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「“不要な整形”は断ることも…」カジュアル化と低年齢化が進む美容整形の落とし穴 医師に聞く正しい知識と理解
ファッション感覚での整形が増加 「切開法」はあまり安易に考えない方がいい
磯野智崇さん 来院される方で最も多いのは20〜30代女性。これはいまも昔も変わらないのですが、昨今は男性、それから中高生の相談が格段に増えています。その意味では、カジュアル化が進んでいると言えるでしょう。相談内容で最も多いのは「二重まぶたにしたい」。これもいまも昔も変わらないのですが、昨今は「毎日アイプチをするのが面倒だから」という理由など、メイクやおしゃれの延長上で整形を選択する方も増えています。
──いわばファッション感覚で整形をする。この風潮をどう捉えていますか?
磯野智崇さん 「埋没法」の二重整形であれば、ご興味があったら試してみるのもいいと思います。糸を抜けば元に戻りますし、それほど身構えなくてもいいのではないでしょうか。むしろ毎日アイプチをする方が、皮膚かぶれといった医療的観点からお勧めできません。
──二重整形の「切開法」についてはいかがですか?
磯野智崇さん 皮膚にメスを入れる「切開法」は元に戻すのは不可能なので、あまり安易に考えない方がいいですね。なかには「埋没法」だけではきれいな二重まぶたにはならない「眼瞼下垂」状態の方もいますが、皆さんが思っているよりもごく少数です。当院ではドクターがまぶたの状態を確認し、リスクなどを説明した上で手術や施術を提案し、ご本人の意思を確認しています。またドクターが不要だと判断した美容整形は、決して勧めていません。
“不要な整形”は断ることも…医師側にもリスク回避が必要
磯野智崇さん カウンセリングを通して「この方が抱えている問題の本質は容姿ではないのでは?」と判断することは、ごく稀ですがあります。例えば、「目付きが悪くて人に嫌われる。仕事もうまくいかない」と来院された方。「目さえ変わればすべてうまく行く」と二重整形を希望されたのですが、仕事も人間関係もそんなに単純なものではないですよね。「整形したのに、上手くいかなかった」という失望、あるいはクレームに繋がってしまうのは医師として本意ではないので、お断りしたこともありました。
──最近はSNSで「目の下のクマ取り整形」をよく見かけます。来院実数は増えているのでしょうか。
磯野智崇さん 少し前は50代以上の女性が多かったですが、最近は20〜30代の方も増えています。多くのクリニックがInstagramやTikTokといった若い方が利用するSNSで宣伝していますし、その効果もあると思われます。
──目の下の膨らみやクマは加齢によるものだと思うのですが、若い方でも整形する意味はあるのでしょうか?
磯野智崇さん 若い方でも目の下が膨らんでいる方はいますし、写真を撮ると目の下が影になるのが気になるなら取っても良いのではないかと思います。また若い方と中高年では施術の方法が違います。中高年の方はまぶたのたるみを伴っている場合が多いので、表から皮膚を切って中の脂肪を取りますが、若い方の場合はまぶたの裏側から脂肪だけを抜く方法がほとんどです。
──中高年の場合は皮膚を切るのが必須なのでしょうか?
磯野智崇さん まぶたの膨らみは脂肪が原因です。脂肪を取ると、加齢でたるんでいた皮膚がさらに萎んでしまう。つまりシワが際立ってしまうんですね。ですから皮膚も切除したほうがきれいに仕上がります。
──目の下のクマ取り整形は一生に1回で良いとも聞きます。本当でしょうか?
磯野智崇さん 多くても2回で十分。若い頃に脂肪を抜いたけど、年齢を重ねてまぶたのたるみが気になってきたと再来院される方はたしかにいますが、3回も4回も繰り返すものではないですね。
──リスクや副作用はありますか?
磯野智崇さん 1つは後戻りができないこと。それを許容できれば、それほど大掛かりな施術ではありませんし、若い方にはほとんどリスクはありません。ただ高齢の方は組織が緩んでいるため、下まぶたから脂肪を引っ張ると綱引きの要領で上まぶたの脂肪まで引っ張られ、結果的に目が窪んだ状態になってしまうこともあります。これについては医師のスキル次第と言えるでしょう。
過大広告や脱法クリニックには注意が必要 1ヵ所だけで契約せず複数クリニックを視野に
磯野智崇さん 当院については1〜2ヵ月に1回程度と、劇的に増えている印象はないですね。ただ二重に加えて、小鼻を小さくする、鼻を高くするといった希望は確かに増えています。
──鼻の整形に関しては、どのような知識を持っておいてもらいたいですか?
磯野智崇さん 鼻の高さについてはヒアルロン酸からプロテーゼを入れるなど、切らない施術だけでも実にさまざまな方法があります。高さを買えたければプロテーゼを入れ直すこともできますし、それほど身構えなくてもいいでしょう。ただ小鼻を小さくするのは切るしかないので、後戻りはできません。また鼻先が上を向いた、いわゆるブタ鼻を直したいと相談に来られる方もいますが、劇的に解消するのは生理学的に非常に困難です。
──広告やSNSでは「ブタ鼻整形」をよく見かけますが──。
磯野智崇さん 今どき写真加工ができるのは、皆さんもご存知でしょう。もしも加工でないとしたら、写真を撮った時点ではその状態かもしれませんが、そこまで劇的な効果を出した手術は、後々に何かしらトラブルが起きている可能性もあります。写真だけで「こういう整形をしたい」と思い込まず、必ずカウンセリングを受けてください。その際に気になった写真をご持参いただければ、なおいいでしょう。
──「こんな顔になりたい」と芸能人などの写真を持参するケースは多いですか?
磯野智崇さん それはいまも昔も多いですね。私たちとしても整形の方向性が湧きやすいので、具体的な要望を提示していただけるのは助かります。ただ「まったく同じ目の形には必ずしもなりません」といった説明は必ずしています。
──整形を検討されている方にお伝えしたいことはありますか。
磯野智崇さん 美容外科クリニックが乱立し、なかにはグレーとも思われる営業をしているクリニックもあります。なかでも私が問題視しているのは、医師ではなくカウンセラーと称する人物がカウンセリングから手術の方針まで決めるクリニック。これは明らかに医師法違反です。ただ、そうしたクリニックでも最後に医師が一言「その手術でいいでしょう」と言えば、法的に問題ないとされてしまうんですね。またそうした“脱法クリニック”ほど、法外な料金に巧みに誘導してきます。
──トラブルを防ぐにはどうしたらいいですか?
磯野智崇さん お悩みで頭がいっぱいのところに言葉巧みに誘導されて、判断力を奪われてしまうことはたしかにあるでしょう。それでも1ヵ所だけで契約せず、必ず複数のクリニックを回ってください。それによって冷静な判断もできるはずです。見極めポイントは、医師がカウンセリングをしているかどうか。またカウンセリングを受けたからといって、必ずしも契約しなければいけないわけではないことも覚えておいてほしいですね。
(文/児玉澄子)
◆共立美容外科の副総括院長・磯野智崇さんについて(外部サイト)