視聴者の半数が、海外の方だと聞いて驚きました。純日本産の漫才文化の広がりという意味でも、今後が楽しみですね。
山地国によって笑いは違いますけど、漫才はメイド・イン・ジャパンの文化ですよね。今回の『火花』で、漫才という2人がマイクの前で掛け合いする芸があるんだよと呈示できたことはすごく良かった。実際、外国人の方を招いた試写会では、大ウケしていたそうです。

――今後、日本の笑いを世界発信していくという意味でもNetflixで配信するということは意義がありますよね。
山地海外で漫才は無理やろと、今までは言われていたんですが、そうじゃなかった。そこが分かったことは大きいし、うちは漫才のコンテンツは何ぼでもありますからね(笑)。また、190ヵ国同時配信ということで、配信に合わせて海外でも書籍が販売されたそうで、いろんな広がりを見せてくれて、本当にうれしい。作品としての評価はもちろんですけど、日本発の“笑い”が世界に通用するコンテンツであると証明できたことが弊社にとって何よりも大きいと思いますね。

山地克明プロデューサー
(文:山崎伸子)

PROFILE
山地克明(やまじ かつあき)
株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー執行役員 マネジメントセンター センター長
コンテンツビジネス担当
株式会社YDクリエイション取締役

YDクリエイション:2015年10月設立、吉本興業株式会社と株式会社電通デジタル・ホールディングス出資による合弁会社。拡大する映像配信サービス等、コンテンツ・マーケットの多様化、グローバル化に対応したコンテンツ・プロデュース事業を行う。最初の製作作品であるNetflixオリジナルドラマ『火花』は、本年6月3日(金)より世界190ヵ国で配信開始された。

Netflixオリジナルドラマ「火花」

 売れない芸人の徳永は、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い強く惹かれ、「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌であり、人間味にも富んだ人物。「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、ふたりは頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を歩きまわりさまざまな人間と触れ合うのだったが、やがてふたりの歩む道は決定的に異なっていく。  徳永は少しずつ売れていき、その一方で神谷は少しずつ損なわれていくのだった。そんなある日、神谷は徳永をはじめ関わるすべての人々の前から借金を抱えたまま姿を消してしまう。神谷のいない日々を淡々と過ごす徳永。そして1年後、ふたりは再会するのだったが……。

キャスト:林遣都 波岡一喜
門脇麦/好井まさお(井下好井) 村田秀亮(とろサーモン) 菜葉菜 山本彩(NMB48/AKB48) 染谷将太
田口トモロヲ 小林薫
総監督:廣木隆一
監督:白石和彌 沖田修一 久万真路 毛利安孝
原作:又吉直樹著『火花』(文藝春秋 刊)
全10話(約450分)、Netflixにて独占配信中!
公式サイト http://hibana-netflix.jp/

Netflixにて独占配信中!

【Netflixについて】
 190以上の国で8100万人の会員が利用する、世界最大級のオンラインストリーミングサービス。オリジナルコンテンツのほか、ドキュメンタリー、長編映画など、1日1億2500万時間を超える映画やドラマを配信。メンバーは、 あらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけオンライン視聴可能。コマーシャルや契約期間の拘束はなく、思いのままに再生、一時停止、再開することができる。

© 2016YDクリエイション