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男性は下着におしゃれ求めない? 保守的な男性下着市場で前年売り上げ370%のヒットから見えた需要の変化

 現在の男性下着の主流がボクサーパンツであることは、店頭の品揃えを見ても明らかだ。もちろんブリーフ派やトランクス派も根強く存在しており、履き心地やフロント部のポジションといった男性の下着に対するこだわりは強い。一方で女性用下着と比べて、圧倒的に選択肢が少ないのも事実だ。快適性へのこだわりから、長らく日用品の域を出なかった男性用下着。それが近年の男性の美意識の向上とともに、"その先”へと進もうとしている。

“気に入ったらリピート買い”が主流の男性下着市場 レースボクサーのヒットで“美しい下着楽しむ”傾向に

  • 画像提供:ワコール

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 “「追いつけない下着」を作ろう”をテーマに、常識にとらわれない男性インナーを次々と開発してきたワコールメンが2013年のスタートから10周年を迎えた。近年のヒット商品といえば、2021年に発売された「レースボクサー」だ。エレガントなデザインはもちろん、レース特有の通気性によりムレにくい「レースボクサー」は、発売からわずか10日で3ヵ月分の販売目標を達成。発売当初は増産が追いつかないほどに。2023年春夏シーズンでの売り上げは、前年同期比で約370%。その発展アイテムとして、昨年9月には「レースブリーフ」が発売された。

「現在の男性の下着市場はボクサーが圧倒的に主流ですが、一定層いらっしゃるブリーフ派の方にもレースの着用感を味わっていただきたいと考え、開発しました。1ヵ月でシーズン計画の90%を売り上げ、想定を上回る結果に」(株式会社ワコール 広報 原敬寛さん)

 レースアイテムは下着の購入行動を変えた商品としても画期的だったという。

「2019年12月に50,000人に対して弊社で実施した『令和時代のパンツ大調査』によると、男性が下着に求める要素の1位は『履き心地』。色や柄といったデザインよりも、まず第一に快適であることにこだわっていることがわかりました。そのためか一度気に入ったものは、リピート買いされる傾向にあります」(同社広報 高橋優果さん)

 ボクサー派やブリーフ派、トランクス派といった派閥があるのはそのためか。

「ところがレースボクサーについては、まずデザインの美しさ、レース素材の持つ上品さや高級感に惹かれて購入し、履いてみたところ"フィット感"や"通気性"といった機能面に対する評価も非常に多かったんです。男性用下着においても、女性用と同様に『きれいさ』や『上品さ』にニーズがあることを確信した商品となりました」(原さん)

画像提供:ワコール

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メンズコスメやネイル、脱毛…男性美容市場の伸長も追い風に

  • レースブリーフ(画像提供:ワコール)

    レースブリーフ(画像提供:ワコール)

 長らく男性用下着は日用品の域を出なかった。最もこだわるのが「履き心地」というのも、日常の延長にあるものという価値観からだろう。

 もちろん女性も快適性は求めるが、それに加えて「(誰にも見せないけれど)ステキな下着を着けているだけで気分がアガる」といった楽しみ方も提供されてきた。結果として女性用下着売り場には、デザインからパターンまで多様な商品が並ぶ。

「かつて男性の下着は、黒・紺・グレーのベーシックなカラーでの品ぞろえが多く、日用品として購入する方のほかには、女性の下着と比較すると代理購買が多いとされていました。本人ではなく、母親や奥さまが購入されるケースですね。これも日用品ならではの購買行動だと言えるでしょう。また男性の下着はサイズや型の選択肢が少ないため、代理購買がしやすい商品だと言えるかもしれません」(高橋さん)
 90年代にはストリートファッションの一環で、ウエストゴムにブランドロゴをあしらったボクサーパンツをジーンズから覗かせる“見せパン”が流行した。これも男性下着の楽しみ方の1つだったが、あくまで見せる前提だった。

「近年のメンズコスメやネイル、脱毛といった男性美容市場の伸長からも、男性の美意識は間違いなく向上しています。しかしそれらはあくまで目に見える美しさや清潔感を追求するものであって、誰にも見せないところの美しさへのこだわりは、より一歩踏み込んだ美意識のあり方だと思います。レースアイテムのヒットは、そうしたマインドを持つ男性が増えていることを浮き彫りにしたのではないかと思います。『快適性』と『美しさ』の両立が今の時代に求められる下着なのではと考えました」(原さん)

男性にも下着で気分の高揚感を 新たな価値観提案への“挑戦”

  • 「ワコールメン」を立ち上げたきっかけのひとつになった「クロスウォーカー」(画像提供:ワコール)

    「ワコールメン」を立ち上げたきっかけのひとつになった「クロスウォーカー」(画像提供:ワコール)

  • 独自のクロス構造により、歩幅が広いエクササイズ歩行への変化が期待できるという(画像提供:ワコール)

    独自のクロス構造により、歩幅が広いエクササイズ歩行への変化が期待できるという(画像提供:ワコール)

 1991年から男性用下着を手掛けてきたワコールが、2013年に「ワコールメン」を立ち上げたきっかけのひとつにはある商品のヒットがあった。

「独自のクロス構造により、歩幅が広いエクササイズ歩行への変化が期待できる機能性パンツ『クロスウォーカー』です。こちらはもともと女性用としてヒットした商品と同じ構造で、男性用も展開したところ大好評をいただきました。男性用の機能性インナーの人気もワコールメンのメンズ市場に本格参入する契機となりました」(原さん)

 こころとからだに寄り添い、何より「ひとを高める下着」を作り出す。日用品でありながらも、“その先”を行く男性用下着を開発するのがワコールメンのミッションだ。
「10周年を迎えた今年は、記念商品としてブライダルにおすすめの男性インナーを発売しました。女性がウェディングドレスに“響かない”だけではなく、特別な日を“演出”する下着を選ぶ。そうした価値観を男性にも提案したいと開発した商品です」(高橋さん)

ブライダルにおすすめの男性インナーとして発売された10周年記念デザインレースボクサー(画像提供:ワコール)

ブライダルにおすすめの男性インナーとして発売された10周年記念デザインレースボクサー(画像提供:ワコール)

  • ふんどしネクスト(画像提供:ワコール)

    ふんどしネクスト(画像提供:ワコール)

  • 2月1日発売予定のハナコトバパンツ(画像提供:ワコール)

    2月1日発売予定のハナコトバパンツ(画像提供:ワコール)

 ボクサー派、トランクス派、ブリーフ派といった派閥があるように、こだわりが強く、定番化しやすい男性に新たな下着の価値観を提案するのは難しい。しかしこうした固定概念が、男性用下着の選択肢を狭めていた要因でもあったかもしれない。

 その固定概念を打ち破るべく、同社では、ふんどしの“解放感”に着目した「ふんどしNEXT(R)」や、動きにフィットしてズレにくい「気持ちいいパンツ」、女性の代理購買に着目し企画開発された「ハナコトバパンツ」、S-LLまでワンサイズで、さまざまな体型の人にもフィットする「PANTS HOLIC」など、ユニークな視点から生まれた商品を生み出している。

「弊社の調査によると『今のパンツに不満がある』と答えた男性は33%。つまり3人に2人は満足されているんです。しかしそれは逆を言えば、“今のパンツ以上”を知らない男性が多数派とも言えます。“今のパンツ”を乗り越えるハードルは高いですが、ワコールメンはその挑戦を続けます」(原さん)

 そのハードルを超えたとも言えるレース素材の男性下着は、他メーカーからも発売しはじめている。いわば「“追いつけない下着”を作ろう」がキャッチコピーであるワコールメンがレースという新素材で市場をリードする形だが、「弊社だけで男性下着のシーンを盛り上げるのは限界がありますから、他メーカーとも一緒に市場を盛り上げていきたいです」(原さん)とのこと。シーンの半歩先を行く、さらなる「追いつけない下着」の開発に期待したいところだ。
(取材・文/児玉澄子)

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