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【話題のマンガ試し読み】「太っている人はバカにしていい」? 子どもの残酷な言葉に傷ついた女性、反ルッキズムでも「人の心は簡単に変わらない」

 幼少期からずっと太っていた主人公・万莉子が、恋愛を通して自分を見つめなおす姿を描いたラブコメディ『まぁるい彼女と残念な彼氏』(LINEマンガ)。今春、連載1周年を迎えた本作は、原作者の葉山いずみさんが、マンガやアニメの主人公が、スタイルや容姿が良く描かれることに疑問を持ったことが誕生のきっかけになったという。多様性が認められるようになり、「ルッキズム」(外見に基づく差別または偏見)という言葉が登場した現代に、本作が人気を得た理由とは? 話を聞いた。

太っているから“道化を演じる”…、「被害妄想じゃない、その方がダメージが減るから」

――多くの読者から共感を集めていますが、改めて本作誕生の経緯を教えてください。
葉山いずみさん誕生したきっかけは“疑問”からでした。(マンガに出てくる)ヒロインはみんな細くてかわいい。そういう子しか主人公になっちゃいけないのかなと思っていて。「それは嫌だな。細くてかわいい以外のヒロインだっていてほしいな。だったら自分で作るしかない」と思って、『まるカノ』のベースが出来上がりました。

――“疑問”からスタートした物語だったんですね。
葉山いずみさんはい。初めはただただ、太っていてもポジティブに生きるヒロインのラブストーリーを届けたいという気持ちでした。でも(万莉子に好意を寄せる)凪と万莉子の物語を書き続ける中で、「自分とは違うところも受け入れ合えることで、お互いが強くなれるんだな」と、視野を狭めず、大らかな視点で人と接することの大切さに気付きました。

――物語序盤、万莉子は自分が太っていることで、周囲から“こう思われている(だろう)”と、わざと“道化を装う”場面があります。自分を守るためのようにも見えるのですが、こうしたリアルな細かい描写や心の機微は、どうやって生み出しているのですか?
葉山いずみさんモデルは私自身でもあり、私の周囲の太っている友人でもありますね。これは太っている人しか経験がないことだと思いますが、例えば合コンのような場所に行くと、明らかに男性陣側から“お呼びじゃない感”が出るんですよ。被害妄想じゃなく本当なんです(笑)。だから、場の空気を壊さないために“道化を演じる”んです。こっちも初めから男性陣に相手にされるなんて思ってもいないので、お笑い役に徹した方が自分へのダメージが減るんです。ですから、万莉子が自分を守るために自虐にはしる描写は、私にとってはごく自然なものでした。

太っている人をからかう子ども、大人やメディアの影響も

――第59話では、万莉子が凪の母親のブランドのモデルを務めます。万莉子が学生時代に言われた「デブ」「何食ったらあんなに太れるんだよ」などトラウマが逡巡し、過去を乗り越えていくための大きな出来事になります。このシーンに込めた想いを教えてください。
葉山いずみさん似たような状況に立った時、つらい記憶がフラッシュバックしてしまうという場面は、多くの人が経験していると思います。「また同じことが起こるのでは…」と怖くなってしまいますが、近くにいてくれる人(万莉子の場合は背中を押してくれた凪の母親や客席で見守ってくれた凪)を信じて勇気を出して一歩踏み出せば違う景色が見えることもあるよ、というメッセージが伝わっていたらうれしいです。

――昔から、子どもは残酷なところがあり、それぞれの個性を悪口のネタにし、相手を大きく傷つけてしまうケースが多々あります。
葉山いずみさん子どもが太ってる人をからかうのは、「子どもだから」ではないと思います。周囲の大人やテレビなどのメディアが他人の体型を面白おかしくいじるので、「太っている人はバカにしていい存在」と認識してしまうのではないでしょうか。人の見た目を揶揄する大人がいなくならない限り、子どもはマネをします。

――なるほど。
葉山いずみさん残念ながら、多様性を認めようと訴える人でも“悪気なく”他人の体型をからかうことがあるんです。悪口のつもりではないから、相手が傷ついているとは思わないのでしょう。他人を変えることは難しいけれど、自分の意識を変えることはきっとできます。ですから、『まるカノ』は、どちらかと言えば、体型をからかわれ自信をなくした子どもにこそ読んでほしいです。

――昨今、“多様性”が声高に叫ばれ、「ルッキズム」を見直そうとする風潮が広まりつつあります。先生が、本作のプロットを考えられた10年前はこうした風潮はそこまで強くなかったと思いますが、現代と比較して、どのような変化を感じますか?
葉山いずみさん太ってる人に関してだけ言えば「本当に時代は変わったなぁ」と思うようになりました。太ってる人専門のお洋服屋さんができたり、既存のブランドでも大きいサイズを取り扱うようになったり。大きいサイズになると同じようなデザインばかりで、洋服選びが楽しくなかったのですが、太っていてもおしゃれをすることが許される時代になったというのは素敵なことだと思います。

多様性の時代でもまだまだ嘲笑の対象、「太っている人が自分を好きでいられるように」

――時代が変わり、先生自身も本作を本格的に作品に仕上げていくなかで、「ルッキズム」に対する考え方に変化はございますか?
葉山いずみさん私自身ルッキズムに対する考え方の変化はありません。ただ、世間の太ってる人に対する認識が以前より見えるようになりました。正直なところ、読者コメントで、万莉子の外見について辛辣な意見を書かれる方もいます。多様性が叫ばれてはいますが、やっぱり太っている人はまだまだ嘲笑、罵倒の対象なのかな…と少し悲しくなることもあります。だからこそ、太っている人が自分を好きでいられるような雰囲気がもっと加速していくと良いなと思います。

――確かに、ネガティブな意見も見受けられますね…。海外に比べ、日本の多様性を受け入れる動きが遅いのには、どういった理由が考えられるでしょうか?
葉山いずみさん日本は、あまり変化を好まない人が多いからかなと思います。特に不便がなければ今まで通りが一番…というような。プラスサイズのモデルがいなくても、標準サイズの人は困らないですよね。私自身も、スリムなモデルさんを見慣れているので特に不満は感じません。でも、プラスサイズのモデルさんがいると洋服選びの参考になって助かります。

――先生ご自身は、日本で今後ルッキズムがどのようになっていくと思いますか?
葉山いずみさんルッキズムに対する動きは大きくなっていくかもしれませんが、人の心は簡単には変わらないと思います。表面上では「見た目なんて気にしない」と大勢が言っても、やはり人それぞれの好みや美意識がありますから。
 私自身が望む社会は、他者を傷つけず、かといって自分も我慢しない社会ですね。キレイになりたい人はキレイになる努力をすればいいし、太っていても気にならない人はそのままの自分でいればいい。見た目のいい人だけが好きでもいいと思います。
 ただ、自分の審美眼に適わない相手を批判するのは良くないですよね。一方で、「多様性が叫ばれているのに見た目で判断するのはありえない」と非難するのも違うと思います。息苦しくなく、みんながみんな自由に生きられたら良いですね。

――“多様性”を考える上で、『まるカノ』は大きな役割を果たしていく作品になっていきそうですね。最後に、今後の抱負をお聞かせください。
葉山いずみさん連載を始めた当初は、まずどこまで続けられるかが不安でした。そのため1年後のことなんて考える余裕もありませんでした。これは今も同じで、これから先も読者の皆様に応援してもらえるのか、来年も続けていられるのかという不安は常にあります。そんな中でも、今春、無事に1周年を迎えられたことが本当にうれしいです。どんな作品も、読んでくださる方からの応援がなければ作り続けられません。1周年を迎えられたのは、間違いなく読者の皆様のおかげなので、とてもありがたく思っています。これからも、読者の皆様の期待を裏切らないように、制作を続けていければと思っています。
<インフォメーション>
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