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鈴木亮平×宮沢氷魚、映画『エゴイスト』 「愛」と「エゴ」の境界線を語り合う

 俳優の鈴木亮平主演、宮沢氷魚共演の映画『エゴイスト』(2月10日より公開中)。「アジア全域版アカデミー賞」と言われる「アジア・フィルム・アワード」に主演男優賞・助演男優賞にノミネートされるなど国内外から注目を集める二人が、「愛」と「エゴ」について縦横無尽に語り合った。

 映画は、名コラムを世に送り出してきた高山真氏の同名自伝的小説が原作。14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分の姿を押し殺しながら思春期を過ごした浩輔(鈴木)。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、自由な日々を送っている。そんな彼が、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢)と出会い、2人はひかれ合っていく。
――この映画はLGBTQ+に対しての定義や理解を深く求めるものではありませんが、オファーを受ける上で意識されたことはありますか?

鈴木出演を決めるにあたっては、浩輔がゲイであるかどうかよりも純粋に原作小説の主人公に共感できた、というのが理由です。ただし、撮影に入る前には自分なりにLGBTQ +について勉強して、たくさんの方からお話を聞かせていただきました。セクシュアリティは本当にグラデーションですし、暮らす環境も人それぞれなので、「ゲイとはこうである」という一つの答えはもちろんありません。ですが、作品として世に出た時に、誤解や差別、偏見を助長するような表現にならないように、極力気を配りたいとは思いました。誰よりもまず、観てくださった当事者の方が「これは自分たちの物語だ」と思ってもらえるような映画にしなければいけないという責任を感じました。

宮沢僕は、今回のオファーを受ける2年前に1回目のオファーをいただき、原作と脚本を読んで、なんて美しい物語なんだろうと思いました。「愛」とは何か、「愛」は自分の人生にどう影響しているんだろうか、といった永遠の課題に真正面から向き合っている原作や脚本にすごくエネルギーを感じたんです。そのタイミングで映画は実現しなかったのですが、まさか2回目のオファーをいだけるなんて。すごく運命的なものを感じました。亮平さんと一緒に、この作品の世界を生きたい、と思いました。

――主人公の浩輔に共感できたというのは?

鈴木僕が演じた浩輔は自分をエゴイストだと感じていて、苦しい生き方をしている人物です。浩輔の龍太に向けた「愛」は、確かにエゴイスティックなところもあるけれど、それが本当の「愛」ではないと誰が言えるのか? 少なくとも、映画を観て、僕自身は、龍太を思う浩輔のことが好きだし、浩輔がそうしたいと思う気持ちが痛いほどよくわかりました。

――「愛」なのか「エゴ」なのか、境界線はどこにあるのか、難しいですね。

鈴木昔から「愛」と「エゴ」の境界線について考えることがありました。例えばこれは極論ですが、自分の子どもがトラックに轢かれそうになって、このタイミングだと自分は死ぬかもしれないけれど、子どもだけは助かるかもしれないと思ったら、たぶんほとんどの親は助けに行きますよね。でもそれは子どもへの愛とも言えるけど、自分の子どもに助かってほしい、生きててほしいという広い意味での「エゴ」とも言えるんじゃないか、と。もし助けに行かなかったら、その後に後悔して人生を過ごす方が苦しい、だから助ける、という形の「エゴ」とも考えられるんじゃないか。子どものためを100%思っている、なんて思うこと自体が自分の「エゴ」なんじゃないか。そういう答えのないことを考えてしまったり。

 「エゴ」という言葉の定義にもよると思うんですが、僕は「エゴ」の中に「愛」がある気がしていて。相手の幸せを願う方向に傾いた「エゴ」が「愛」と呼べるのかもしれない。でも一般的には、「エゴ」は相手の迷惑を顧みない自分勝手な欲求という意味で使われますよね。なんだか、難しい話になってきたけど、これ記事になります(笑)?

――大丈夫です! 一般的に「エゴイスト」という言葉はポジティブな意味では使われないけれど、この映画を観た後は印象が変わったような気がします。

宮沢僕もこの作品に参加するまで、「エゴイスト」という言葉に対してネガティブなイメージを持っていました。自分のことしか考えてない自分勝手な言動をする人という先入観がありました。

 実は僕、サプライズが好きで、誰かの誕生日にサプライズでパーティーを開いたり、突然プレゼントを渡したりするのが好きなんですけど、ふと、それも「エゴ」なんじゃないか、と思ったんです。サプライズを喜んでくれ人の姿を見ると、自分がうれしい。自分のためじゃないか。今までなんて自分勝手なことをしていたんだって。でも、相手や周りの人たちが喜んでくれるのであれば、その「エゴ」はありなのではないか、と。そこは、常に考えなければいけないことですが、「エゴ」は必ずしもネガティブなことばかりではなくて、その人を愛するがゆえの美しい「エゴ」もあるんじゃないかと思うようになりました。

鈴木みんなの前でプロポーズするサプライズってあるじゃない? お互いに愛し合っていて、相手がプロポーズを待っていたのであればうれしいけど、そうではない相手だったら断りづらくて困るよね。そこじゃない?「愛」と「エゴ」の境界線は(笑)。

――映画『エゴイスト』を鑑賞した後の観客に期待したいことは?

宮沢カップルで観に来てくださったら、きっといろいろ話したくなると思うんです。話し出したら止まらなくなるくらいに。もし、一人でご覧になった方は、観終わった後、自分の家族や恋人、友達、誰でもいいのですが、会いたいなと思った人に会いに行ってほしい。僕はこの映画を観て、大事な人と一緒に過ごせる時間は有限だから、一分一秒を無駄にしてはいけないな、と思いました。

鈴木僕は恋人がいらっしゃる方は恋人と観に来ていただいて、観終わった後に、「愛」と「エゴ」について語ってもらいたい。そういえば、最近、観た外国の映画で、「私はあなたといる時の自分が好きなの」というせりふがあったんだけど、すごい告白の言葉だけど、「はぁ?」と思う人もいるだろうな、と思ったんですよね。

宮沢僕はうれしい。

鈴木うれしいよね! それも「愛」と「エゴ」の境界線なのかな。「あなたを愛しているわけじゃないけど、あなたと一緒にいるとより好きな自分でいられる」ってすごく「エゴ」じゃないですか。でもそれを「愛」の言葉と思えるかどうか。僕は「愛」だと思えたんですよね。

予告編

  • 原作小説の文庫版が発売中(C)高山真/小学館

    原作小説の文庫版が発売中(C)高山真/小学館

出演:
鈴木亮平 宮沢氷魚 
中村優子 和田庵 ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明
阿川佐和子
原作:高山真「エゴイスト」(小学館)
監督・脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子
LGBTQ+inclusive director:ミヤタ廉
制作プロダクション:ROBOT
製作幹事・配給:東京テアトル
製作:「エゴイスト」製作委員会(東京テアトル/日活/ライツキューブ/ROBOT)
R15+
(C) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会  
公式サイト:www.egoist-movie.com

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