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男性は下着におしゃれ求めない? 保守的な男性下着市場で前年売り上げ370%のヒットから見えた需要の変化
“気に入ったらリピート買い”が主流の男性下着市場 レースボクサーのヒットで“美しい下着楽しむ”傾向に
「現在の男性の下着市場はボクサーが圧倒的に主流ですが、一定層いらっしゃるブリーフ派の方にもレースの着用感を味わっていただきたいと考え、開発しました。1ヵ月でシーズン計画の90%を売り上げ、想定を上回る結果に」(株式会社ワコール 広報 原敬寛さん)
レースアイテムは下着の購入行動を変えた商品としても画期的だったという。
「2019年12月に50,000人に対して弊社で実施した『令和時代のパンツ大調査』によると、男性が下着に求める要素の1位は『履き心地』。色や柄といったデザインよりも、まず第一に快適であることにこだわっていることがわかりました。そのためか一度気に入ったものは、リピート買いされる傾向にあります」(同社広報 高橋優果さん)
ボクサー派やブリーフ派、トランクス派といった派閥があるのはそのためか。
「ところがレースボクサーについては、まずデザインの美しさ、レース素材の持つ上品さや高級感に惹かれて購入し、履いてみたところ"フィット感"や"通気性"といった機能面に対する評価も非常に多かったんです。男性用下着においても、女性用と同様に『きれいさ』や『上品さ』にニーズがあることを確信した商品となりました」(原さん)
メンズコスメやネイル、脱毛…男性美容市場の伸長も追い風に
もちろん女性も快適性は求めるが、それに加えて「(誰にも見せないけれど)ステキな下着を着けているだけで気分がアガる」といった楽しみ方も提供されてきた。結果として女性用下着売り場には、デザインからパターンまで多様な商品が並ぶ。
「かつて男性の下着は、黒・紺・グレーのベーシックなカラーでの品ぞろえが多く、日用品として購入する方のほかには、女性の下着と比較すると代理購買が多いとされていました。本人ではなく、母親や奥さまが購入されるケースですね。これも日用品ならではの購買行動だと言えるでしょう。また男性の下着はサイズや型の選択肢が少ないため、代理購買がしやすい商品だと言えるかもしれません」(高橋さん)
「近年のメンズコスメやネイル、脱毛といった男性美容市場の伸長からも、男性の美意識は間違いなく向上しています。しかしそれらはあくまで目に見える美しさや清潔感を追求するものであって、誰にも見せないところの美しさへのこだわりは、より一歩踏み込んだ美意識のあり方だと思います。レースアイテムのヒットは、そうしたマインドを持つ男性が増えていることを浮き彫りにしたのではないかと思います。『快適性』と『美しさ』の両立が今の時代に求められる下着なのではと考えました」(原さん)
男性にも下着で気分の高揚感を 新たな価値観提案への“挑戦”
「独自のクロス構造により、歩幅が広いエクササイズ歩行への変化が期待できる機能性パンツ『クロスウォーカー』です。こちらはもともと女性用としてヒットした商品と同じ構造で、男性用も展開したところ大好評をいただきました。男性用の機能性インナーの人気もワコールメンのメンズ市場に本格参入する契機となりました」(原さん)
こころとからだに寄り添い、何より「ひとを高める下着」を作り出す。日用品でありながらも、“その先”を行く男性用下着を開発するのがワコールメンのミッションだ。
その固定概念を打ち破るべく、同社では、ふんどしの“解放感”に着目した「ふんどしNEXT(R)」や、動きにフィットしてズレにくい「気持ちいいパンツ」、女性の代理購買に着目し企画開発された「ハナコトバパンツ」、S-LLまでワンサイズで、さまざまな体型の人にもフィットする「PANTS HOLIC」など、ユニークな視点から生まれた商品を生み出している。
「弊社の調査によると『今のパンツに不満がある』と答えた男性は33%。つまり3人に2人は満足されているんです。しかしそれは逆を言えば、“今のパンツ以上”を知らない男性が多数派とも言えます。“今のパンツ”を乗り越えるハードルは高いですが、ワコールメンはその挑戦を続けます」(原さん)
そのハードルを超えたとも言えるレース素材の男性下着は、他メーカーからも発売しはじめている。いわば「“追いつけない下着”を作ろう」がキャッチコピーであるワコールメンがレースという新素材で市場をリードする形だが、「弊社だけで男性下着のシーンを盛り上げるのは限界がありますから、他メーカーとも一緒に市場を盛り上げていきたいです」(原さん)とのこと。シーンの半歩先を行く、さらなる「追いつけない下着」の開発に期待したいところだ。
(取材・文/児玉澄子)