母親の共感を呼ぶ『コウノドリ』主題歌 ベールに包まれた新世代シンガー・Uru

 前作に続き最高視聴率13.6%と人気を博しているTBS系ドラマ『コウノドリ』。ドラマのヒューマンなテーマ設定や、リアルな出産現場を描いた同作は、特に出産経験のある女性たちの共感を得ている。その一方で、Twitterでも「涙がとまらない」「ストーリーも素晴らしいけど、主題歌に毎回やられる」など、ドラマの世界観とリンクした女性シンガー・ソングライターのUruが歌う主題歌「奇蹟」にも、20代〜40代の女性を中心に注目が集まっている。デビュー以降、メディアへの“顔出し”をしていないUruとは、いったいどんなアーティストなのだろうか。

ドラマの世界観にマッチした歌声で、子育て世代の女性からの支持と共感が急上昇

 現在放送中のドラマ『コウノドリ』は、綾野剛を主演に、産科医療の現場で懸命に戦う医療者たちの群像を描いたドラマだ。実際の病院での取材をもとにしたリアルかつ丁寧な描写が大きな反響を呼んでいる。命を授かる喜びだけなく、妊娠・出産を通した苦悩や悲しい現実にも真摯に向き合ったその内容に、現代を生きる子育て世代からの共感と支持が特に高い。

そのドラマへの注目度と共に、主題歌「奇蹟」を歌うUruへの支持も、女性を中心に広がっている。同曲は、Uruが同ドラマのために歌詞を書き下ろしたバラード。ツイッターでも、年齢性別は不明ながら「Uruさんの「奇蹟」を何回も聴いてる。透き通るような歌声に心が浄化される。ちょっとイライラしたり不安定な時に聴くとスーっと負の感情がおさまるような。神々しくて『コウノドリ』の世界観にピッタリ」、「コウノドリって役者もストーリーも、もちろん素晴らしいけど、絶妙なタイミングで流れてくるピアノとUruが歌う主題歌に毎回やられる」など、ドラマの世界観と主題歌の絶妙なマッチングを賞賛する声が多く上がっている。なかには「おじいちゃん家でコウノドリ観てきたんだけど、やっぱり名作。泣いちゃう……そして母さんがUru さんに落ちた」と、家族の情景が浮かんでくるような微笑ましいツイートもあった。

そこで雑誌『コンフィデンス』では、10代〜50代の女性を対象に、Uruの認知度調査を実施。その結果から、10代が5%、20代が25%、30代が29%、40代が24%、50代が17%と、20代〜40代の女性中心に認知度が広がっていることがわかった。特に、「『コウノドリ』の主題歌を聴いた時に歌っているアーティストに興味を持ち、自分でインターネット等で調べて知った」(30代/東京都)、「『コウノドリ』のドラマで聴いて初めて知りました。きれいな声の方だなと思いました」(40代/岡山県)など、『コウノドリ』をきっかけにUruを知ったという回答も多く、同ドラマの影響の大きさが伺えた。

YouTubeで披露したカバー曲をきっかけにデビュー

 そもそもUruは映像作品との相性がいいシンガーで、昨年6月のメジャーデビュー以来、ドラマや映画、CMのタイアップに数多く起用されている。昨年10月リリースの3rdシングル『フリージア』はアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期エンディングテーマに起用され、一躍アニメファンに知れ渡った。

 さらにさかのぼると、Uruが最初に注目されたのはYouTubeチャンネルで公開のカバー動画だ。2013年より活動をスタートし、歌唱はもちろん、演奏、アレンジ、プログラミング、動画撮影や編集まですべて自分で行った100本もの動画を公開してきた。デビュー前からチャンネル登録者数は14万人を超えており、積極的なYouTubeユーザーの中にはその歌声に魅せられていた人も多く、俳優・小日向文世が2014年11月28日放送のNHK『あさイチ』で、「毎晩、聴いて癒されている」と公言したこともあったほど。カバーした楽曲は中島みゆきの「糸」や、尾崎豊の「Oh My Little Girl」、UVERworldの「THE OVER」といった新旧の名曲の数々で、その普遍性のある選曲が年齢性別を問わず愛聴されてきた。そうした動画が音楽関係者の目に止まり、デビューにも至っている。

メディアへの顔出しはいつ? 歌声だけでファンをつかんできた純正シンガー

 Uruの魅力は何と言ってもその歌声で、調査結果からも「心が落ち着くような癒しの歌声だと思います」(30代/福岡県)、「透き通った柔らかな歌声」(20代/香川県)との声が多く集まった。また、「赤ちゃんの誕生は奇跡であると言うことや、子供に対する深く強い愛情を感じられる」(50代/東京都)、「ドラマの内容に合わせて、エンディングで切ない気持ちになり涙を流しながら聴いたり、逆に暖かい気持になれたりもする」(50代/富山県)、「お母さんのおなかにいる赤ちゃんの奇跡的な雰囲気が伝わってくる」(40代/神奈川県)と母親世代も、その歌声に深く心を寄せている。そうした彼女の歌声が「命が生まれる奇蹟」を描く『コウノドリ』と絶妙にリンクしたことで、20〜40代女性からの支持と共感の拡大にも繋がったようだ。

 YouTubeで動画をアップしてきたものの、素顔はほとんど明かしておらず、本名や年齢も謎に包まれている。デビュー以降もメディアへの”顔出し”の露出はない。いわば歌声だけで支持を広げてきた、純正のシンガーと言える存在だ。そうした神秘性も相まって、過去6回のライブのチケットは、すべて即日完売。アーティストカラーが下手についていないため、良い意味で視聴者にもその歌声が届いているのだろう。12月20日発売の1stアルバム『モノクローム』には、「奇蹟」以外にも子育て世代には家族への感謝を綴った「娘より」や子供の成長を描いた「すなお」といった楽曲が収録されている。これらの楽曲も『コウノドリ』を通してUruのファンになった人にも、すんなりと入っていくだろう。これまでもドラマ主題歌を通して国民的な歌姫が誕生してきたが、時代を象徴する新たな歌姫となりうるUruの動向に、今後も注視していきたい。

(文:児玉澄子)

提供元: コンフィデンス

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