TUBE・春畑道哉、ソロでの貪欲な音楽への追求を語る 「自分の音楽が続いていけばいいな」
オーケストラの表現力の豊かさに刺激を受けた新作
春畑 はっきりとは決めてなかったのですが、制作の途中で気付いたことがあって。去年、『ライブ・イマージュ』に初めて出演させていただいて、オーケストラの表現力の豊かさにすごく刺激を受けました。僕自身も影響を受けたし、今回は“いつか自分の曲でオーケストラと共演したい”と思って作った曲もあって。「東京classical」「花鳥風月」「Continue(feat.宮本笑里)」などがそうですね。アレンジも、そのままオーケストラに置き換えられるようにしています。
――「Continue」は、ヴァイオリニストの宮本笑里さんが参加しています。
春畑 アルバムの曲作りをしていた時期に、宮本さんのアルバムをよく聴かせてもらっていました。低音弦の豊かな響きが印象的だったし、“この深くてふくよかな音を自分の曲にも入れたい”とお願いしたら、心よく引き受けていただいて。レコーディングの演奏も素晴らしかったですね。実は僕もバイオリンを弾いたことがあるんですよ。TUBEのツアーで「メンバーそれぞれ、意外な楽器を演奏するコーナーを作ろう」ということになって、武部聡志さんに「バイオリンやってみたら」と勧められて。もちろん上手くはないのですが、実際に弾いてみたことで、演奏者のことを考えながらストリングスのアレンジができるようになったと思います。
――「花鳥風月」はクラシックと和の要素が混ざってますね。
春畑 『じょんのび日本遺産』のエンディングテーマ曲なんですが、制作の前に日本遺産のいろいろな映像を観させてもらったんです。あと、TUBEのツアーの時も、メンバーと一緒にお城などを観に行く機会があって。以前はそんなことしてなかったのですが(笑)、日本の歴史や風景に興味が湧いて。そこにクラシックの雰囲気を融合させてできたのが、「花鳥風月」なんです。
――根本要さん(Stardust Revue)とのコラボレーションによる「Every day is a new day」も印象的でした。
春畑 要さんのステージは以前から観させてもらってたのですが、仲良くしてもらうようになったのは2年くらい前から。前作『Play the Life』を出したときに、要さんのラジオ番組に出演させてもらったのがきっかけで、いろんなライブに誘っていただくようになって。たとえばOz Noyもそう。要さんは彼のことを“変態ギタリスト”と呼んでたのですが(笑)、本当に変態と言いますか、観たこともないようなエフェクターの使い方をしていて、演奏もすごく良くて。そうやって知らない世界を教わってきたのですが、「Every day is a new day」ができた時に、これはぜひ要さんに歌ってほしいなと。当日も「ここはギターのフレーズに合わせてフェイクしたい」「このメロディーを崩していい?」「ここはコーラスを重ねたい」といろいろなアイデアをもらって。ミュージシャンとしての経験値も高いし、曲を育てていただきました。
自分の音楽が続いていけばいいな
春畑 古くからの友人の息子がプロボクサーとしてデビューすることになって、応援ソングを作りたいと思い制作しました。沖縄のボクサーなので、三線を入れたり、沖縄のテイストも取り入れています。前田にはサビのパートで歌ってもらったのですが、鼓舞する力が倍増しましたね。
――叙情的で切ない雰囲気の「空」はギターではなく、ピアノをメインにした楽曲ですね。
春畑 ソロアルバムのたびにピアノの小曲を収録しているんです。トイプードルと15年ほど一緒に暮らしていて、以前からお医者さんに「そろそろ覚悟してください」と言われていたんです。ちょうどアルバムの曲作りの時期にお別れをして、そのときに目にした空の色が印象に残っていて。そのときに感じたことが「空」のメロディーにも反映されていると思います。
――アルバムの楽曲をライブで聴けるのも楽しみです。
春畑 昨年末のソロライブでも、発売前の楽曲を演奏しました。お客さんは知らない曲だけど、やっぱり演奏してみたいし、ステージで披露することで曲も成長していくので。プレイヤーの皆さんに演奏してほしいという気持ちもあります。初回限定盤にソロライブの映像を収録しているのですが、マルチアングルでギターの手元だけの映像もあるんですよ。
――『Continue』というタイトルについては?
春畑 楽曲には“大切な日本遺産を残していきたい”という気持ちを込めているのですが、アルバムのタイトルに関しては“自分の音楽が続いていけばいいな”という思いもあります。『ライブ・イマージュ』もそうだし、映画やドラマ、CMなど、いろいろな出会いのなかで曲を作らせてもらっているし、それが続けばいいなと。お題といいますか、アイデアやイメージをいただくのも好きなんですね。この前も「スリリングなリフから始まって、キャッチーなメロディーで、未来に向かって進めるような曲を20秒でまとめてください」と言われました(笑)。それを聞いて“楽しそう”と思って。インストには言葉がないぶん、いろいろなシチュエーションにはまりますからね。
――最後にTUBEについて。2020年に35周年を迎えますが、そのことについてメンバーの皆さんと話していますか?
春畑 話しています。ただ、TUBEはあまり先のことまで考えないバンドなんです。1月にメンバーと集まって「今年のツアーはどうする?」といった話をすることもあるし(笑)、今も5月のツアー『TUBE LIVE AROUND 2019』のことに意識が向いています。その先のことまでは、まだわからないのですが、いろいろと考えたいですね。
(文/森朋之)