• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • 社会・経済
  • 「僕は変態なんだ…」警察官&消防士の元公務員ゲイカップルが語る孤独を感じた幼少期「“後追い”ではない報道を求める」
ORICON NEWS

「僕は変態なんだ…」警察官&消防士の元公務員ゲイカップルが語る孤独を感じた幼少期「“後追い”ではない報道を求める」

(左から)元警察官のKOTFEさん、元消防士のKANEさん

(左から)元警察官のKOTFEさん、元消防士のKANEさん

 ゲイカップの元警察官のKOTFEさんと元消防士のKANEさんは、LGBTQ+の啓発活動家としてYouTubeやSNSでの発信、メディア出演や講演などを積極的に行っている。現在のようにジェンダー平等が掲げられ「LGBTQ+」という言葉もない幼少期は、バラエティ番組などの影響で「ゲイ=変態」「笑いにしてもいい存在」といった印象を受け、当事者ということを隠して生きることに孤独を感じていた。今年6月には「LGBT理解増進法」が成立したが、メディアや社会に望むこと、日本の現状について、2人に聞いた。

模擬結婚式の様子

ゲイはいじってもいい…バラエティ番組の影響でゲイとは認めたくなかった

――ゲイだと気がついたのは、いつ頃、どういうきっかけだったのでしょうか?

KOTFEさん 小学3年生で9歳の時に同級生の男の子を好きになって初めて気づきました。当時は、「誰にも言ってはいけないことで、ダメなことなんだ」と誰かに何かを言われたわけでもないのに、大学1年生(19歳)で親友に打ち明けるまでは、誰にも言えませんでした。

――小中学生時代はつらい思いをしたこともありましたか?

KOTFEさん 当時、バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです。』(フジテレビ系)の保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)という同性愛者の強烈なキャラクターが流行っていました。学校では誰かがものまねをして周りは気持ち悪がり、それを見て笑いが起きる。家族でテレビを観ている時は、親も「気持ち悪い。こんな人がいるんだね」と言っていて。自分がゲイだと気づいた時に、「僕は変態なんだ」と思いました。それを誰にも知られたくない。だから、友だちとは常に壁を作って、嘘をつきながら本音を隠して生活していかないといけないのがつらかった。常に孤独を感じていました。

KANEさん 僕は高校卒業して19歳くらいで男性にも惹かれることに気づき始めました。でもその気持ちにフタをして、自分のなかで抱え込んでいました。当時のバラエティは、ゲイはいじってもいい、笑いにしてもいいという番組ばかり。男性に惹かれるのは仕方ないし、興味はあるけれど、不幸になるから自分がゲイとは認めたくないという意識でした。メディアの影響は大きかったです。

――そうした幼少期を経て、KOTFEさんは警察官、KANEさんは消防士として10年以上働き、退職後はYouTubeやSNS、メディアを通してLGBTQ+の啓発活動を行っています。SNSでカミングアウトしたときのリアクションはいかがでしたか?

KOTFEさん ポジティブなメッセージが9分9厘でした。職場の元上司から応援しているとメッセージをもらい、当事者以外の方にも温かい言葉をかけられ、勇気がわきました。カミングアウトによって連絡が途絶えた人もいますが、理解してもらえないということがわかったので、それはある意味よかったと思っています。

知る機会が大切…大人の認識を変えていくことが子どもたちの未来を救う

――カミングアウトしてから変わったことはありますか?

KOTFEさん 警察官として働いていた時に適応障害と診断されて、休職しました。退職後にカミングアウトして心身ともに健康になりました。嘘をつかなくてよくなったら、生きることがこんなにも楽だったと感じられたのが衝撃でした。逆に言うと、嘘をつきながら生きることのしんどさを改めて痛感しています。いまは理解しようとしてくれる人が周りには溢れている。そのなかで生活を送っています。

KANEさん カミングアウトして一気に人生が変わったというより、退職してからの2年間で徐々に変化がありました。自分たちは異常者でマイノリティだと思って生きてきたのが、自分たちは間違っていないし、権利を主張していいと考えられるようになった。社会に対して当たり前にあきらめていたことを、あきらめないでいいと思えたり、ゲイだというだけで差別や人権侵害されていたことがわかりました。もっと早く国や社会が変わっていれば、虐げられてこんなに苦しい思いをしないで生きられたと思うと、それに対する怒りもあります。

――いまだLGBTQ+のイベントやパレードに対して、ヘイトスピーチや侮蔑的な言葉が飛び交ったりしています。

KOTFEさん そういう人たちの一部を除いた大多数は、認識不足で知らないがゆえの恐怖心で攻撃していると想像しています。LGBTQ+のことを、もっとちゃんと知れば理解を示す人も一定数いると思います。世の中に、まず知る機会をたくさん作ることで社会ぎ変わり、幸せになる人が増える。僕たちは、攻撃する人を叩いたり責めたりするのではなく、知る機会を作っていきたいです。

KANEさん 正直、個人の問題ではないと思います。制度がない日本社会に生きているから知識がなかったり、意識が低かったりする。ただ、差別やヘイトは人を死に追いやるということを、1人ひとりがもっとちゃんと意識しなければいけないと思います。

――“怒り”という言葉もありましたが、国や社会に対して望むことを教えてください。

KOTFEさん 日本は人権後進国と言われていますが、LGBTQ+の問題を知る機会が圧倒的に少ない。それは、特に認識や勉強不足の政治家が多いことが一因だと感じています。ここ最近は国会で議論はされますが、困っている当事者の話を聞いたことがあるのか、という疑問が湧きます。10代のLGBTQ+の約半数が「自殺を考えたことがある」と答える社会で、理解なんて生ぬるいことではなく、まずは差別を禁止する法律を作ってほしいです。学校等で講演会をすることもあるのですが、子どもたちの取り巻く環境は、僕らの時代と何も変わっていない危機感があります。政治家を始め、社会を変える力がある大人1人ひとりが声をあげることが大切だと思います。

KANEさん 制度だけではなくて風土という話もありますが、制度が先にないと風土も追いつかない。差別禁止法や同性婚ができるようにならないといけない。ジェンダー平等もそうですが、法整備が遅いと感じています。「国民の理解を待つ」という言い訳をしていますが、差別や偏見により人が死んでいるのが現状です。制度を早く作ることが最優先だと考えています。

KOTFEさん もちろん制度も風土も両方大事です。制度作りをしながら、自治体や企業、学校などできることから少しずつ実行してほしい。いまアジアで同性婚できるのは台湾だけです。台湾も同性婚法制化前は反対意見が過半数でしたが、法制化されてからは反対意見が減っているそうです。何も難しいことはなく、幸せな人が増えるだけの制度だと思います。最近、学校等から子どもを対象とした講演依頼の連絡をいただきますが、LGBTQ+の子どもたちのほとんどが先生や親に相談できないという調査結果もあります。まずは教職員や保護者の認識を変えるほうが必要だと感じています。大人の認識を変えていくことが、子どもたちが未来に希望を持って生きられるようになると思います。

G7で同性婚が認められていないのは日本だけ「人権問題すべてにおいて対応が遅すぎる」

――米・ラスベガスで2週間過ごされたそうですね。

KOTFEさん 同性カップルである知人の家にホームスティさせてもらいましたが、居心地がよかったです。スーパーマーケットには、LGBTQ+やプラスサイズモデルを起用したポスターが大きく貼られ、マタニティのコーナーがマーケットのど真ん中にあり、人権意識の高さが伺えました。ラスベガスのあるネバダ州は、アメリカの中でもLGBTQ+フレンドリーな地域のようなのですが、「LGBTQ+フレンドリー企業であることを公言しない企業は住民から差別企業だとみなされる」と、現地の友人から聞いて衝撃を受けました。

KANEさん 街中で2人パパが子どもを連れている姿を見ると、“僕らもここにいていいんだ”と感じました。アメリカは多民族国家なので大変なこともたくさんあると思うのですが、日本は人権に向き合っていないことを感じます。小さな頃から声をあげることによる成功体験が少なく、デモなどに参加する人も少ない、あきらめてしまっている。そこにアメリカとの大きな違いを感じます。

KOTFEさん 現地の友人に、「住んでいなくても大丈夫だから、今度ラスベガスで婚姻届を出してみたら」と勧められました。アメリカでは、僕らの関係を当たり前に認め、婚姻届も受理してくれるのか、ということに驚きました。

――近年は、SDGsの目標でもある「ジェンダー平等」が掲げられるなか、メディアに対して望むことはありますか?

KANEさん 日本は人権意識が低すぎる。ジェンダー平等さえいまだに実現していません。同じ当事者であっても困っていないと言う人もいる。困っていることに気がついてない人たちもいますが、いま困っている人の声を社会に届けていただきたいです。

KOTFEさん G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7ヵ国)で同性婚が認められていない日本だけ。世界に対して恥ずかしい状況です。日本の人権意識の低さについて考える内容の報道や発信をもっとしてほしいと思います。海外メディアで働く友人は、人権問題に対する日本メディアの印象を、後追い報道ばかりと言っていました。現状の問題に切り込んで、いち早く報道する信念を持つメディアが増えてくれたらうれしいです。

――これからお二人が伝えていくことを教えてください。

KANEさん 僕ひとりで社会は変えられないし、本当に小さな力にしかならない。批判的なことも言われますが、僕らと同じようにセクシュアリティで悩む子どもや若者たちに、「僕たちは何も悪くないし、家族として幸せに暮らしていける」ということを、堂々と生きていくことで示したいです。

KOTFEさん 日本の人権問題は、後退していると言われながらも少しずつ前進しています。それは先人の方々が沈黙せずに声を上げ続けてくれたからこそ。ただ、当事者だけの声だと小さい。これはLGBTQ+の問題だけではないのですが、アライ(性的マイノリティの人達を理解し支援する人たち)を表明して、一緒に声を上げてくれる人が増えることによって、より良い社会になっていきます。あきらめからは何も生まれません。SNSのリツイートだけでもいいし、できる範囲でいいので、おかしいと思うことに意思表示をしていただけるとうれしいです。

(文/武井保之)
◆KOTFEさんのTwitter(外部サイト)
◆KANEさんのTwitter(外部サイト)
◆YouTubeチャンネル「KANE and KOTFE」(外部サイト)

あなたにおすすめの記事

 を検索