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【能登半島地震】「ここまで広範囲の断水は想定外だった」被災後、迅速に営業再開したローソン 生活インフラとしてのコンビニの使命

【能登半島地震】移動販売する被災店舗(写真提供/ローソン)

【能登半島地震】移動販売する被災店舗(写真提供/ローソン)

能登半島地震から2ヵ月半。被害の爪痕はいまだ色濃く、復興へと懸命の奮闘が続いている。そんな被災地にいち早く“日常のともしび”を灯したのがコンビニだ。現地のコンビニの従業員たちは自らも被災しながら、地震発生から迅速に営業を再開した。それは生活インフラとして機能するコンビニの「使命だった」という。各店舗の迅速な営業再開はどのように進められたのか。あの日、あの時、コンビニチェーンの舞台裏をローソン中部カンパニー担当者に聞いた。

足の踏み場もない状態の店舗も…オーナー、クルーがマニュアルに沿って自発的に行動

 2024年1月1日16時10分、石川県の能登半島で発生した直下型地震は最大震度7の揺れを観測。家屋の倒壊や土砂災害、火災、津波、液状化現象などにより、死者が200人を超えるなど甚大な被害をもたらした。

「当時私は正月休みで家族と過ごしていました。そこへ飛び込んできた緊急地震速報。仕事柄、地震が発生したらすぐにテレビをつけパソコンを開くのですが、目に入ったのは能登半島の文字。まずは人命第一。北陸三県の加盟店のオーナーさん、クルーさんの状況確認のため、急ぎ災害チームのメンバーに連絡を取りました」(ローソン中部カンパニー・神沢伸保部長 ※肩書は取材当日)

 中部地区を管轄する中部カンパニーの対策本部が立ち上がったのは約2時間後の18時。名古屋の事務所に担当者をすべて招集させた。

「正直、当時は我々も不安を抱えていました。ですが弊社では年に3回、防災訓練を実施し災害時に避難指示が出た場合はまず逃げる、これを徹底していました。結果的に迅速な現場判断で対象の店舗はすぐに避難しており、地震の翌日には従業員だけでなく全オーナーさん、クルーさんの安全確認ができました。備えというものの重要性を再確認しました」(ローソン中部カンパニー・田上博基マネジャー)

 幸いにもローソン北陸全店で津波被害などはなかったが、強い揺れのあったエリアでは冷蔵扉が落ち、レジカウンターの位置が前後に大きくズレるといった被害に見舞われた。しかし素早い対策本部の起ち上げにより、従業員の安否確認のあと、即座に復旧作業が始まった。

重要なのは「灯り」 非日常に日常を取り戻すことで被災後の不安を払拭

 被災エリアのローソン各店舗が最初に行ったのは店内の灯りをつけることだった。

「まずは人命第一なのですが、お店が開いているということがその地域に住まわれている方々に安心感を与えると考えています。“コンビニが開いている”風景は、震災という非日常の不安に“日常”を浮かび上がらせます。正直、商品が十分に行き届いていない店舗や道路の陥没や建物の倒壊などで従業員がたどり着けない店舗などもあったのですが、店内の電気をつけることが我々のできるそのマチに対するコンビニとしての役割。加盟店のオーナーさん、クルーさんもその認識を持って、被災しながらもお店を開けていただきました。皆さんに、私も頭の下がる想いです」(神沢さん)

 営業再開を支えたのは店舗で働くオーナーやクルーだけではない。

「商品のメーカーさん、物流業界の方々も被災されています。お弁当を作る工場、在庫を保管しているセンターなどですね。するとやはりお弁当を作ってくれるパートさんが来られないとか、被災したセンター内の整理から始めなければならないなどもありました。そんな中、道路が悪く、雪の中、迂回しながら非常に苦労して物資を届けてくれた。関連会社の方々も含めて、とても感謝しています」(田上さん)

 中部カンパニーの災害対策本部では、震災直後から始まった「断水」に対応するため、20リットルのポリタンク100個以上を即座に被災店舗へと届けた。

「これまでの経験から停電への備えは行っていました。ところが、ここまで広範囲の断水は想定外でした。水がなければ衛生面から、店内調理品のご提供が難しく、また、多くの方が利用する店内トイレも使えません。今回の震災で最も困難だったのは断水対策でした」(神沢さん)

 また、食料や日用品などの安定供給にも急を要した。被災地の店舗では一部商品の損傷による欠品が発生したほか、被災者が必要物資を買い求めたことで品薄になった店舗があった。

「ただ、やみくもに物流を再開しても被災店舗では片づけなどの対応に追われ、受け取りさえも負担になります。まずはトイレットペーパー、カップラーメン、レトルト食品、ゼリー飲料、カイロなどの被災者が必要なものの選定を行い、それらの供給を重点的に行いました」(田上さん)

 こうして被災直後に40店舗が休業していたローソンは、翌2日には当該地域での休業は14店舗、3日には9店舗になった。その後、倒壊した建物の中にある店舗などを除いてはほぼ営業再開にたどり着けた。

店舗駐車場での移動販売、水やボディーシートに需要

 震災直後から「早期営業再開」へと動いたコンビニ。それは今や生活インフラとして機能する業界の使命でもあったという。避難所には水や食料の支援が届くが、自宅に住む被災者もいる。彼らの生活のためにもコンビニは欠かせない。さらに、被災地の住人だけでなく、現地へと入ってきたボランティアにとってもライフラインとなる。

 また、暗い街はどうしても犯罪が起きやすくなってしまう。いち早く使命感を持って店を開け、電気を灯し、街を明るくする。物資の提供のみならず、日常がそこにあるという安心感、治安悪化の防止などに貢献することがどれだけ重要か。

「24時間営業が難しい店舗でも、許す限りの時間で灯りを点けていただきました。クルーさんが被災して来られない店舗には他県から応援隊が駆けつけました。すぐに営業再開ができなかった店舗の中には、駐車場を利用して移動販売を行った店舗もありました。水や身体を拭くボディーシートを買い求める方が多かったと聞いています」(神沢さん)

 ローソンでは人員不足、物資不足の現地へ1月3日からまず中部カンパニーの応援隊が入った。また4日にはさらなる応援隊を送り込み、人々に“日常”を届けるべく奮闘した。ただ課題もある。今後は断水が起こった際の対応を強化していきたいと2人は語る。また電子マネーが当たり前になった現代、それらネットワークが使えなくなったとき、現金を持ち合わせてない人々にどう対応するか、こうした問題も浮き彫りとなった。

 決して喜ばしいことではないが、経験によって防災対策は強固なものとなる。「今回の困難も今後につなげることができたら」と神沢さんは決意を語った。

(取材・文/衣輪普一)

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