Shuta Sueyoshi、作品作りを支える独自の“アンテナ”
仮面ライダーファンの心を掴むこだわりの歌詞
Shuta Sueyoshi ずいぶんと昔のことですが、ダンスイベントによく行っていた頃に、あるクラブイベントにISSAさんとKENさんがスペシャルゲストで出演していました。その時に、少しお話をさせていただいたり、イベントなどでのバックステージでご挨拶をさせていただいたりすることはありましたが、プライベートの交流はほとんどなかったのが正直なところです。2018年の『a-nation』で出演が同じ日になってお話させていただいたのですが、今回のコラボを快く引き受けてくださったんだなという印象でした。
お互いのスケジュールの都合もあり、レコーディングとミュージックビデオ(MV)撮影は別々で行ったが、そんなことを一切感じさせない楽曲とMVの仕上がりは、コンセプトが明確であればこそだ。作詞はShutaと、前作『JACK IN THE BOX』で「Switch」や「to.ri.ca.go」などの作詞を手がけた溝口貴紀氏で共作し、『仮面ライダー』のファンの心を捕らえて離さない仕掛けがたくさん施されている。
Shuta Sueyoshi 『仮面ライダー ジオウ』の観どころのひとつは、過去のライダーの力を借りて一緒に戦うところです。そこは視聴者にとって魅力的なポイントだと思ったので、その部分を意識して制作しました。歌詞には、『平成ライダー』たちを想像させる言葉も散りばめているので、「ここがそうかな」とか、想像してもらえたら嬉しいですね。そういうギミックは僕自身大好きだし、仮面ライダーのファンの方にも楽しんでいただけるんじゃないかなって思います。
『仮面ライダー』シリーズは毎回グッズも好評で、現在は“ライドウォッチ”が人気。「Over“Quartzer”」のCDにライドウォッチが付属した形態も1月23日に発売される。子どもと大人の両方を取り込む仕掛けも本作ならではだ。
Shuta Sueyoshi 僕が子どもの頃にあったら、きっとすごく興奮したと思います。今は大人もフィギュアなど、趣味として楽しむ傾向にありますよね。そうやって世代を越えているところは、自分も見習いたいところです。僕のライブも、そうやって性別や年齢関係なく世代を越えて楽しんでもらえるものにしたいと思っています。
ソロではライブを見据えた曲作りを
Shuta Sueyoshi いつも、MVや楽曲が手元に届いたときに、その方がどういった反応をするのか直で見てみたいなと思っています。歌詞でも、あえて正解を断言していない部分もあり、聴いてくれた方にいろいろと想像して楽しんで欲しいと思っています。そういうギミックは、どの曲にも仕掛けていますね。
本来は、内に秘めた想いやちょっとネガティブな心境を描いた歌詞が得意と言うShutaだが、「I’M YOUR OWNER」では、大人の恋の駆け引きをテーマに作詞をしている。また、中毒性のある「HACK」では、ユーモアたっぷりの歌詞を早口でたたみかけるように歌い、「Paradise」ではライブで盛り上がっている姿が想像できる。本作は、2月より開催のツアー『Shuta Sueyoshi LIVE TOUR 2019 -WONDER HACK-』を見越して制作したとのこと。
Shuta Sueyoshi ぶっちゃけライブを見据えた作り方のほうが、効率的だと個人的に思っていますし、実際にライブをやっているので、そういう作り方になるのは必然なのかなって思います。当初の収録数は5曲という話しだったのですが、それでは僕がイメージしているステージを行うには足りないと思ったので、インストも含めて8曲にさせてもらいました。「Over“Quartzer”」と並行しての制作だったので、時間的にもギリギリでしたけど、間に合って良かったです。
ものづくりをする上で、常にアンテナを張ることが大事
Shuta Sueyoshi 前回はZeppツアーだったんですけど、ステージセットの量が多くて『Zeppに持ち込む数じゃないよね』って言われました(笑)。グループでは大きな会場でやらせてもらっていますけど、ソロはソロだと思うので、自分的には初心に帰って、一から段階を踏んで着実にステップアップしていきたいと思ったんです。そのほうが性に合っているし、原点に戻ることで見えた景色がありました。いろいろな会場を経験することで、こういう会場の広さならこういうことができるとか、逆にこういうことはできなさそうだから代わりにこれをやったら面白いとか、そういう進め方ができる。常に自分のライブでしか見られないものを形にしていきたいと思っています。
こうした作品作りやライブ演出には、“常にアンテナを張ること”が大事だと言う。それは音楽に限らず、世の中の情報をいち早くキャッチし、需要に対して先手を打つことも時に必要なこと。彼ならではのオリジナリティ溢れる作品は、そうした世間のザワつきを敏感に察知することで生まれるようだ。
Shuta Sueyoshi 日本人は、新しいもの好きなところがあると思います。世の中の人が興味を持っているものや新しいものを知っておくことは、ビジネスとしても必要なことです。一見音楽とは関係ないものであったとしても、ものづくりをする上でのひとつの糧になります。アンテナでキャッチしたものを考察して、今後需要があるのは何かを導き出したり、波を読んだりする。僕は常にそうやって、次に何が求められているのかを考えながら制作しています」
本作のジャケットやミュージックビデオなどからも、そのこだわりとクリエイティブな一面が、存分に楽しめるものとなっている。
(文:榑林史章/写真:西岡義弘)