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「発達障害だから仕方ない」? 話の通じない夫を怖がる子、苦悩する妻…“カサンドラ症候群”の妻が離婚するまで

 2人の子どもを育てながら、アスペルガー症候群の元夫の影響でカサンドラ症候群になってしまったアゴ山さん。パートナーの特性で安定な関係を築けず、「すべて私が悪い」と自分を責めた日々を送っていた。自身体験をコミックエッセイとしてSNSで発信し、話題を集めている。

周りに理解される常に自己嫌悪 病名知って「希望の新しい光を見た」

 発達障害という言葉が浸透し、子どもから大人まで悩まされている特性。当事者の苦悩が発信されることも多いが、彼らとの関係性に苦しみ、重いストレスを抱え身体的・精神的不調に陥る人がいる。それを「カサンドラ症候群」という。

 「カサンドラ症候群」はマイナーなものだと思い込んでいたアゴ山さんだったが、「離婚後にたくさん同じように苦しんでいる人が居るということを知りました。少しでも同じ経験をした方に共感していただけたら、と思い描き始めました」と話す。

 自身の経験を原案とし、イラストレーターの鳥頭ゆばさんへ作画を依頼。『カサンドラ症候群になって離婚をするまでの話』と題して、2021年11月よりSNSで連載をスタート。結婚、妊娠、出産、育児、そして離婚までを描き、今年4月26日に最終回を迎えた。

 読者からは「私の夫も発達障害です」「カサンドラ症候群という言葉を初めて聞いた」というコメントも多数。アゴ山さんも離婚直前に症状について知ったといい、「もっと早くに知れたのなら、当時はあそこまで苦しまなかったのかな…? と思いました」と振り返る。と同時に、病名がついたことで「初めて分かった時は、何か希望の新しい光を見たような、それくらい衝撃的でした。それまでずっと周りには理解されず、常に自己嫌悪に陥っていたのですが、問題の本質がようやく知れた気がしてとても救われた気持ちになりました」と心境の変化があったことも明かした。

元夫は宇宙人? 子育てについて相談したいのに話が通じない

 結婚当初から元夫と話が通じない、と感じることが多かったというが、アゴ山さんの精神を一番追い詰めたのが「育児」。
「手伝いなどの物理的なものではなく、子どもの気持ちや子育てでの相談事が伝えても伝わらなかったことが悲しかったです。悩み事もいくら話しても話しても伝わらない…。宇宙人と話しているような気持ちで、家族なのに孤独感がたくさんでそれがとてもつらかったです」

 元夫に対し「話し合えばいつか分かるだろう。理想の夫婦になれるだろう」と思い込みがあり、何度も修復を試みたアゴ山さん。意思疎通ができない問題は解消されず。苦悩しながらも「離婚」の一文字も考えつかなかったところから一変、アゴ山さんは娘さんの一言で「離婚」を決意。何度話し合っても元夫にはアゴ山さんの思いは伝わらず、大きな声を出してしまうことも。そんな様子に起きてきてしまった娘さんは「ママをいじめないで!」と泣きながらかばったという。

 娘さんのためにも一日を早く別れようと動き出し、意思を伝えてから離婚成立までは1年ほどかかった。この選択をして一番良かったことは「上の子が元夫を怖がっていたので、たくさん笑うようになってくれたこと」。笑顔が増え、やっと家族で過ごす時間に幸せを感じている。

2人の子どもと猫と心から笑える毎日 再婚はある?

  • 『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(KADOKAWA)

    『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(KADOKAWA)

 SNSでの反響もあり、7日に『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(KADOKAWA)として書籍化。「いつか自分の体験を本にしてみたい、という夢があったのでそれが叶ったことが嬉しかった」と喜びを語ってくれた。これまでアゴ山さんと共に同作品を手掛けてきたイラストレーターの鳥頭ゆばさんも、「アゴ山さんの伝えたかった体験や想いを漫画にすることで上手く伝わってくれたらと祈っています。もちろん私も作画担当として、本がたくさんの人に読まれていっぱい広まればいいなと夢見ています」と、それぞれ喜びを語ってくれた。

 ゆばさんはアゴ山さんの体験を聞くまで「カサンドラ症候群」を全く知らなかった。アゴ山さんと作品を作る中で「大人の発達障害は確かに近年になってよく聞くなとは思っていたのですが、そのパートナーの苦悩までは考えてもみませんでした。身近にも悩んでいる人がたくさんいると思いますし、他人事では全くないので、こういった人もたくさんいて苦しんでいる、ということを考えるきっかけを頂いたなと勉強になりました」と作画に携わった感想を明かしてくれた。

 センシティブなものも絡んだテーマのため、やはり批判のようなコメントも。読者からは「(元夫は)発達障害なんだから仕方がない」という声も散見される。アゴ山さんは「どちらが悪いという善悪を決めるお話ではないので、お互いのすれ違いや理解が少ないがために葛藤をして、仕方なく『別れ』を選択したという“切なさ”が伝わればよいなと願っています」と、本書を手に取る人への思いを寄せた。

 アゴ山さんに理想とする夫婦関係について聞いてみると「夫婦は“戦友”」と回答。自身の経験から、夫婦生活で一番大事なことは「お互いを認め、歩み寄ること」だったと話す。それを目指していたが、会話をしても共感も理解も得られず一方通行。
「“よき戦友”にはなれませんでした…(笑)」

 最後に、アゴ山さんの今後の恋愛や結婚について聞いた。
「よく『再婚は考えてる?』と聞かれますが、恋愛自体にもう興味がないようです。子どもたちがいて、私がいて、ペットがいて…という今の状況で家族が完成されてしまっていると感じているので、ここに他者がまた入るということが全く想像できません…。そもそもが出会いもなく、全くモテないので再婚予定はほぼないですね(笑)」

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ブログ「アゴ山とヤバい奴ら(外部サイト)

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