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「ECと物流を再定義したい」 AIで配送を効率化するITベンチャーの野望

左からスタークスのCSクラウド事業部システムディレクター渡邉和人さん、上ノ山慎哉代表取締役

「ECと物流の在り方を再定義したい」――こう話すのは、2012年に設立されたITベンチャー企業スタークス(東京都品川区)の上ノ山慎哉代表取締役だ。物流業界はアナログな風習が多く残っており、ITで変革を起こす余地が大きいという。

EC産業は成長を続ける一方で、物流業界は配送会社をはじめ、人手不足が深刻だ。物流拠点(倉庫)など現場にもよく顔を出すという上ノ山さんは「現場スタッフは紙でメモを取ったり、配送会社はFAXでやりとりしたりと、業界全体がアナログなオペレーション。こうした事態を変えるには業界内の連携や大規模投資が必要だが、それもなかなか難しいのが実情だ」と説明する。

こうした課題を解決するため、同社は配送を効率化するクラウド発送代行サービス「クラウドロジ」を提供。クラウドロジは、入庫や在庫管理、梱包・出荷、履歴確認といった一連のEC物流業務をアウトソーシングできるクラウドサービス。配送1件ごとに企業から手数料を取るビジネスモデルで、ECのノウハウや人手を必要とする中小の通販企業が主に利用しているという。

導入企業は、Web上でクラウドロジのツールを利用し、入庫作業や在庫管理などを操作。管理者のスタークスが各企業へのサポートやフィードバックも行うという。煩雑な物流業務をアウトソースできる他、紙でメモを取るといった手作業をIT化することで人的ミスや誤配送などを防ぐ。同社によると、ミスの発生率は業界平均の6分の1まで減らせたという。

●AIで需要予測、限られたリソースを活用

ECサイトでの商品購入者の需要予測にはAI(人工知能)を活用している。「この地域ではこの商品がよく売れる」「このお客さんは過去にサプリメントを買ったので健康に関心があるはず。同じサプリか、類似のヘルスケア商品を買うかもしれない」といった需要を予測。日本国内に14拠点ある倉庫と提携し、AIの予測を基に商品を各倉庫にストック・配送している。

拠点を分散させることで、1つの倉庫では入りきらない量の商品を分散してストックできる他、商品を購入者のもとへ最短距離で配送できるメリットがある。効率の良い配送ルートを選ぶことで、配送費を8〜9%削減した企業もあるという。

クラウドロジを利用する企業の中でも、ヘルスケアやコスメ、日用品などの消費財は比較的需要を予測しやすいとしている。AIは主に過去の購買情報を基に需要予測をするため、リピート率の高いサプリや化粧品などは相性が良い。一方で、アパレルなどシーズンやトレンドといった変数の多い商品は予測が難しいという。

現時点での予測の精度は80%ほどで、目標は90%。クラウドロジ事業部システムディレクターの渡邉和人さんは「今の顧客はEC立ち上げ段階の企業が多いので、今後購買データを蓄積したり、類似商品のデータを集めたりして精度を上げていきたい」と話す。

経済産業省の発表では、17年の国内EC市場規模はB2Cに限っても16.5兆円で、年々拡大している。上ノ山さんは「消費者の利便性を追求した結果、配送会社などにしわ寄せが来て配送費が上がるなどしている。通販企業、配送会社、倉庫会社などプレイヤーが多いため、個々最適になるとどこかにしわ寄せがきて、結果として全体のバランスが崩れてしまう」と業界の問題を語る。

こうした課題を前に、広範囲をカバーする配送代行サービスで立ち向かうスタークス。企業が販売活動に専念できるよう、AIの精度向上や利便性を意識したアップデートなどを視野に入れている。

渡邉さんは「(物流アウトソーシングなど)部分的に見れば類似サービスもあるが、当社ではサプライチェーン全体を見ていきたいと思っている。それはとても大変なことなので、そこまでやろうとしている企業はなかなかないはず」と話す。同社は、物流全体をAIやITの力で変えていく考えだ。

上ノ山さんは「今後はソフトウェアとハードウェア両面での開発を進めたい。需要予測データを配送会社と共有すれば繁忙期とそうじゃない時期が分かり、人の手配もしやすいだろう。画像認識による検品や自動梱包(こんぽう)など倉庫内のロボット化も実現したい」と展望を語った。

提供元:ITmedia NEWS

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