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(更新: ORICON NEWS

前田敦子&山下敦弘監督 時間がないなかのユルイ緊張感……

食べる、寝る、マンガを読む……という毎日を送るタマ子の日常を、ゆるく温かく、そして優しく表現した映画『もらとりあむタマ子』。山下敦弘監督と前田敦子が、『苦役列車』以来のタッグを組みました! そこで描かれるのは、柔らかい日差しと何気ない日常のなかで、少しずつ変わっていく、どこにでもいそうだけどちょっと気になるリアルな女の子の姿――。

ボ〜ッとしているか怒っているか…[前田敦子]

――『もらとりあむタマ子』を観て、大学生の頃を思い出しました。大学の夏休みはタマ子みたいな生活していたなぁと。今でも実家に帰るとあんな感じですけど……。
山下(笑)はいはい。よくわかります。
前田私はまさかこれが映画になるとは思っていなかったので、最初は映画として観られなかったんですよね。
山下そうなんですよ。最初はCS音楽チャンネル『MUSIC ON! TV(エムオン!)』のステーションIDということでスタートしたので。現場では、バタバタしたなかで短編を撮り、そんななかで映画にしようかという話になってきました。なので、僕と向井康介(脚本)のあいだでは、「いや、これは映画にならないでしょ」みたいな感じだったんですよね。そのつもりで作っていないから。なので最後の仕上げをするまで、これ映画なのかな? みたいな感じだったんです(笑)。そこから音と主題歌をつけたときに形になったなとは思ったんですけど、作り手としては短編を季節ごとに作った感じですね。

――ということは“残念な主役”を撮ることに定評のある山下監督が、なにか意図があってタマ子役に前田さんを起用したというワケではないと?
山下『苦役列車』のあと、あっちゃんとまたなにかやろうという話になったときに、漠然と、東京の大学に行っている女の子が夏休みに実家に帰ってきてなにもやることがないみたいなシチュエーションが合うなと思ったんですよ。最初はそういう企画で、夏休みにヒマしているタマ子の周りに近所の小学生が集まってきて、だんだん子分みたいになってきて……(笑)という話をなんとなく考えていました。
前田あ、最初にそう言われたのを思い出しました(笑)。
山下そこからいろいろと冒険に出たりしたらおもしろいかな? というところから始まっているんです。
前田全然違くなりましたね。
山下そうだね(笑)。大学を卒業して働かないダメな子になってしまいましたね。

――小学生ではなく、中学生を子分のように扱ってはいましたけどね。
山下(笑)それは最初の構想の名残りなんです。

――タマ子役には抵抗なく入れましたか?
前田最初はなにをどうすればタマ子なのかまったくわからなかったんです。最初の秋、冬編はこれでもか! ってくらいにしゃべらないですし、ボ〜ッとしているかちょっと怒っているかくらいだったので。

――あっちゃん自身とかけ離れている?
前田うーん、でも違和感は全然なかったですね。
山下でもあっちゃんはマンガをあまり読まないでしょ?

――あ、マンガを読むシーンがけっこうありましたね。
山下そうなんです。タマ子はマンガ好きという設定だったので。
前田マンガは読まないんですけれど、タマ子みたいにダラ〜っとして雑誌を見ちゃうタイプなので。

すっぴんで来て、イメージのギャップに驚いた[山下敦弘監督]

――タマ子への共感点としては、最初に言いました大学生の頃を思い出したのと、家族の話になると食いつくところ。離れて暮らしている母親に対してもそうですし、父親に好きな人ができたかも……というくだりで、いろいろと行動を起こしますよね。そこでまたタマ子に対する愛しさが増しました。
前田母親がいない家庭で、最初のほうはお父さんに気を使いながら過ごしていたのが、だんだんお互いにわかりあって心を通わせていくなかで、そこからお父さんを取られちゃうかもっていう感じはよくわかりますね。この人は絶対に大丈夫だと思っていた人が(笑)。

――動揺するよね(笑)。
前田それに対する嫉妬っていうのはすごくわかりますね。

――相手の女性の悪口をお父さんに言っちゃうとかね。
前田かわいいですよね(笑)。タマ子の気持ちをすごく表しているなと思いました。

――お父さんが、タマ子が書いた履歴書を読むシーンは、なにを考えているのかわからない娘のことを少しだけ知ることになりましたね。
山下さっきちょっとお父さんとの話が出ましたけど、タマ子とお父さんのお互いの感違いとかすれ違いが、ちょっとコントっぽいんですよね(笑)。この話はタマ子の話でもあるんですけれど、春編はお父さんの話でもあるんです。ちょっとスピンオフっぽいなと思いながら観ていたんですけれどね。その反動で夏編はタマ子だけというか、タマ子主演にしました。

――家族の映画でもあるのかな?
山下そうですね。結局お父さんと娘の話に自然となっていきました。

――山下監督は『苦役列車』の頃と今のあっちゃん、成長を感じる部分はどんなところですか?
前田初めて会ったのが、一昨年の10月頃?
山下あの頃はまだ19歳でしょ? すっぴんで来て、イメージのギャップにビックリしたんですよ。思った以上に普通の女の子だったというのが第一印象で。
前田あははっ。
山下そこから考えるとやっぱり女優としても女性としても大人っぽくなったと思いますよ。でも自分のなかでは正直、テレビやポスターで観るあっちゃんと、直接会ったときのギャップが……まぁ、とくに今はタマ子の印象が強いんですよね。だからテレビとかで観ると一瞬、別人にみえるというか。
前田あははっ(笑)!

――そういえば映画を観ていくとだんだん“あっちゃん”だということを意識しなくなりました。
山下あ、それはうれしいです。タマ子として観てもらえたらうれしいです。

――エンドロールで、現場であっちゃんが居眠りしているシーンが映っていましたね。撮影現場のあっちゃんはあんな感じだったんですか?
山下あんな感じでした(笑)。
前田(笑)口が開いてましたね〜。
山下時間がないなかで、それでもちゃきちゃきと進んで行っているんですけれど、ああいうユルイ緊張感というか……。
前田現場で「寝てていいよ」って言われたのは初めてでしたね。あのとき物撮りしてたから静かにしてなきゃいけないと思って。そうなると、眠りに辿りついちゃいました!
山下(笑)

――(笑)短い時間にちょこっと寝るのはAKB48時代から得意だったんじゃないかと。
前田そのときのクセがついていたんだと思います。でもまさかあのシーンが使われるなんて思っていなかったです(笑)。控室よりも、撮影現場のタマ子の場所のほうが居心地よかったんですよね。
山下あとセッティング中とかにご飯をつまみ食いしているんですよ。
前田サンマとか1匹食べちゃいました(笑)。

――では……この映画で伝えたいことって……?
山下伝えたいことは……(笑)。
前田(笑)
山下タマ子を受け入れられたら最後まで楽しめる映画だと思うんです。たぶんダメな人はダメなんだろうなって。でも僕はずっとそういう映画を作ってきている気がしていて、久々に原点に戻ったような感じです。確かにタマ子はいいところがない……(笑)というか見習うべきところはないワケですよ。でも不思議と憎めない。それを楽しんでもらい、この映画に出てくる人たちを受け入れてほしいなという気持ちだけですね。

――映画の最初のほうでは、タマ子はなにも考えていないのかと思っていましたけれど、最後のほうではいろいろ考えているんだなぁ……と。
山下そうそう。タマ子は考えていますよ(笑)。
前田(笑)人って時間があると考えちゃいますからね。今の山下監督の話を聴いていて、タマ子として山下ワールドに入ることができてうれしいなと思いました。
山下3・11以降、自分が観たい映画を作っている気がするんですよね。みんなメッセージ性を重視しているなか、僕は逆のことばかりやっていて。何かしなきゃという時期に、一番ゆるいモノを観たい。そういう自分のなかの反動がタマ子には投影されているのかな? って気はしています。あえて3・11をテーマにはしないですけれど、そういうことがあってこういう作品が生まれたというのは、自分のなかにそういう欲求があるんだろうなと感じましたし、その欲求が自分のなかでは終わっていないな……という想いが、うっすらとあるのかもしれません。
(文:三沢千晶/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

映画『もらとりあむタマ子』


 主人公のタマ子は東京の大学を出たものの、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってきて就職もせず、家事もせず、家業のスポーツ用品店も手伝わず、ただひたすらに食っちゃ寝食っちゃ寝の毎日。起きてると思ったら、マンガを読みふけるかゲームをするか。かつての同級生とも連絡を取らず、ニートというよりもまるで引きこもり。

 「就職活動くらいしろ!」という父親の言葉にも「いつか動く!でもそれは今じゃない!」と意味不明な言葉で自分を肯定しつつも、ようやく書いた履歴書の応募先は芸能プロダクション?! それでもタマ子を応援せずにはいられない父……。そんなタマ子がちょっとした一歩を踏み出すまでの1年を、秋に始まり夏に至るまで四季を通して描かれる。

監督:山下敦弘
出演者:前田敦子 康すおん 鈴木慶一 中村久美 富田靖子
【映画予告編】 【公式サイト】
2013年11月23日(土)全国公開
(C)2013『もらとりあむタマ子』製作委員会

関連リンク

前田敦子&山下敦弘 撮り下ろし!☆PHOTO GARALLY☆
食っちゃ寝生活のタマ子の明日は―映画予告編
映画『もらとりあむタマ子』公式サイト

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