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政府答弁「裁量労働制は最低賃金でも適用可」、働きすぎで最低賃金割れしても合法?

首相官邸【TK_Garnett / PIXTA(ピクスタ)】

政府は2月6日の閣議で、裁量労働制について「契約社員や最低賃金で働く労働者にも適用が可能だ」とする答弁書を決定した。ネットユーザーからは、「裁量労働制は闇」「いくら何でもこれはヤバい」などと恐れおののく声が多く上がっている。

裁量労働制は、あらかじめ労使で決めた時間分だけ働いたと「みなす」制度。「働き方改革」の一環として、政府が対象の拡大を目指している。

運用の理想的な姿は、労働者が自分で決めたペースで仕事を進められ、出社・退社時間も自由になるなどというもの。しかし、現実は長時間労働を助長する方に進むことが危惧されている。

●最低賃金で裁量労働制「法的には可能。裁判になると実態的に違反の可能性高い」

「最低賃金で裁量労働制ができるとすると、みなし時間よりも長く働いた場合、実質的には最低賃金割れが生じるのだが、それも合法になるのだろうか?」(twitterより)

こんな疑問を投げかけるのは、ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士だ。

「法的には『みなし』なので最低賃金違反にはならないだろう。しかし、現実問題として、最低賃金で働く人に裁量があるとは考えづらい。裁判などになれば、裁量労働制の運用が不適切と認められ、さかのぼって違反になる可能性が高い」(佐々木弁護士)

本来適用できないのに、裁量労働になっている労働者は少なくない。裁量労働制の適用に当たっては、労基署に書類を提出しなくてはならないが、現実にはチェック機能がうまく働いているとは言い難い。

たとえば、2017年夏に裁量労働制の不適切な運用で是正勧告を受けたゲーム開発会社のケース。弁護士ドットコムニュースの取材に対し、所轄の労基署は「提出書類に虚偽の内容などを書かれると(弾くのは)難しい」と実情を明かしている。

●「みなし」だから労働時間管理がおろそかになるケースも

裁量労働制を適用した場合、「みなし」だからと労働時間の管理がおろそかになることもある。前述の最低賃金違反にしても、何時間働いたかが分からなければ、立証が困難だ。

「本来、裁量労働制でも労働時間の管理をしなくてはいけないが、裁量だからということで、しない使用者がたくさんいる。すると、労働者がどんなに長く働いていても分からないし、過労で亡くなっても労働者側が立証できない」

佐々木弁護士は、現在の労働法規でも労働者に有利な制度設計はできるとして、裁量労働制の拡大は残業代の抑制など、使用者側にとって都合が良いことを指摘している。

「みなす時間を8時間としよう。この場合、4時間働いても8時間分の賃金がもらえる。ただ、これは裁量労働制の対象ではない労働者にそのような扱いをしてもOK。しかし、15時間働いたのに8時間とみなすことは裁量労働制ではないと違法。つまりは、そういうことなのである」(twitterより)

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
佐々木 亮(ささき・りょう)弁護士
東京都立大学法学部法律学科卒。司法修習第56期。2003年弁護士登録。東京弁護士会所属。東京弁護士会労働法制特別委員会に所属するなど、労働問題に強い。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor

提供元:弁護士ドットコムニュース

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