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ORICON NEWS
椎名林檎『デビュー15周年イヤー完結!なぜ彼女は孤高で在り続けるのか!?』
デビュー当時から第一義にあった“作家業”――
5月27日。1998年に「幸福論」でメジャーデビューを果たしたこの記念すべき日に、椎名林檎は『逆輸入〜港湾局〜』をリリースする。これは彼女がこれまでPUFFY、SMAP、TOKIO、栗山千明、野田秀樹、真木よう子といった、名立たるアーティストたちへ提供してきた楽曲を、初めてセルフカバーしたアルバムである。ここには1998年、つまり椎名自身がデビューした年に広末涼子へ提供した「プライベイト」と、翌年にともさかりえへと提供した「カプチーノ」が収録されている。つまり自身がまだ新人だった頃に、当時の人気女優に楽曲を提供していたのだ。この事実だけでも、彼女の作家性がその登場から如何に破格だったのかが読み取れるだろう。
「仕掛け側としてのコネクションが欲しくて、オリジナル作品でデビューしてしまったものの、まあ何かと逃げ腰でしたし、まさか自作自演でここまで続けてこられるなんて、想像もしていませんでした」(椎名)
そもそも椎名はそのデビュー時から「作家としての楽曲見本」を目的のひとつに定めて、自作自演のオリジナル曲を発表してきた。一時は音楽表現へのピュアネスを守りたいという想いから活動を休止したこともあったが、結局彼女のそばにはいつも音楽があり、それと真摯に向き合ってきた。『逆輸入〜港湾局〜』は、言わばそんな歩みの証であり、彼女の高い音楽性を考察する上で欠かせないケーススタディでもある。
「そもそも提供曲とは、あくまで先様からのオーダーにお応えして、精一杯の支度を揃えてお渡しした、唯一のものです。でも本当にお客様からのご要望が多かったので、ライブのアンコールに、人気の高い曲を演奏するような、そんな感覚で、15周年リリースの締め括りにご用意させていただきました」(椎名)
彼女が孤高で在り続ける理由――
「一度は自分の手を離れた曲を歌うのですから、やはり私自身がドキドキするような、新しい要素が欲しいと思いました。そこで言わば私がJ-POPを教わった方々や、近年ご活躍の皆様のお力をお借りしたという次第です。自分の手では絶対に得られない、その方の肉体や頭脳や人生でなければ生まれ得ないサウンドのみをいただきたい。そんな期待を以て皆様にオファーいたしました」(椎名)
彼女の期待通り、このコンセプトは全ての曲にあらゆる音楽のフレーバーを内包させながら、絶大且つフレッシュなインパクトを弾き出し、2014年のオルタナティブなサウンドへと着地させた。しかもひとつの楽曲が一任されることで、アレンジャー各々の個性と才能までもが、確かな輪郭によって描き出されたのだ。この点から、椎名林檎にとって最強のプロデューサーとは、つまりは椎名林檎本人に他ならないという事実がよく分かる。何ともシンプルでストイックだが、しかし途方も無い回答ではないか。
「子供の頃に思い描いていたような無色透明な曲や、“女による女のための曲”が書けるようになってきたのかな、という手応えは、僅かながらですが感じ始めています」(椎名)
さらに作家業、自作自演の両面において、新たな金字塔を予感させる楽曲が生まれた。NHKサッカー放送テーマ曲「NIPPON」(6月11日発売)だ。
「日本人とは、いざという時に静謐(せいひつ)な“誇り”を見せる民族だと私は思います。その美徳を、3分間の日本語で互いにポーカーフェイスで目配せしながら確認できたら。ひたすらに“勝ちにしか行かない曲”を目指しました」(椎名)
華美で、キャッチーで、ポップスの目くるめく悦楽が襲ってくる『逆輸入〜港湾局〜』。人生のハレの日から必勝への想いを綴った「NIPPON」。どちらも豊潤なボキャブラリーとメロディーに溢れており、端的に言えば最高にクールでカッコいい。なぜカリスマが成立しづらい当世においてなおも椎名林檎は孤高の存在なのか。そしてなぜ彼女の音楽を欲する新たなリスナーが後を絶たないのか。この最新アルバムとシングルには、その理由と秘密が存分に詰まっているのである。
(文:内田正樹)
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