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注目市場「電子チケット」を切り拓くキーマンインタビュー「アイデア次第で多様なサービスや付加価値をプラスしていける」

 ファンクラブ事業などを展開するエムアップグループにおいて、電子チケット領域を担うことになったのが、新たに設立されたエンターテイメント・ミュージック・チケットガードだ。さらに、2020年4月に予定されるエムアップの持株会社化とグループ再編・統合に伴い、「Tixplus」へと商号を変更することもアナウンスされた。今後は株式上場も見据え、事業拡大をすすめていくという。電子チケット市場の今後を、どう捉えているのか。電子チケット事業に携わる代表取締役・池田宗多朗氏にうかがった。

音楽の電子チケットは前年比140%という高い伸び率で成長

――御社の取り組みを教えてください。

池田 専用アプリによる電子チケット発券などのサービスを展開しております。2008年よりコブクロのチケット不正転売対策や公式(チケット)トレードを開始し、様々なノウハウを蓄積してきました。

 電子チケットの発券は、年間200万枚以上と国内トップレベル。SMS認証や顔写真表示による電子チケット発券など、今や業界ではスタンダードになりつつある不正転売対策を先駆的に行ってまいりました。また弊社電子チケットアプリは、チケットを安心して譲渡できる「チケットトレード」と連携。出品されたチケットは、毎日抽選を行った上で譲渡がされます。2019年6月には、イープラス「スマチケ」で発券されるチケットも出品できるようになり利用拡大しています。

――現在の電子チケットを取り巻く状況を教えてください。現在の市場規模や、普及の手応えなどはいかがでしょうか。

池田 音楽ライブ市場では、ACPCさんの調査では、2018年度の時点で約4900万人近いお客様が会場に足を運んでいます。つまりチケット総量では5000万枚ほどが分母と考えることができる。我々の電子チケット取り扱い量も順調に増えてはいますが、年間で200万枚ほど。電子チケットを扱う他社さんを足し上げても、業界全体での推計で1000万枚ほどが電子チケットというのが現状です。まだ5分の1程度。音楽に限らず、会場があってチケットで入場するもの、スポーツやカンファレンスなど含めて考えると、まだまだ伸びていく余地がある市場であると考えています。実際、弊社では音楽の電子チケットにおいては前年比で140%という高い伸び率で成長し続けてはいます。

――チケット不正転売禁止法の施行は、追い風にはなっているという手応えでしょうか。

池田 はい。限られたチケットを業者が押さえて、高額な金額で不正転売し、不当な利益を得る行為が法律によって規制され、同時に公式のチケット二次流通の場をお客様に提供する旨が求められる中で、ご利用いただくアーティストさんは確実に増えています。

 一方で、チケット不正転売禁止法に基づく特定興行入場券の対象公演になっていない公演もまだ多かったりします。多くの公演で導入され一般のお客様への特定興行入場券の認知がより普及するよう、働きかけを行っていければと思っています。

公式トレードの場を整備することは、電子チケット普及の要のひとつ

  • 池田宗多朗氏 Tixplus(エンターテイメント・ミュージック・チケットガード) 代表取締役

    池田宗多朗氏 Tixplus(エンターテイメント・ミュージック・チケットガード) 代表取締役

―― 一方では、法律の施行により、行けなくなった場合のチケット二次流通サービスを各社さんがそれぞれに提供する中で、一般のお客様にとっては、主催者公式・公認の二次流通チケットの入手方法が多く分かりにくくなっている、という声もあります。

池田 我々が以前から手がけているチケットトレードというサービスでは、資本参加いただいてもいるイープラスさんとの連携が昨年スタートした効果もあり、前年比で168%の取扱量の増加につながっています。リセールのニーズは、音楽ライブでは全体の5〜10%は必ず発生するものという認識です。

「電子チケット」で発券されたものは、チケット二次流通では確実に正規のチケットを流通できたり、公演直前までサービス提供できたりとお客様にとってメリットが多く、安心安全でお客様が使いやすい公式チケットトレードの場を整備することは、電子チケット普及の要のひとつだと考えています。

もちろん、かなりの人的リソースも開発カロリーもかかります。チケット二次流通のフェア性を担保するため、先着販売でなく、出品されたチケットは毎日抽選して当選をだしています。ファンクラブ販売分は二次流通もファンクラブ会員に限定したり、ツアー単位で重複して複数公演に当選しないようにしたり、抽選といってもファンサービスをより公平に提供されたい事務所さんなどの要望があるケースもあります。

 他のチケット事業者さんで販売されたチケットの二次流通を弊社のトレードシステムで行った実績もありますので、すべてはお客様の利便性のアップのため二次流通のプラットフォームとして、各社のチケット事業者さんにもご利用いただけるようなサービスにしていくことを目標としています。

デジタルのカードコレクションを8つのプロ野球球団とB.LEAGUEに提供

  • 池田宗多朗氏 Tixplus(エンターテイメント・ミュージック・チケットガード) 代表取締役

    池田宗多朗氏 Tixplus(エンターテイメント・ミュージック・チケットガード) 代表取締役

――安心安全であること、トレードの利用も簡易であることに加えて、電子チケットならではの利点とはどのようなことがあるのでしょうか

池田 お客様の手元の端末に届ける、ということから、大きな拡張性を持っています。これは、ビジネスとしての可能性を秘めているということでもある。

 たとえば19年12月のUVERworldドーム公演では、電子チケット経由でのみ購入できる「メモコレ」という有料のデジタルコンテンツパックを販売しました。ライブ前にウェルカムメッセージ動画、当日のライブ写真やセットリスト、ライブ後にサンキューメッセージ音声など、もともとはファンクラブ向けのメモリアル特典コンテンツだったものを広く一般化した試みです。また、サイン入りTシャツのA賞からデジタル壁紙のD賞までが当たるかも、という「メモコレくじ」も搭載し、かなりの好評でした。

 物販と並びライブでの高揚感を新しい収益に結び付けるデジタル物販として、トータルの収益性を高めることのできる商品です。アイデア次第で、電子チケットを核に、多様なサービスや付加価値をプラスしていける。それが電子チケットの持つ大きなメリットのひとつです。

――ライブ当日を軸に、その前後の時間軸でもファンにストレートに接触できる導線としてのポテンシャルがとても高いと。

池田 スポーツ領域では、ベイスターズさん、ホークスさん、Bリーグさんには一部の電子チケットを通じて、そうしたマネタイズの可能性を実感いただいていると思います。

 また、ソリューションのひとつとして、デジタルのカードコレクションを現在ではプロ野球8球団とB.LEAGUEにご提供しているのですが、実際の試合内容に連動して、カードゲームに反映する仕組みなどを導入しています。これは事前にセレクトした選手がヒットを打ったらポイントが倍になるとか、そういう意味でライブ性のあるコンテンツになっています。12球団を駆使して戦うといったゲーム性ではなく、応援する球団や選手が活躍することでファンを楽しませる。そこでは、熱心なファンであることが重要で、偏愛性をいかに満足させるかがカギになってきます。

 もちろん、カードコレクションの仕組みは電子チケット入場とも連携できる仕様を備えていますので、さらなる導入事例の呼び水にもなれば、とも考えています。

グループ内のファンクラブ事業が強力な機能のひとつになる

  • エムアップホールディングス

    エムアップホールディングス

――いったん分離されはしましたが、4月以降のグループ再編では、ファンクラブ事業とのシナジーも生まれてきそうでしょうか。

池田 さらなる電子チケット普及に向けて、電子チケットを核にしたソリューションや周辺ビジネスの拡充によって、その価値を高める作業を愚直に進めます。そこではもちろん、グループ内のファンクラブ事業が強力な機能のひとつになってくると思います。グループ内で、どちらもやっているから可能になることはたくさんある。VR事業など、他の領域との相乗効果も生まれてくる可能性は大いにあります。

 昨年末、乃木坂46ファン向けのコンシェルジュアプリとして『いつも乃木坂46』がサービス開始しています。推しアイドルのアバターが自分の端末にいて、ライブ情報なども含めて、Googleカレンダーと連動してお知らせしてくれたり、疑似的な会話をしたりといった、便利かつ新しい楽しさを提供するサービスです。

 このようにAIを活用して、好きなアーティストや選手と疑似的なコミュニケーションが取れるアプリも展開しはじめています。こうしたアプリも、お客様の端末に常駐する電子チケット的なコアに見立てて、さらなる周辺サービス開発なども展開できるはずだと考えています。

――ちなみに、池田さんご自身は、プライベートではどのような音楽を聴かれるのですか。

池田 ブラック・ミュージック全般ですね。ちょっとそれこそ偏愛がある(笑)。ソウル、R&B、ヒップホップなどのアナログレコード収集していた時期があって。妻に怒られるのでかなり減らして、今は2000枚くらいでどうにか踏みとどまっています。ですから、いち音楽ファンとしても、健全に音楽業界全体が推移していけるよう、電子チケットというツールをどんどん活用してほしいと強く願っています。

提供元: コンフィデンス

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