母親の共感を呼ぶ『コウノドリ』主題歌 ベールに包まれた新世代シンガー・Uru
ドラマの世界観にマッチした歌声で、子育て世代の女性からの支持と共感が急上昇
そのドラマへの注目度と共に、主題歌「奇蹟」を歌うUruへの支持も、女性を中心に広がっている。同曲は、Uruが同ドラマのために歌詞を書き下ろしたバラード。ツイッターでも、年齢性別は不明ながら「Uruさんの「奇蹟」を何回も聴いてる。透き通るような歌声に心が浄化される。ちょっとイライラしたり不安定な時に聴くとスーっと負の感情がおさまるような。神々しくて『コウノドリ』の世界観にピッタリ」、「コウノドリって役者もストーリーも、もちろん素晴らしいけど、絶妙なタイミングで流れてくるピアノとUruが歌う主題歌に毎回やられる」など、ドラマの世界観と主題歌の絶妙なマッチングを賞賛する声が多く上がっている。なかには「おじいちゃん家でコウノドリ観てきたんだけど、やっぱり名作。泣いちゃう……そして母さんがUru さんに落ちた」と、家族の情景が浮かんでくるような微笑ましいツイートもあった。
そこで雑誌『コンフィデンス』では、10代〜50代の女性を対象に、Uruの認知度調査を実施。その結果から、10代が5%、20代が25%、30代が29%、40代が24%、50代が17%と、20代〜40代の女性中心に認知度が広がっていることがわかった。特に、「『コウノドリ』の主題歌を聴いた時に歌っているアーティストに興味を持ち、自分でインターネット等で調べて知った」(30代/東京都)、「『コウノドリ』のドラマで聴いて初めて知りました。きれいな声の方だなと思いました」(40代/岡山県)など、『コウノドリ』をきっかけにUruを知ったという回答も多く、同ドラマの影響の大きさが伺えた。
YouTubeで披露したカバー曲をきっかけにデビュー
さらにさかのぼると、Uruが最初に注目されたのはYouTubeチャンネルで公開のカバー動画だ。2013年より活動をスタートし、歌唱はもちろん、演奏、アレンジ、プログラミング、動画撮影や編集まですべて自分で行った100本もの動画を公開してきた。デビュー前からチャンネル登録者数は14万人を超えており、積極的なYouTubeユーザーの中にはその歌声に魅せられていた人も多く、俳優・小日向文世が2014年11月28日放送のNHK『あさイチ』で、「毎晩、聴いて癒されている」と公言したこともあったほど。カバーした楽曲は中島みゆきの「糸」や、尾崎豊の「Oh My Little Girl」、UVERworldの「THE OVER」といった新旧の名曲の数々で、その普遍性のある選曲が年齢性別を問わず愛聴されてきた。そうした動画が音楽関係者の目に止まり、デビューにも至っている。
メディアへの顔出しはいつ? 歌声だけでファンをつかんできた純正シンガー
YouTubeで動画をアップしてきたものの、素顔はほとんど明かしておらず、本名や年齢も謎に包まれている。デビュー以降もメディアへの”顔出し”の露出はない。いわば歌声だけで支持を広げてきた、純正のシンガーと言える存在だ。そうした神秘性も相まって、過去6回のライブのチケットは、すべて即日完売。アーティストカラーが下手についていないため、良い意味で視聴者にもその歌声が届いているのだろう。12月20日発売の1stアルバム『モノクローム』には、「奇蹟」以外にも子育て世代には家族への感謝を綴った「娘より」や子供の成長を描いた「すなお」といった楽曲が収録されている。これらの楽曲も『コウノドリ』を通してUruのファンになった人にも、すんなりと入っていくだろう。これまでもドラマ主題歌を通して国民的な歌姫が誕生してきたが、時代を象徴する新たな歌姫となりうるUruの動向に、今後も注視していきたい。
(文:児玉澄子)